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259、ボクのアレスと違う

 一足遅れてアレスを追ってフェルの地下室へ向かってみた。

なんだかじっとしていられない。


 地下室へ着くとアレスとフェルが話をしていた。


フェルはぷるるんに支えられて座っている。


「じゃあ、アレスは過去で魔王を倒すのは反対なんだね……」


「そうは言っていない!! ただ今を真剣に生きている人に対してどうなのかと……」


「アレス、どうしたの? 街へおりて街の状況見てきたんでしょ? 親をなくした子供がスラム街にいっぱいいたんでしょ? その子供達はきっと大人になる前に大半が死んでしまう。子供達の為にも平和な世界にしてあげたいって思わないの……?」



「……」



「どうしたの? アレス? 昔の君だったら何よりもそう言う子供達を気にかけたじゃないか……ボクたち旅の途中で何度も間に合わないことがあった。滅ぼされてしまった村や、殺されてしまった人達……君は助けられなかった小さな子供の手を握って助けられなかった悔しさに震えていた。その度に時間が巻き戻せたら……なんて漠然と思っていたけど、君はそういう力を手に入れたんだよね? 今回は君がいなくなってからの全てを取り戻せる!! 良いことに決まってるじゃないか!」



「………」



「どうして黙ってるの? アレス……君さぁ……おかしいよ……? 勇者の魂を戻す時にしっかりロイくんに見てもらった筈なのに……間違えちゃったのかな? ……アレス……? 君は『だれ』なの?」



「え……?」



「ボクのアレスと違う……」

フェルの瞳に冷たい光が映る。


「何言ってんだよ、フェル、俺は俺だよ!」


「違う! アレスはね……()()じゃないんだよ! アレスはいつも心を痛めていた。どうやったら皆を助けられるか……子供を助けるのに特に力が入ってたのは自分もひとりぼっちの経験があったからだろう? 親を無くした子供達はかつての自分だった。だから助けたかったんだよね? なのに……何を迷う事があるの?」


「そうかもしれない……でもフェル……ずっと思っていて口に出さなかった事がある……どうして俺が勇者なのか!? ずっと誰かに代わってもらいたかった」


「アレスこそ何を言ってるの!? そんな事アレスが言う筈ない!!」


「フェルは俺の事を30年以上も待っていたせいで俺の事を買い被りすぎてる! もともと俺は大したことない奴で、出来たら勇者をやめて田舎で好きな人とゆっくり暮らしたい!」


アレス、スローライフ宣言!

まさかのフェルとのケンカ?


「は、ハハハッ……好きな人と暮らしたい!? 何ボケたこと言ってるの!? 君は選ばれた人だろ? 神に選ばれ加護をもらいその力を使ってきただろう? 今さら自分の役目を放棄するな! おかしいよキミ」


「俺はフェルにも普通に暮らしてもらいたかった……こんな一生を俺に費やすようなことしてほしくなかった!!」


「いいよ! そうするよ! 次の人生は自分のためだけに生きる! もうアレスのことなんて知らない!

……だから……だから過去の魔王を倒してアレス! 君にしか出来ないことだよ……」


フェルの瞳から涙がこぼれた。



「フェル……」


 二人の言い合いに口を挟める筈もなく私はただ遠くから見ていた。


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