266、異変の前
朝になった。いや、もうお昼だった。夜中起きていたので寝坊だ。
昨日の夕方お風呂に入って姫巫女の服を着たままだ。
パジャマに着替えることもしなかった。
カホイに着いたらお風呂だな……
外をみた。まぶしい。
馬車はまだ森の街道を走っている。
普通に世界は続いているな……と思った。
アレスは旅だったのかな?
アレスの事を考えただけで胸がつぶれそうだ。
昨日はみんなと馬鹿騒ぎで気が紛れて良かった。
アレスの無事だけ祈ってこう。
『どうかアレスが無事に魔王を倒せますように』
ーーーーーーー 日がすっかり高かった。
エリザは吸血鬼なので"起こすな"と言ってもうひとつの馬車で眠りに入ったらしい。
もうひとつの馬車は遮光性高いらしい。
そしてマルタは吸血鬼でなくなったので"お日様にあたれるのです"と喜びながらロイドとイチャイチャしながら御者台に行った。
屍戦士が御者をしているから本来なら御者はいらない。
でも、その手があったかと思った。
これで完全に二人の世界だね。
うらやましいです。
御者台でどんなイチャイチャが繰り広げられてもこちらからは見えない。
サクラコもシーラもレイラも残念そうにしていたがエリザがいないと文句を口にはしないようだった。
本当にまさかエリザがあんな性格だったとは……!!
暇だからサクラコにジャパネオの事を聞いてみた。
どうやら江戸時代の日本に近いらしい。
サクラコの好きな甘味はお団子とあんみつらしい。
「わらび餅が食べたい」と私が言うと「よく知ってますね、渋いです!」と驚かれた。
シーラとレイラも聞いていてそれは何だと聞いてきた。
「そのお菓子は都に行かないと食べられないですね~」
サクラコが難しそうに言った。
そうか……現代日本ほど流通とかは発達してないだろうからね。
コンビニないからムリか……。
やっぱりコンビニ便利だよね。
ジャパネオ行ったらみんなでコンビニ出店すれば良いんじゃない!?
儲かっちゃうかも?
とか思ったが商品どうやって仕入れるんだ? とすぐに気がついた。
シーラとレイラもこうしてお菓子の話をしていると普通の女の子のようだ。
戦闘メイドと言っても普通の女の子だよね?
そのあとはカホイに着いてからの話になった。
サクラコは行ったことがないのでひたすら楽しみのようだ。
「ロイド様はみんなと一緒にお風呂に入ってくれるのでしょうか?」
サクラコが不安げに言うと
「前回は入ってくれましたが……」
「今回はどうでしょうねえ……」
シーラとレイラが少し優越感を出して意地悪っぽく言っている。
「う"ーーーーー! ロイド様の入ったお湯に入りたいです! 出来れば濡れたロイド様を見たいです!」
サクラコが地団駄を踏んだ。
サクラコが変なことを言っている。
濡れたロイド……?乾いたロイドじゃ駄目なの?
ああ、あれか……
乾いてモフモフのチビリルもかわいいが濡れて痩せこけて見えるチビリルも新鮮でかわいい……
的な?
「そう言えば……姫様って勇者様とどのくらい進んでるんですか?」
サクラコが思い出したように言う。
どのくらい進んでるって……結婚までしちゃいましたがそれは言いません。
「サクラコ、気を使いなさい! 姫様、勇者様にふられたんですよ!」
「サクラコ、姫様が出発時にギャン泣きしていたでしょう!」
シーラ、レイラ珍しく私に気を使った(?)発言。
そうか……あんなにグズってたからそう思われていたか……
「姫様ふられた。ぷっ」
「姫様気の毒。ぷっ」
ん? こいつら喜んでないか?
「フラれてませんから! ちょっと離れるのも泣いちゃうくらいラブラブですから!」
シーラとレイラが残念そうな顔をした。
正直だな!
「やっぱりそうですよね? 勇者様の姫様溺愛ぶりは見ていて分かりますから! 今回も一緒に来るかと思いました」
何故かサクラコが得意気に言った。
「アレスはね。今回は来られないの。いつか一緒に行くからいいの」
「そうですか……で……勇者様とはどこまで?」
また聞くんかい!!
「んーーーーー」
私が返答に困っていると……
「まさかもうキスとかしちゃってます!?」
サクラコが興味津々で聞いてくる。
あまりの迫力に思わず頷いてしまった。
「キャーーーーーーー!!!!」
三人から悲鳴があがった。
何この盛り上がり?
一気に私をネタに女子トークが始まる。
いつ? どこで? どうだった? という類いの事を三人が質問して勝手に盛り上がっていく。
エリザがいたらもっとヤバイことになっていたかもしれない!!
「一番年下の姫様がそんなに進んだ方だったとは! サクラコ悔しいです!」
「生意気です」
「犯罪です」
あーーーー! もう私をいじるのはやめてほしい。
「みんなだってかわいいんだからすぐにいい人出来ちゃうよ!」
ちょっとこの言い方は上から目線の発言か?
「だって私……ロイド様が良いんです!」
「私の方がロイド様がいいです!」
「私はもっとロイド様がいいです!」
なに? あんた達……
変に息があってますね! 怖いよ!!
やっぱりロイドはモテモテか……
このままではハーレムになるな……
そんな女子トークをしている最中、ついに異変は起きた。
挿し絵消しました。
もう少し上手く描けたら出します。




