268、アレスに会いたい (改稿一部付け足し2018,9,25)
ーーーー柚子に戻らない!!!! ーーーーーーー
私は全力で否定をした!!
和くんの、アレスのいない世界ではダメ!!!!!!
気がつくと……
また真っ白空間だった。
また何もなくなってしまった。
あれ? 私ここから出られる唯一のチャンスを潰しちゃったとか……?
膝を抱えて浮いていることしか出来ない……。
まるで浮遊霊とかの類い……
このまま消えないかが一番心配……
時間感覚がまるでわからない。
あれ? 私ってもしかして死んでるの?
死んじゃってるってこと?
このまま待っていても、何もない?
私はエターナルの世界から、弾き出され捨てられてしまった。
柚子に戻る以外に道がなかったのかもしれない?
こんな何もない世界でも考えてしまうのは彼のこと。
アレスに……会いたい。
アレスに会いたい。
アレス会いたい。
アレス、アレスアレスアレス……
アレスに会いたい!!!!
ーーーー無意識だった。
私はいつの間にか走り出していた。
走って走って、でもどこか別の場所に行ける訳でもない。
勢いがついた私は、そのまま踊り出す。
ほぼ毎日練習していた、姫巫女の踊り。
不思議と疲れることもないので、ひたすら踊る。
フェルが、ニーナが、教えてくれた踊り。
アレスが過去に行ったことにより、ニーナは死ななくて済んだだろうか?
フェルは30年以上アレスを待つことなく、自分の人生を歩めるだろうか?
さっきまで、自分の存在がとても頼りない物だった。
でも踊り出してから不思議と「私」という存在がとてもはっきりしてきた気がする。
よし! 踊れている!
右足で着地。
左に3ステップ、ターン。
床はない筈だが、不思議と着地で踏みしめられる。
これは私のイメージのお陰か?
いや、床はある!
ここは、姫巫女が踊る祭事用の神殿。
私はイメージを広げて行く。
見たことがないので、全部私の想像だけど、私は今、神殿で踊っているの。
そうね。ギリシャのパルテノン神殿みたいな感じで良いかも。
白くて大きな柱がいっぱい立っていて、柱は美しく立派な装飾彫刻で彩られているの。
大理石のようにピカピカで、綺麗な床の上を私は舞っている。
周りにはみんながいる。私の踊りをみんなが見にきてくれた。
マルタもロイドも、チビリルにメイドのみんな。
私が失敗しないか心配されていそう。
あ、フェルとニーナも来てくれた。
遠くにはエターナルの城下にいた人達も
大勢の人が来た。みんなが笑顔になってるの。
私の踊りに合わせて、音楽が奏でられ、人々が拍手をしてくれる。
そして、みんなの真ん中で、私を見つめているのはアレス。
もちろん彼も笑顔で、私の踊りを見ていてくれる。
『君がこんなに踊れるなんて凄い』なんて、きっと驚いてくれる。
ああ、アレス。私のカズくん。
私の踊りを見て喜んでくれる?
いっぱい練習して頑張ったって認めてくれる?
見直したって思う?
かわいいって言ってくれる?
大好きだって言ってくれる?
ずっと一緒にいようって言ってくれる?
貴方が大好きなの。
貴方にもう一度会いたい。
想像の中では私は1人ではない。
ジャンプ!
着地!
回転!
反る!
指先までしっかり伸ばす。
手先までしっかり意識して、つま先もまっすぐ伸ばす。
回転、回転、
背筋伸ばしてポーズ!
次は走ってジャンプ!
身体のある私だったら、とっくにバテていた筈だけど、疲れとか関係ないみたい。
自由にイメージ通り踊れてしまう。
頭が冴えて、踊りを間違えず、正確に踊れている。
肉体という殻から離れたせいなのか、自由に表現出来ている。
こんなに踊れるなんて気持ちがいい。
そこまで運動神経の良くない私が、ここまで踊れてしまうなんて…
これはもう神がかってるのでは?
そうか、これは神様への踊り。
神様への踊りなら、神様。見てくれてますか?
エターナルの神様!!
私の精一杯の踊りです。
どうか見てください。
私はここにいます。
どうか気がついて!
私、世界から弾かれてしまったのだけれど、どうしてもそっちに生まれたいの!
日本じゃないの! アレスいる場所がいいの!
神様!
最高神エターナル! 届いて!!
どうかどうか私をアレスの近くに…
もう一度、彼に会いたいです!!
この踊りを捧げます。お願い! 届いて!
アレスに会いたい!!
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どれぐらい踊っていたのか、自分でもわからない…
ただもう最後の方は、無の状態だった。
ーーーー気がつくと私の足は止まっていた。
動きを止め、立ち尽くす。
何も……ない。
ああ、ダメだった……。
こんな一方的な願いは、聞き届けられないのかな。
それにしても、どうして私は動きを止めてしまったのだろう?
神様に気がついてもらえるまで、ずっと踊っているつもりだったのに……
不思議な感じがした。
……。
ふと、見上げると、大きな何かが私を覗いている……白い大きな影のようなモノだ。
え!?
神様!?
にしては何か違うような?
ゾクリとした。
身体が無いのに背筋が凍る。
【見てはいけないもの】を見てしまった。
動けず固まった私を、何かがじっと見ている。
これは【見てはいけないもの】だ。
直感で分かっている。逃げたいが、そこから動けない。
暫く見上げていると、目が合ってしまった。
影のような白いモノに『目』なんてない。
でも目が合った。何故かわかる。
その途端、私の頭がガツンと大金槌で殴られた。
実際には殴られてはいない。
そんな衝撃と共に、頭の中に膨大な情報が入ってきた!!
