269、霊獣チビリル
私を背に乗せてくれチビリルが走り出した。
チビリルの背中が頼もしい!
チビリルに触れてモフモフでお喋りできたらすごく安心した。
良かったーーーーーー。
「力を貯める為に眠りに入るから俺から離れるなって言ったのに、お前泣いてて聞いてなかったな!」
「えーーーー?」
私のギャン泣きの中そんなことを言って寝ていたの?
気がつかんよ……
私の泣きっぷりでよくそんなこと言って寝られたな、おい
いや、違う、チビリルありがとうだ。
「そうだぞ、ちゃんと感謝しろよ!」
「あれ? 考えてることだだもれ?」
「勿論、今は精神世界を通過中だから耳を塞いだって勝手に入ってくるよ」
精神世界? アレスが前に行ってたやつ?
さっきの白いとこは? 私もうちょっとでリリアになる前の世界に引き込まれそうだったよ。
「白いとこ? 別の次元と繋がっているなら次元の狭間だと思うけど……リリアそんな所に行ってたのか? 危ないやつだなあ」
見つけてくれてありがとう……
「て言うか、お前ちゃんと喋れよ! 精神世界なんだから自分をしっかりさせないと呑まれるぞ! 喋った方が存在がしっかりするから!」
「あ、つい楽だったんで……」
「だいたいお前が泣いてて俺の話聞いてないから問題なんだぞ! 反省しろよ」
私が聞いていたか確認しないのもどうよ?
「はい、反省します」
「お前、言ってる事と思ってる事、違うじゃねえか!」
「えーーーーーー!」
反省するのは本当だよ。
「そうか、そうか、お前俺が思っていたより図太いんだな! だから消えずに済んだんだ。良かったな」
「ありがとう」
図太いってロイドにも言われたなあ……
そんなことないからギャン泣きしちゃうのに……
「本当に……アレスは何でこんなやつを嫁にしたのか……」
ひどいなチビリル!
そう言えば私の考えはチビリルにだだもれなのにどうしてチビリルの考えてることは私に聞こえないの?
「俺は霊獣の端くれだぞ、お前と違うの!……て言うか声出せって!!」
「はーい!」
声出していこうぜって体育会系かい!
「何だよ、それ……」
「アレスだったら爆笑もんなのに、通じないか……」
「まったく……それだけ変なこと言ったり考えたり出来れば大丈夫だな、図太くて良かったな、リリア!」
「また図太いとか言う……繊細な乙女だよ」
はははっとチビリルは笑って走り続けた。
犬って笑うんだな……とか思ってしまった。
虹色の空間からいきなり草原に出た。
「ここは現実!?」
「ちげーよ。現実じゃねーよ。俺の元本体の棲み家近くだ」
知るかい!
どこかで見た光景だ。ーーーーーーー草原に蒼い大きな大きな犬が立っていた。
あれは、!?
「フェンリルさんだ!!」
走りながらチビリルが叫ぶ。
「一応最後の顔見せによったぜ! こんなに立派になってやった!! 俺はもうあんたの一部じゃねえからな!」
「生意気だな……まだまだの小僧が……」
落ち着いた低い声が返ってきた。
やっぱり本物は違いますね。
「いつか、あんたを越える! じゃあな!!」
そう言ってチビリルは走り抜けた。
止まらないの?
「こら、何さっさと行くかな!?
戻って! アレスの事聞きたいよーーーー!」
「バカじゃね? 俺急いでるんだぜ! 間に合わなかったらどうしてくれる! お前のせいでかなり遅れてるんだ!」
ああ、スミマセン。
「……? 間に合わなかったら……? 何を急いでるの?」
チビリルがいきなり止まった。
「良し、着いた! 間に合ったぞ!! さすが俺!!」




