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285、アレスの救った世界

 城の入り口に近づくとお父様が立っていた。

私を待っていたようだ。


 入り口近くの兵士が気がつき畏まるが「構わない」とそれを止める。


「リリア、アレスは元気そうだったろう?」

お父様が美しく笑う。


「はい、でもお父様、アレスをあまりこきつかわないで下さい」


「こきつかう? そんなに酷使した覚えはないぞ、それにここにいる兵士皆に感謝されている。良いことじゃないか」


「感謝されてる?」


「そうだ、ちょうど良いところにアレスと迷宮調査団で潜っていた者がいる。カイ、話してくれないか?」


 お父様が近くにいた兵士に声をかけた。


「はい、自分は迷宮調査団所属のカイ·ラミナスと言います。この度は姫様のご婚約おめでとうございます。迷宮では何度もアレス様に危ないところを助けて頂きました。伝説の勇者と迷宮の探索が出来る事を誇りに思います!」


 カイ·ラミナスと言う青年兵士は目を輝かせながら敬礼をした。


「アレスと迷宮に行っていたのですね。迷宮の中はどんな感じですか?」

エターナル迷宮はフェルの地下室とも繋がっていたんだよね。(フェルが塞いだらしいけど)

 あの不思議な地下室。

きっと迷宮内も不思議がいっぱいだろう。

今思えばスライムの”ぷるるん”がよくいなくなるのって迷宮に行ってたのかもしれない。

ぷるるん元気かな? 討伐されてないといいけど……


「エターナル迷宮は不思議な場所です。特に他国も足止めとなった20階層では滝があり以前の調査では流され行方不明になった者もおります。しかし私達はアレス様と潜ったので無事でした」


「滝があるんだ……」

どんなとこだよ……


「はい、アレス様が滝を止めてくださり通る事が出来ました。その他にも仕掛け部屋で閉じ込められ数十体の魔物に囲まれた時もアレス様が全て倒してくださり次の部屋に進むことが出来ました。我々では手に負えない階層のボスも倒して道を開いてくれました」


 アレスが行くとチートになっちゃうんだ……


「お陰で調査団は全員無傷です! 珍しいアイテムや魔石の回収も進み、給金も上げていただき、子供の学校の準備に回せました。本当にアレス様には感謝です」


お子さんいるのね?


「カイ……君、また子供を拾ったそうだね。何人目だ? ひとりで養うのは無理がある。増やしたのならルカレリア孤児院に預けなさい」

お父様が心配そうな顔をした。


「は、はい、五人目です。今回はそうするつもりだったんですが、つい情が移ってしまい……やはり一緒に暮らせば家族ですからもう手放せません! チビ達は俺の宝です!!」


「そうか……カイは子供が好きだからな……分かった、家族手当てを増やせるか検討しよう」


「陛下にはいつも気にかけていただきありがとうございます」


カイ·ラミナスさんは深く深くお辞儀をした。


 一般の兵士の話を聞くのは初めてだった。

と言うか兵士をこんなに沢山見るのも初めてだった。


 兵士は屍兵のイメージがあったから何となく近寄り難かったが皆に祝って貰ったしルカレリアの兵士は好感が持てた。



 部屋に戻りながらお父様と話をした。


ラファエルは兵士達と剣の練習に行ってしまった。

 たまには私から離れないとね。


「アレスはルカレリアに来て皆に慕われている。剣や魔法の訓練でも人気者だ。出来ればこのままいてほしいな……リリアを連れていかれるのは少し寂しい……」


 お父様が珍しく弱気な事を言った。執事のロイドの時だったら考えられない気がする。


 確かに私は超箱入り娘だし、このままお嫁に行って大丈夫だろうか……?

それに家族と離れるって辛いかも……


「私も寂しい……です」

 お父様の珍しい態度で急に不安になってしまった。幸せいっぱいなのに……これがマリッジブルーか……


お父様がにっこり笑った。

「そうか……リリアも寂しいか……」


何となく嫌な予感……? 気のせい……?


「ところで()()()カイはやっぱりいい奴だったろう?エターナルが解体されてエターナル騎士団も無いからな……カイはエターナル騎士団では無く、ルカレリア兵団に求職に来てくれた。だから採用したんだ」


ん? なんの事……? 人間のカイ……?


「何だ……忘れているのか……一度目の世界でトカゲ男だったカイには会ったろう?」


トカゲ男……!!

 子供を追いかけて殺していた魔族!!?


「魔族になる前のカイは、ああいう奴だった。人間の彼にもう一度会えて嬉しい」


あ、ロイドはトカゲ男がアレスに殺されたのは知らないのか……


 思い出すと私にダメージが出そうだ。アレスにあんなグロいことを見せられるとは思ってなかったから……

 あ、でも見えてないと思ったのかもしれないし、アレスはあの時はそこまで気を配れる状態ではなかった気もする。


ちょっと複雑……


 一度目の世界で子供を殺していたカイはアレスにバラバラされて殺された。


 二度目の世界ではカイは孤児を引き取り育てていてアレスに感謝している。


どう考えても一度目の世界が狂っていたんだよね。



アレス……世界のやり直しは成功したんだよ。



 殺されて屍兵にされた人達だけでなく、

魔族にされて自分を見失った悲しい人たちもアレスは救ったんだ。


アレスのしたことは間違っていなかった。


 でもカイの事はアレスには言わないでおこうと思った。


優しい人だから言ったら後ろめたく感じてしまうだろう……




ああ、さっき会ったばかりだけどまたアレスに会いたくなった。



























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