273、その後の事
バーン先生があのフェルってこと？
言われてみれば面影がある？
ラファエルと二人でバーン先生の書斎に行った。
ノックをして入ると先生はそこにいた。
「どうしましたか？」
バーン先生は本を読んでいた。
よく見てみるとおっさんになったフェルだ。
一度目の世界のフェルは若くて女の子っぽかったんだと改めて思った。
フェルの時間もアレスと共に止まっていたのかもしれない。
「えーっと先生質問があります」
いきなりアレスは何処って聞くのも変だ……
「先生は昔、勇者のパーティーだったんだよね？ 勇者と最後に会ったのはいつ？ 何処に行ったか知ってる？」
私の代わりにラファエルが聞いた。
「勇者……懐かしい……もう30年以上も前の話だね」
フェルが懐かしそうに目を細めた。
アレスがどうなったか……それは……
フェルの話によると30数年前のあの日、ヴァリアルはアレスの背中を刺した。
ここまでは一緒のようだ。
アレスが倒れパニックになっていると、ヴァリアルに自分も攻撃を受けて傷をおった。
反撃を考えるがアレスの状態が気になる。
連続攻撃されそれどころではなくなり追い詰められた。
そこへ騒ぎを聞き付けたニーナと大勢の兵士達がやって来た。
ニーナと兵士は倒れているアレスを見てヴァリアルが乱心したと戸惑う。
ヴァリアルはアレスが反逆を企んだと言い。
アレスに加担するものはすべて仲間として処刑にすると言う。
ニーナは泣きながら否定し、アレスに回復をかけながら自分と一緒に戦おうとする。
ヴァリアル対、フェル、ニーナの戦いが始まる。
たぶん前の世界とここまでは一緒のようだ。
ここでフェルが先にやられて気を失ってしまう筈だったが今回は違うようだ。
なんとここで空間の裂け目からもう一人のアレスが現れたのだ。
そのアレスの持っていたエルシオンは不気味な目のついた剣に変化して更に細身の剣になった所でアレスがヴァリアルを刺したそうだ。
刺されたヴァリアルの傷口からは血ではなく黒い靄のような物があふれでてきたそうだ。
そこでヴァリアルは倒した筈の魔王に器にされていたのだと気がつく。
ヴァリアルから出てきた黒い靄は、アレスから逃げるように空間の裂け目に入って行ったそうだ。
アレスは振り返り言った。
「フェル！ ニーナ！ 魔王はもう復活させない！ 必ず消滅させるから、君たちは自分の人生をおくってくれ！ さようなら」
と叫んで黒い靄を追って空間の裂け目に入って行った。
フェルとニーナは意味が分からなかったが、今見たアレスが本当にアレスであることは間違いない事は二人にはわかった。
フェルとニーナはすぐにアレスを追おうとして空間の裂け目に入ろうとしたが空間の裂け目はアレスが入るとすぐに閉じてしまったそうだ。
フェルもニーナもその場にいた兵士達もボーゼンとしたが、
刺されたアレスを助けないと！ と思って見ると倒れていたアレスが砂のように消えていったそうだ。
アレスを見たのはそれが最後だったそうだ。
その後ヴァリアルが気が付き正気に戻ったヴァリアルは自分はとんでもないことをしてしまった！ と大泣きしたそうだ。
そして無敵の軍隊を作る為の研究を中止し、父王を病気と偽り殺していたことも告白した。
操られていたとはいえ、魔王につけこまれるような感情があったとも告白した。
アレスに対してそう言う感情があったのは事実だから、もう自分は王様になる資格はないとヴァリアルは旅に出てしまったそうだ。
そうかヴァリアルは心底悪いやつでもなかったのか……
とここで思った。
もしかしたら前世のお父さんだったかもしれない人がそれほど悪人ではなくホッとした。
でもここからエターナルは大混乱になったそうだ。
勇者アレスが消え、王様も殺され、ヴァリアル王子もいなくなった。
王族の血を持つものを王に祭り上げるなどいろいろやろうとしたが、結局王政を保つことが難しくなり王政崩壊へと向かっていったそうだ。
その頃にはフェルとニーナは王宮を出ていて自分の父親の領地へと戻っていたそうだ。（え？ 領地？ と思い訪ねるとフェルはモーモを含む一帯の領主の息子だった。初耳！)
父はエターナルの今後は難しいとフェルとニーナに国を出ることを進めてきたそうだ。（現在ではその父親はもうなくなっているそうだ）
そしてニーナと二人でしばらく旅をした。
出来ればヴァリアルも探したかった二人はいろいろな国に行ったそうだ。
だが途中で寄ったスノウハイランドでニーナにいい人が出来た。
ニーナは彼と結婚して、そこでフェルと別れたそうだ。
ここで私は涙がブワッと溢れた！！
ニーナが結婚していた！！
私の場合前世のフェル＝ニーナになってしまうが、感動だ！
おめでとう！！ ニーナ良かった、幸せになったんだね！！
いきなり泣き出す私にバーン先生は戸惑った。ドン引きだ。
