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258、お見せ出来なくて残念です

「参ったな……もうどうしていいかわからない……」

アレスの声のトーンが下がる。


ロイドは別ルートで生きるのを模索ってこと?


「消えると言われてそんなに強くいられるものなのか……俺にはわからない……」


「別に強くないです。内心どれだけ動揺しているかお見せできなくて残念ですが、まあ姫様の事もありますし……」


「え? 私?」

突然私の方に話が来た。


「信じがたいことですが姫様はアレスが死んでいる間、別の世界で産まれて生活をしていた先にいた女性と言うことですね?」


「え……いや、えーっと……」

 何と答えていいのか冷や汗もんだ。


「まあ、姫様に自覚がなくても、アレスから聞いた話ですよ。姫様はアレスが好き過ぎて追ってきたと聞きました。姫様はアレスが屍戦士で自ら動かないうちからかなり好意をもっていました。前世の記憶に何か引っ掛かるものがあったのでしょう。私は姫様に物凄い意思の強さを感じます」


「私の意思の強さ?」

 実は前世の記憶はしっかりあるんですけどね……


「恋人を追って時空を越える? 信じられないですよね……でも本当ならすごい勇気と根性でしょう? そんな無鉄砲であり得ない事を個人のそんな思いでどうにか出来るのかと……つまり強い意志があれば可能に出来る事もあるのだな、姫様は凄い、と思ったのです」


なんだろう微妙に誉められていない感じは……


「生まれ変わったとしても私はまたマルタを選びます。その為にも私は強い意思で生きます。この世界が消えるのがピンと来ないのもありますが、この世界がこのまま続いても私は生き延びていく自信はある。

 だがアレスに強い意志が感じられないのはなぜでしょう? 腑抜けになりましたかアレス?」


「俺が……?」


「あなたは王子になってからも魔族との戦争に駆り出されたり勇者に選ばれた後も過酷な旅や戦いがあった筈。今のアレスからそう言った覇気が感じられません。残念です」


魔族との戦争や過酷な旅?

最初のアレスの経験?


「私はやることがあるのでこれで失礼します」


そう言ってロイドは部屋から出て行った。


「何か言いたいことだけ言って去ってった感じだね」

アレスを見ると顔色が悪かった。


「ごめんリリア……ちょっと行ってくる」


アレスは地下室への抜け道へ行ってしまった。


え……?どうしよう……アレスを追うべきか……


アレスと結婚して幸せ気分でいたかったけどそうもいかないらしい。


本当だったら温泉やったー!! なのになあ


マルタが人間に戻れたからここを脱出か……

しかもメイドさん達全員を連れて……?


 豪快な脱走だ。


 アレスどうするのかな……?

やっぱり過去に行っちゃうのかな?

アレスが過去に行ってしまったら私達もうこの世界のこの時間で会うことがないってことだよ。

それって永遠のお別れ……?


 でも私達結婚したしアレスは私を探すって言ってくれてるし、大丈夫だよね?


大丈夫……


 時間を越えて大丈夫なんてどうやっても証明できるものじゃない……


不安しかなかった。











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