この白いモノは私達の世界とは別次元のモノだという事はわかった。
別次元のモノ達の事を理解しようとしても、私達の言語や思考と異なっているので理解は出来ない。
膨大な情報を与えられたようだが、全く私には理解出来ずに、何かの映像がものすごい早さで頭の中を通って行った感じだ。
身体も無いのに酷い頭痛に襲われる。
頭の中がめちゃくちゃにかき混ぜられ、シェイクされ、限界まで膨れ上がる。
痛い痛い痛い!!
やめて!!
私の頭では無理!!
頭が割れる!! 激痛だ!!
色々情報をくれても、理解どころか私が潰れてしまう!!
やめて!!
やめてーーーーーーーーーーーーーー!!!
声にならない声。
身体はないから、叫べているのかも不明だけど、鼻水も涙も、もしかしたら脳みそも飛び散る様な勢いで、全身全霊で叫んだ。
すると白いモノが、私から目線を逸らした。
私の頭がスッと楽になった。
私に全ての情報を入れるのを諦めてくれたらしい。
肩で息をしながら、まだ少し痛む頭をおさえ、情報を整理してみた。
白いモノが伝えようとした事。
全て理解するのは私の頭のスペックが足りない。
私なりに整理して、私達の世界の『言葉』として表現するとしたら、白いモノは【超越者】であり【永遠成るモノ】【観察者】と言ったところだ。
かつて白いモノ達は、仮の姿でエターナルの地に現れた。
エターナルは彼等の遊び場だった。やがて時と共に飽きられ彼等は、エターナルから去った。
エターナルの土台を作った白いモノ達。
次元の違いで私達が彼ら(?)(どうやら複数の存在)を理解することは出来ない。
姫巫女の踊りは、ある種の彼ら伝わる信号というのか、パターンがあり、正確なパターンを繰り返すことにより彼らにアクセスする権利が得られるキーとなる。
白いモノはアクセスしてきた私に、ご褒美(?)をあげたかったようだ。
しかし彼ら?が思うより私の能力は低い。
この膨大な情報は、人の頭では持つ事は出来ないのではないか……
きっと私は、この白いモノに会った事さえ忘れてしまうのだと言うことを理解していた。
正しく住む世界も次元も違うのだから
これが最高神エターナルの正体のようだ。
確かに私達からしたら神のような存在だが、私達の考える神とは違う"何か"だ。
一応私の願いが届いた……? と思って良いのだろうか?
私は、アレスに会いたい
私は、アレスのいる世界に行きたい。
白いモノが与えてくれる凄い情報なんて、私にとっては何も有り難いものではない。
ゆっくりとした動作で白いモノの片腕?が上がり、大きな細い指を指し示した。
何もない空間を指し示している。
え? 何? そっちに行けって事?
声にならない声で訪ねると、白いモノは、もう消えていた。
うわ、はやっ!
最初から何もなかったかの様に、何もない空間に戻っていた。
それと同時にさっき入れられた情報がどんどん消えて頭が軽くなっていく。
順調に全て忘れてしまいそうだ。
どうせ思い出しても意味が解らないのだ。
私が持っていても宝の持ち腐れ、惜しくも何ともない!
今の白いモノが神様でも悪魔でも指を差した方へ行ってみるしかない。
行ってみると言ってもただの白い空間が続くだけだから目視出来る範囲に何もないのはわかってはいるが……
私は走り出した。
走って走った走りまくる。
それでも何もない!
方向も合っているのかさえ分からなくなってきた。
何もないってつらい……
でも走るしかないから……走る。
アレス、アレスにあいたいよう……!
気が付くと白い空間ではなく虹色の空間になっていた。
さっきの白い何かが指し示したのはここなのだろうか?
白い空間でおかしくなりそうだったので、ちょっとでも変化があったのは嬉しい。
でも色がついただけで何もない…
どうしよう……また踊る……?
!?
何かが光った?
遠くから蒼い光が近付いてきた。
ものすごいスピードであっという間に私の前に現れた。
狼だ!!
蒼い狼。
片方の腕に腕輪を着けたシュッとした感じのおしゃれなイケメン狼。
「リリア、探したぞ! どうして俺から離れたんだ!」
シュッとした狼が喋った。
私を知っているらしい。
離れたって……?
こんなイケメン狼と私は知り合いでしたか?
「俺がパパとママへの道標を辿るから途中まで一緒に行くようにアレスに頼まれたんだ……」
アレス!
この狼はアレスの知り合い?
「リリア! しっかり自分を持て、透けてるぞ! 空間に飲み込まれちゃうぞ!」
え?
透けてるのは仕方ないのかと受け入れちゃってたけど不味いの?
「リリア! 俺みたいに声を出せ!」
こ、こえ……?
声の出し方わからない……!?
だって私って本当にここにいるのか……わからない……
「リリア、俺に捕まれ! 透けちゃダメだ、触るつもりで来い!! いつものようにモフれ!」
あれ? モフる?
この狼って……?
手が触れた。
モフッ
赤ちゃんの手触りでないちょっと固めの毛質……
でもこの狼は間違いなく……
「チビリル……?」
「そうだ、俺だ! 触れたな? 声も出たな? 良し、俺に乗っかれ!」
まさか、まさかの……
あのチビリルがこんなに頼もしそうな狼に成長しているとは……
白いモノに覗かれた所を改稿(付けたし?)しました。




