272、兄のラファエル
記憶が戻った!
でもまだ整理がつかない!
まずはチビリルから……
私の双子の兄のラファエル……
確かに『珍しいね』とよく言われる蒼い髪が混ざって瞳も蒼いチビリルの面影あり?
そうなのだ。兄のラファエルは珍しい髪色なのだ。
お父様もお母様もそして私も金髪。
なのにラファエルは金髪の中に所々に蒼い髪が混ざっている。
体格差もあり私と双子には見えない。
だがさすがに美しいお父様とお母様から産まれただけあり美しい顔立ちだった。
「チビリル……人間になったんだ……」
下手したら片手でつかめそうな大きさの赤ちゃん犬だったのに……
今は私の兄……。
複雑……。
「私達、双子なのに何でこの体格差? 前のリリアより私小さくない?」
「……記憶も戻ったし、ちゃんとこれから成長するんじゃね?」
「記憶と身長関係あるの?」
「知らんけど、お前10歳位から大きくなってないだろう? お母様に似て美しくなりそうって縁談の話とか来たあたりからだから無意識に大きくならないようにしてるんだと思ってた」
縁談…ていえばそうだ!! この世界は15歳で結婚しちゃうくらい早婚な人もいる。
ましてや私は今回ルカレリアのお姫様。
美しいルカレリア王族の姫が回りの国々から望まれるのは当たり前だ。
無意識に自分の成長を止めていた? すごいな私。
でもこれからは美しいお母様に似て美しく成長……?
やったぜ!
アレスもビックリか?
「でもリリアって前のリリアと顔あまり変わらねえよな……髪の毛の色が変わっただけみたいで……お前の魂、個性強すぎるんじゃね?」
「げ!? そうなの?」
私美しくならない? 残念過ぎ!!
それよりも大事な事がある。
「アレスは? アレスは今どこにいるの?」
「……お前さ、俺が何でも知ってると思ってるのか? 知らねえよ。」
「何で? フェンリルさんならわかるんじゃないの?」
「俺はもうとっくにフェンリルと切れてるんだ。フェンリルが持っていた知識も今じゃもう思い出せない。今はチビリルとラファエル経験のみだ」
「そんな……じゃあフェンリルさんに会いに行く!」
「そんなのパパが許すわけねえじゃん! バカ」
ば、バカって言った人がバカですーーーー!
「とりあえずママに会いに行くんだろう? ちゃんとドレスのお礼も言うんだぞリリア」
何だかチビリルが私の兄っぽい態度をとっている……兄なんだけどさ……
「ラファエルはずっと記憶はあったの? しゃべるのも早かったんだよね? だから神童とか言われたりして比べられる私の身になってほしいよ」
「お前さあ、本来なら俺一人っ子だぜ、なのにお前が勝手についてきて……ママのおっぱいを独り占めの筈が半分分けてやったんだから感謝しろよ」
「はあ? なに言ってんの? このエロ犬! その綺麗な顔でそんな下品なこと言うな!」
「ハイハイ……」
お母様の部屋に行き二人でお加減はどうですかと見舞った。
お母様をよくよく見てみるとマルタだ。
うーーーーーん……何だか今まで見ていた光景と違って見える。記憶が戻る前は純粋にお母様だと思っていたが、今見るとマルタだよ。
しかもお母様の部屋にいる侍女がエリザだ。
吸血鬼でないエリザは少しだけ老けてはいたがそれほど変わっていない美魔女だ。すました顔をしているが中身はイケメン好きに違いない。
ラファエルがお母様に寝ていなくて良いのか聞くと、お母様はお父様が大げさなのよ、とニコニコしていた。
お腹は目立たないが赤ちゃんがいるのか……
でもマルタが幸せそうで良かった。お姫様に戻れて幸せな結婚をしたんだね。
名前もちゃんとマルガリータって名前で呼ばれてるし……
「ママ…今幸せ?」
「あら?リリアがママって言うのは久しぶりね。そうねとっても幸せよ。あなた達がいて、パパもいて、そして新しい命も産まれるの…幸せよ。」
マルタが微笑んだ。
ああ、良かった、このマルタは三姫達に意地悪をされることも吸血鬼にされることもなかった幸せなマルタなんだ。
お母様の部屋を出た後にラファエルに質問してみた。
「ねえラファエル…お母様のお腹にいる子って誰?」
「は?何言ってんの?普通に赤ん坊だろ?誰でもねえよ。敢えて言うなら前の世界で産まれそびれたヤツだよ。」
「産まれそびれた…?」
「そう、カホイに向かう馬車の中にいたヤツだよ。」
「へ?」
「カホイに向かう馬車でママのお腹にいたんだよ。そいつが巡りめぐって来たんだろ。」
「マジ?マルタ妊娠してたんだ。」
「本人は気づいてなかったと思うよ。ただ命の気配がしただけ…」
「チビリルすごい!そんな事もわかるんだ!…良かった~中身アレスだよ、とか言われたらどうしようかと思ったよ…」
ラファエルが口をあんぐり開けた。
「…ば、バカじゃね? アレスは生まれ変わってねえだろう!?」
「そ、そうだよね。アレスは生まれ変わってないよね?いやーーー深読みしちゃったよ。」
「全然深くねえ!そんなにアレスが気になるなら最後に見てるヤツがいるはずだろ?身近にさ、」
「身近に…見てるやつ?」
「そうだよ!鈍いな!魔王倒した時に一緒にいた筈のヤツだよ!!」
魔王を倒した時に近くにいた筈のやつ…?そんなすごい人が?
「バーン先生だよ!」
「バーン先生?なんで?」
「アホな子だな…バーン先生はフェルだろ?」
バーン先生が、フェル!!!?
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