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277、ロイドじゃないから…

 それから二年が経った。


 私の身長問題はラファエルの言う通り記憶が戻った後はちゃんと成長していった。今では前世から考えても過去最高の158センチはある。

ラファエルは170弱位だ。まだまだ大きくなると本人は言っている。


 弟のオファニエルも産まれて私達は三人兄弟になった。




 私とラファエルは14歳になっていた。

年が明ければ私達はすぐに15歳、いよいよ成人だ。


 ラファエルにも私にも縁談がいっぱい来ていたが全てお父様が断ってくれていた。


 ラファエルは成人したら旅に出たいと言っているがアレスが来ないとリリアが心配で何処にも行けないと言ってくれる。


 だから私もラファエルについて行って旅に出てアレスを探そうと思っていたのに……



**************



 ある日、お父様から大事な話があると呼ばれてとんでもないことを言われた。


「リリア、お前の婚約を決めたよ。誕生日に式を挙げると良い」

お父様が笑顔で言った。


 はあ!?

今まで断ってくれてたのは何だったの!?

「勝手に決めたの? 酷い! どうして突然!?」


「突然じゃないよ、リリアの幸せを考えて相応しい相手を探していたんだよ。きっと気に入ってくれると思う」


 お父様は諭すように言ったが冗談じゃない!


 そりゃ今まで婚約もしないで自由にさせて貰っていたけど勝手に決めるのは酷い。


「リリア……良い歳した健康な姫が婚約もせず結婚もしないなんて、そんなことは無理だよ」

ラファエルが冷静に言ってきた。


 お前が言うのか? ラファエル?

所詮はラファエルはお父様の言うことを聞くのか?

そうだよね。ラファエルはチビリルだったんだもん!


「ラファエルだって婚約してないのに私だけなんておかしいよ! 私に相談もなく決めるなんて酷い! 私にだって好みがあるの! 勝手に決めないで!!」



「……リリアはずっと私と話してくれないから……相談と言ってもね……年頃の娘は難しいな……」


 お父様は右目を押さえた後、ため息をついた。


それから立ち上がり私に近付く。


「じゃあどういう男が好みなんだ?」


 この二年ほとんどお父様を避けてきた。お父様に近付くのが正直嫌だった。


こんなに至近距離に来たのは久しぶりだ。


 私はこの二年どうしても認めたく無いものがあってお父様を見たくなかった!!


「リリア?」

お父様が私の顔を覗きこむ。


 不意打ちだったのでお父様の顔をまともに見てしまった。


「う……」


 お父様の顔はロイドなのだ。

全然違うけど確かにこの顔はロイドなんだ!


 お父様の瞳は右目が光の暗い緑で左は翠で美しい、こっちが本来の色だと思う。


 同じ系統の色だから気がつく人は少ないが、この左右の違いは前の世界で右目を取られてしまった影響なのかもしれない。


確かにロイドなのにこの人はロイドじゃないのが悲しい!!

見ると泣きそうになりそうだ。


 ルカレリアが滅びずにロイドが王子様のまま、苦労せずに育った姿がお父様。


 辛い目にあって歪んでしまったのが執事だったロイド。


 だってロイドはお父様ほど美しく綺麗じゃないもん!

もっとこう、なんて言うか歪んでるって言うか……黒いって感じ。


 笑い方もお父様と違って極悪そうなの。


 笑い顔がヤバそうな人なの。


 お父様と違って意地が悪いの。

 

 痛いのを痛いと言いたくない痩せ我慢の人なの。


 お父様を見ると、私の執事だったロイドにはもう何があっても二度と会うことが出来ないと言う事実を押し付けられるようで怖かった。


勿論お父様の事は大好きだ!


 でも私の執事のロイドがいない事実は……悲しい。


もう執事だったロイドはいないのだ。死んだも同然だ。


ここにいるのはルカレリアの王様だ。


 思わず涙が出てきた。

ああ、ロイドがいなくなった事実を認めたくなかった。

分かってはいたけど認めたくなかった。


 自分がキレイなジャ○アンより汚いジャ○アンを良いと思う日が来るとは……


「リリアが泣くのは久しぶりだね。そんなに婚約が嫌かい?」


「婚約も嫌だしお父様も嫌!!」


「リリア、パパに対して言いすぎだ!」

ラファエルに叱られる。


「お父様の何が嫌なんだい?」

お父様があくまで優しく尋ねてくる。


「全部! 婚約を勝手に決めてしまった事が嫌!! お父様の長い髪も嫌!! 優しそうな喋り方も、イヤらしく人を見下して笑わないところとかも嫌!! そしてその右目が嫌!!」


 二年間ずっと溜めてきたものが思わず溢れてしまった。


 なんて事を言うんだ!

なんて酷い娘だ!

言った側から間違っていることはわかっている。


 ラファエルが私を掴んで止めようとしたがお父様がそれを止めた。


「右目が……生まれつき見えていないのは誰にも言ってなかったが……知っていたのかい?」

あんなことを言った娘にお父様が優しく尋ねる。


 右目が見えて無い? 知らなかった……


私は人の欠陥に対しても文句を言った酷い娘だと気がついた。



「ご、ごめんなさいお父様、そんなつもりじゃなかったの……ただお父様がロイドじゃないから!」


自分の最低さに涙が止まらない。






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