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260.君を連れてこのまま逃げ出したいのに 

「ちょっと外に行ってくる……」


 そう言ってアレスが壁のクローゼットを開けようとしたとき、私がいることに気がついたようだ。


 アレスとフェルが気まずい顔をした。


アレスはそのままマントを取りだし羽織る。


外への抜け道に行こうとして、立ち止まった。


そして振り返り勢いよく私のところへ来て私を抱き抱えて外へ向かった。


 私と外へ出る気?


まさかこのまま何処かに行くの!?


何かしゃべる間もなくあっという間に王宮の外に出た。


 街だ。


黙って出てきたらダメじゃない?

みんなに心配されるよ。


 アレスは身軽に屋根の上に登り私を抱えたまま屋根の上を移動する。


「アレス!!」


私が声をかけるとアレスが止まった。


「何処に行くのアレス?」





「……何処にも……何処にも行けない……。飛び出したところで全部放り出すのは無理だ……」


 そう言って私をおろしてアレスが座り込んだ。


「君を連れてこのまま逃げ出したいのに……」



 私はアレスの横に座った。


エターナルの空は少し曇っていた。

最近きれいな晴れの日がない気がする。



 そんな曇り空を見上げアレスの心も晴れないだろうと思った。


 勇者って大変だな。

みんなの期待を背負ったらつぶれてしまうよね。

みんなの意見を聞いてたらキリがないしね。


 私は少しでも、和くんの時にしてあげられなかった彼の救いになれればいいな……と思う。


「俺は甘くなった……ここが俺の現実だった筈なのに何だかゲームの世界にいるみたいで現実味がないのかもしれない。世界が大変だとか不幸な子供がいっぱいだとか言っても実感が無いのかも……」


 私は座っているアレスに抱きついた。

何かしゃべってもきっと役に立てない気がする。


 アレスは私の頭を撫でた。


「気がついたら柚子と部屋にいてこことよく似たゲームをしている……そんな現実だったら良かった……」


 過去に戻って世界をやり直しますか?


   はい     いいえ


そう言う選択だね。


「別に……君と会えなくなる心配がなければいくらだってやり直してやるのに……」


 アレスも不安なんだね。

私もあなたと離れたくない!!


 その時悲鳴とバタバタ走る音が聞こえた。


アレスが立ち上がった。

私を置いてすぐに屋根を飛び降りる。



 下の道では魔族の兵士が子供を追っていた。


蜥蜴のような兵士と角の生えた動物が混ざったような風貌の兵士だ。


その兵士達は子供を追って遊びながら殺しているようだ。


「あと一人で5人だ、俺の勝ちだな!」


「何を言ってやがる、すぐに追い抜いてやるよ!」


蜥蜴と獣の兵士は子供を殺す競争をして遊んでいるようだった。


アレスが二人の兵士の前に飛び降りた。



逃げていた子供がよろよろしながらそれでも必死に走って逃げて行った。


「お前、この前の侵入者!?」

蜥蜴の兵士がアレスに向かって言った。


 アレスは動かなかった。

蜥蜴の兵士の足元に転がる小さな亡骸を見つめていた。


蜥蜴の兵士はこの前ロイドと一緒にいたトカゲ隊長だったようだ。(名前なんでしたっけ?)


 そういえばロイドがトカゲ隊長が街で子供を切り刻んでいたとか言ってた……。


「ああ、あのロイドを傷つけて逃げたんだっけ? ロイドの奴、威張ってるわりにたいしたことないな。俺たちでこいつを仕留めたら格が上がるんじゃないか?」

獣の兵士が嬉しそうに剣を構える。

その剣には先ほど殺した子供の血がベットリついていた。


「ロイドがやられたんだぞ、まずくないか?」

トカゲ隊長……カイだっけ? が言った。


「カイ……お前ロイドによくしっぽを振ってるな。あいつが魔族転化したあとの事を考えてるんだろう? ずる賢いな!」


「だってあいつ魔人確定って噂じゃん。今のうちに取り入っておきたいしな」


二人の兵士がゲラゲラ笑いだした。


 トカゲ隊長、ロイドに"手を貸そう"とか言ってたのはそんな下心かよ!

ロイドはいい奴だったって言ってたけど、これが魔族になってしまうと言うこと? 心まで魔族になってしまうの?



アレスが何か呟いた。


「お前達……何人子供を殺した……?」














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