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264、お別れ

 ロイドと部屋に二人になった。


「ずいぶん可愛くしてもらいましたね。マルタはとても器用でしょう?」


 なにげに私ではなくマルタを誉めてますね。


「……で、私は姫様を連れて行くつもりでここに残りましたが、姫様はどうしますか? ここに残りたいですか?」


「私はアレスとお別れの挨拶をしてロイド達と一緒に行くよ」


「そうですか……ではここで待っているので行ってきて下さい」


「え? 一緒に会いに行かないの?」


「なぜ私が? 彼には私の右目を渡してあります。もう充分でしょう」


冷たい……まあ、ロイドらしいか……


「それに私が行くと色々やりづらい事もあるでしょう……」



へ? 気をつかってるんだ?


 気の利く人になったもんだと感心してしまいます。



「ロイド……私アレスに会って来るね。物凄く泣いちゃうかもしれないけど……」


「今さら姫様の大泣きグズり等何でもないですよ、いってらっしゃいませ」


そう言ってロイドがお辞儀をした。


 こんなに礼儀正しいロイドはいつぶりだろう? 美しく優雅な所作を見せられ彼が今ここで待っていてくれる有り難さを感じた。

改めて考えるとロイドには結構お世話になっている。


私は深呼吸をしてフェルの地下室に向かった。


 泣かない!


アレスの前では泣かない!


なぜならブスくなる!


好きな人に最後に見せる顔がブスいのは嫌!!


 柚子のように泣き叫ぶ無様は見せない、ちゃんと前世の失敗を繰り返さない成長した私になる!


アレスには私の最高の笑顔でお別れを……



 思ってるそばから勝手に涙がこぼれた。



ダメ、負けない! 泣かない!



 地下室にアレスとフェルがいる。


涙でにじんでしまう。


アレスの姿をしっかり見たいのに!


私は泣き虫過ぎる!!

こんな時に……涙よ、もうでないで!


「リリア……服を着てくれたんだね。とても似合ってるよ。ニーナもきっと喜ぶ」

フェルが笑顔で誉めてくれた。


「うん、似合ってるよリリア……その格好何か杖的な物を持たせたくなるね」


アレスは魔法少女か何かのコスプレと思ったか……?


「ふふ、これでもお姉さんぽくしたの……アレスにかわいい私を覚えていてほしいから」


「うん……かわいい、リリア……」


アレスの手が私に触れ抱き締めた。


温かい


アレスの温もりだ。

私の大好きな人の温もり。

このままずっとこうしていたい。

「元気でね、アレス。怪我しないでね。魔王を完全消滅させてね」


「うん、リリアも……元気でね。必ずまた会おう」



アレス、私の一番大事な人。

前世から私の一番大事で大好きな和くん。

どうか無事で……。


抱き締めてアレスの無事を祈った。


「アレス、これを……」


私は皮袋に入った妖精石を渡す。


「ありがとう……これをリリアの代わりに持っていくよ」


妖精ちゃん、アレスために役立ってね。


「俺も……何か渡せるものがあればいいけど……」


「アレスからは、前に装備品の指輪をもらったもん。これでいい。それに私達誓い合ったもん、それだけで充分」



アレスの指先が私の頬に触れ唇が私の唇に軽く触れた。

見つめるアレスの目は赤い。


 きっと私との別れを惜しんで人知れず泣いてくれたんだろう。


 もう一度唇が触れて長いキスをした。


大好きな人とキスをして結ばれた私は幸せ者だ。

大好きな人のお嫁さんなれたんだ。

転生大成功だ。

おめでとう柚子。おめでとうリリア

おめでとう私……。


 ずっとこうしていたいが、部屋でロイドが待っている。


馬車でマルタやサクラコ達も待っている。


「アレス……私……もう行くね……アレスはひとりぼっちの旅になっちゃうけど頑張って……気をつけて……」



「俺はひとりぼっちじゃないよ。リリアからはこの妖精の石、フェルからは白い魔導コア、ロイドパパからは右目をもらった。三人がついてきてくれるようなものだよ。今度の勇者のパーティは最強だよ」


アレスが微笑む。


フェルも微笑んでいた。


 そしてフェルが私に握手を求めた。

私たちは握手をしてお互い元気でねと言った。


 フェルには本当にお世話になった。

ありがとうフェル。あなたがいてくれたからここでの生活が悪くない物になったんだ。

お茶会も楽しかった。

 フェルが元気になった世界でもう一度会えるといいな。

「ありがとう、フェル」


「ありがとう、リリア、またきっと会えるよ」

フェルが穏やかに笑う。


それからアレスに向き直り



「いってらっしゃい、アレス」


「いってらっしゃい、リリア」



 そう言って私達は離れた。




 なんとか泣き叫ぶことはしなかった。


私は抜け穴に向かって歩きだす。



 穴に入ろうとした瞬間、後ろからアレスに抱き止められた。




「リリア……愛してる!」




 不意打ち過ぎた。



泣き顔を見せずに去るつもりが台無しになった。


『愛してる』


そんなこと柚子の時だって言ってもらったことないよ。


私だって貴方を愛してる。


和くんの時から私の隣にいてくれてありがとう。

こんな小さなリリアになってからも私を守って変わらずに愛してくれてありがとう。


もしも本当に『次』があるのなら……

その時こそ私は貴方から離れたりしない。


だからどうか私を探し出してね。

必ず私達、もう一度一緒になるの!



 もう大号泣になってしまった。



挿絵(By みてみん)



こんな泣き方したらドン引きされちゃうよ。


泣きすぎて思ってる事が全く言葉に出来ない。

悲しい、本当は離れたくない!


「わ、私も……えぐえぐ……私も……ひっく……も、もう! 全然美しくない別れになっちゃったよぉ……うわーーーん!!」



そう言って泣く私を見てアレスはリリアらしいと言って笑った。


 でもそのアレスの目にも光るものがあった。



 今度こそこれでお別れだった。




鉛筆画ですが挿絵追加しました。

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