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270、一緒でいいじゃん

「どこに着いたん? 間に合ったって? なにに?」


私たちは大きな門の前にいた。物凄く大きい。

誰用だろう?


巨人でも通りそうな門だ。


そこでチビリルは背中から降りろと促してきた。


「リリア、よく聞け!」


「はい」


「ここからは別々だ! 一人づつ門をくぐる」


「はい」

 油断していた、最後まで連れていってくれると思ってしまった。

大丈夫かな……。


「でもお前は迷子になるかもしれないから、特別に俺のしっぽの先を追ってきていい。何なら寸前まで持っていてもいい」


「はい」


良かったーーーーーー! チビリル優しい。


「いいか? 中に入って俺が合図したら俺とは別の方に行くんだぞ」


「え? やっぱり別々? 別ってどっち?」

しょぼーーーん。


「どっちでもいいよ。お前の好きな方だよ。行きたい方に行け……さあいくぞ! 門を通過するまでお喋り禁止だ。俺が話しかけるまで喋るな!」



 私とチビリルは門に向かって一列になった。


 チビリルは先頭だ。


私はチビリルの尻尾の毛先を握ってついていく。


近いと思っていた門は意外に先にあった。


 何だか距離感が掴めない。


やっと門に近づくと門がゆっくりと開いた。


中は眩しいのか何も無いのかよく見えなかった。


 門をくぐり終る寸前何となく見上げるとまた何かが覗いている!


げ!!!!!


思わず声が出そうになった!


白いモノ!!!?

直感だがさっきの白いモノとは別の存在のようだ。


そして一瞬でそれは消えた。


 声をあげてはいけない。チビリルがダメって言ってたし……

声をあげたらあの"何か"に捕まりそうな気がした。




 私は緊張して足が縺れそうになりながらも歩いた。

チビリルがいなかったら歩けなくなっていたかもしれない。


門をくぐっただけのようなのに凄く長い距離を歩いた感じがした。




 無事に通り抜けたあとチビリルが言った。


「もう声を出してもいいぞ、ほら好きな所に行け。俺はこっちだ」



 チビリルが行ってしまう。


ピンクと白のほわほわしたところだ……。

なんだか沢山の人影があるが、どれもハッキリしない感じで透けている。


 回りに白い光が無数にあって人影は散り散りに別れて進んで行く。




 好きなところ……?


 私は見えなくなる前にチビリルを追った。


チビリルがある場所に着いたようだ。

その場で丸くなり目をつぶる。

こんなとこで寝るの?


 私はそこにタックルした。


「ぐえ!」


チビリルが飛び起きる。


「何すんだよ!」


「だって好きなところって言ってたからここがいいかなって……」


「お前! そう来たか! ああ、もう間に合わねえ……」


 気が付くとチビリルと私は狭い壁に覆われていた。


「せ、狭い」


「当たり前だ! 本来一人用の俺様の特別席だ!」


「迷惑だった?」


「あったりまえだろ! 俺だけが可愛がられる予定だったのに!」


「可愛がられる?」


「もういいよ! 結局俺がついてないとダメなのか! いいよ、俺、お前の結婚の立会人で証人だもんな。ちゃんとアレスに会えるまで面倒見てやるよ!」


なんと頼もしいチビリル!


 そんなチビリルの頼もしい言葉を聞いたとたん重い眠気に見舞われた。

安心したからだろうか?

チビリルの姿が見えなくなってきた。


回りも暗くなっていく。


そこから深い深い眠りについた。



 時々誰かの声が聞こえたような気もする。


でも私にはチビリルがついててくれる。

大丈夫。安心だ。


 隣のチビリルの存在が安心だった。


だってくちは悪いけど本当はとっても良い子だもん。


 安心してぐっすり温かい所で眠った後は暗い場所からの脱出だった。

チビリルが先に出ていく。

あわてて後を追った。


 いきなり眩しい所に出た。


眩しい! なにこれ? 苦しい! 息をしないと!!


 何か猫か何かの大きな鳴き声が聞こえた。


 チビリルは?


手が触れた。大丈夫、隣にいるようだ。


 誰かが、私達を見ている。


 またあの"何か"が覗いているのか?


 怖い……!


 でも、この温かい安心出来る感じは、あの白いモノとは全く違う。


 中々目が開かないが、一生懸命目を開けて様子を見てみた。


 何だかボヤける視界に映ったのはーーー


 太陽を透かした様な美しいサラサラの金髪にサファイアの様な瞳の美少女と、同じくサラサラの金髪に翡翠の様な緑の瞳の美少年。

 物凄い美少女と美少年が瞳を潤ませ、嬉しそうに私を見つめていた。


 どこかで見た、美少女と美少年だな……


 ぼんやりと思った。



ーーーーーーーーーーーーーーー私の記憶はここまでとなった。





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