表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/295

250、俺は行きたくない

 アレス最後の旅?


私が固まっていると


「いや、本当に最後になるかわからないけど……リリアがいなくなってしまったら探さないとだから……」


なんの事?

「私を探すって?」


「まず聞くけど、マルタさんを人間に戻した時、どう思った?」


「どうって……すごいな……って? アレスは万能だなって、でも倒れちゃったから大変だって……」


「うん、一人を助けるだけで、あんな感じなんだ。でもこの世界に助けてほしい人はいっぱいいるよね? 例えば屍兵にされちゃったりとか、魔族にされちゃったりした人」


「それはすごい人数になるね」


「そうなんだ。ひとりひとり助けて回るのは不可能だ。マルタさんのはどの程度大変か確認もしたかったけれど、本当はしなくてもよかったと思ってる」


「へ? マルタを助けなくても良かったって言ってるの?」


「ロイドさんから眼を貰ったのと、これまでの彼らの人生を考えると助けてあげたい、だから無駄だとわかっていてもやったんだ」


「無駄? マルタを助けた事が無駄?」


「言い方は悪いけど俺の魔力をスッカラカンにしてまですることじゃない」


ええーーーー? 勇者冷たくね?

本気で言ってるの?


「勘違いしないでくれ、ロイドさんも無駄になるかもってわかってるよ。それでもどうしてもって言われたんだ。まあ……俺のやろうとしていることに賛成ではないのだろうけど……」


 ちょっとアレスの人間性どうよって感じ?

ロイドもわかってる?

やろうとしていること?



ダメダメ……和くんが前世で悩んでた時の事を思い出せ。

きっと何か理由がある!

すぐに怒ったり責めたらダメだ。

ちゃんと話を聞かないと!


「つまり……ひとりひとりを助けて回るのはムリなんだ。とっくに答えは出ていたけど俺がやりたくなかっただけ……どうにかこのままこの世界を救えないか考えていた」


やりたくない? けど世界を救えないか考えていたの?

ますますわからない……


 でも冷静に聞きます。


「本当はここまで酷いことになる前に次の勇者が現れてくれれば良かったんだが……」


「前に勇者かもしれない人は殺されたって聞いた気がする」


「そうなんだ、勇者の可能性のあった者は処刑されてる。たった一人を除いて」


「一人を除いて?」


「本人は知らないけどロイドさんだよ。ルカレリアが最初に滅ぼされたのは多分彼がいたからだね。で、そのまま飼い殺しにされた。マルタさんと言う分かりやすい弱点を連れていたからね。彼は魔族に取り込まれる予定でもあるし」


「似合わない……ロイドは勇者っぽくないよ。それに勇者ってエターナルから出る筈では? ロイドはルカレリアの王族で、アレスはエターナルの王族でしょ?」


「実は俺は王族じゃ無い。庶民の上に捨て子だ。ヴァリアルは知らなかったようだがエターナル王家の策略だ」


「策略? エターナル王家の? どんな?」


「【光の国エターナル】は【光の勇者】を排出する勇者の家系だと思わせたかったんじゃないかな? 俺も神竜に会うまで知らなかったがエターナル王家には勇者の資質を持った子供を見つける能力がある。俺は前回の最有力候補だったから王族に迎えられたんだ」


 なんかセコいぞ、エターナル王家!

「じゃあエターナルから勇者が出やすいって言うのはエターナル王家のやらせなんだ?」


「そうだね。その力は王になった時に受け継ぐものらしい……だからヴァリアルは俺の兄弟ですら無かった。初めて会った時ヴァリアルは優しい良い奴だった。俺は初めて出来た家族や兄弟に感動してたから、アイツが俺が勇者になったことを妬んだり、俺が王位を狙っていると思ったりしてるなんて想像もしなかった。あの時の俺は嘘でもヴァリアルに救われていたんだ。だから、助けられるなら、ヴァリアルも助けたいと言うのは本心だ」


「ヴァリアルに会った時アレス……少しおかしかった……」


「心配かけてごめん。もう大丈夫だ。ヴァリアルの意識が少しでもあるなら()()()()を倒すつもりだった。彼を助けるために……でも彼はいない……だから俺は過去に行くよ」


「過去!?」


「そう、俺がヴァリアルに刺された日に戻る」


「え? 過去で魔王を倒すってこと? そうすると、今までの事は……」


「勿論全部やり直しになる。改めて正しい世界が作られる事になる」


「そ、そんなこと……出来るの?」


「出来る! 俺が中途半端に死ななかった為に次の勇者が生まれず引き継がれなかった。ここまで酷いことになってしまったのなら世界はあの日からやり直すべきだ」


 何か大きな話過ぎてわからない……いや、わかるけどさ、屍兵を1体づつ人間に戻すなんて不可能だ。アレスの人生をかけても足りない位の量がいるだろうし……


でも……今の私ってどうなる? 

皆はどうなる?


 そこでアレスが突然私に抱きついてきた。


「でも俺は行きたくない、行きたくないんだ! 世界を救うとかいいから君といたい!」


アレスの声が震えていた。

いきなり抱き締められて固まる私。


「自分でもどうかしてると思う。頭では分かってる。フェルはあの日からやり直せるなら命も惜しくないと、俺の魔力を補う為の白い魔導コアを完成させてくれようとしている。彼の望みはあの日からやり直すこと……でも俺はそんなフェルを裏切るような事ばかり考えてしまう。日本で柚子といた時と同じだ。戻りたくなくて足掻いた。今度は……今度もまた君と離れたくなくて、無駄な足掻きをしようとしている……」


 私を抱き締めるアレスの腕に力が入る。


「このままここで君と暮らしたい! 好きだ。君が好きだ。ずっと一緒にいたい!」


 ああ、そうか……この状況は和くんが戻りたくなくて苦しんでいた時と同じなんだね。


あの時の和くんとアレスが重なって見える。


私もアレスとずっと一緒にいたいな。

私はアレスを抱き締め返した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