249、思い残す事がないように
アレスと手を繋ぎ村の外れ近くまで行くと、ちょっと苔むした古ぼけた木造の家が建っていた。
懐かしの私が住んでいた家だ。
帰ってきた!
嬉しくなって家の周り一回りを走ってみた。
変わってない! ボロいまま狭いままだ!
庭の柵にうちのモーモがいない。
おじいちゃんが誰かに預けたのかもしれない。
よく見れば放置されていたせいか、よりいっそうばっちくなった気もする。
掃除が必要だ!
「リリアの家ってここであってる?」
「そうだよ、狭くて汚いけどどうぞ!」
そう言って古ぼけた木戸を開けて中に招くと
「俺も昔ここに住んでたんだ。俺がいたときは外の柵とモーモ小屋はなかったけど……」
げっ!! ここ勇者の家?
もしやおじいちゃん勝手に住んでた?
狭くて汚いって言っちゃったよ……。
「直して使ってくれてたんだね。放置されたままだったら残って無かったかも……」
アレスが家を見回して嬉しそうに言った。
まあ、そう言うことにしておきましょう。
とりあえず何故か掃除を始める。
かわいい格好をしてきたが埃っぽすぎたので仕方がない。
せっかくのかわいいスカートの裾を縛って足回りを動き安くして、アレスと一緒に布団やシーツを干して部屋の中を掃きだし雑巾で拭く。
狭い家だからあっという間に終わるかと思ったら結構頑張ってお掃除をしてしまいお昼過ぎまでかかった。
デートに来た筈が何をしているのか……
テーブル綺麗に拭き、ここでお昼を食べることにした。
本当は外で景色でも見ながら食べた方が気持ち良さそうだが、せっかく掃除をしたので使わないと!
以前はおじいちゃんとの食卓だったが今は目の前でイケメンが食事をしている。
こんなボロ屋でもアレスがいるだけで輝くようだ。
バスケットの中身を出しながらやけに量が多いなと思っていた。
17歳の食べ盛りの男の子の為に多めに入れたのだろうか? と思っているとよく見ればメモが入っていた。
メモはマルタが書いたものらしく
『お泊まりになった時の為に多めに入れておきます』
と書かれていた。
……マルタ……気を効かせたんだね。
でも、12歳だしそれはないかな……?
ちょっと残念ではある。
せっかくのアレスとの二人きりデート。
アレスにいっぱい触れたい気もする。
私が持っていたメモをアレスも覗いた。
「う、」
アレスから声がもれる。
「はあーーーー、ロイドパパと約束しなきゃよかったなーー」
結構真面目に言っている。
「でもよくロイドが出掛けるの許してくれたね」
「ああ、それはね……俺たちの事話したんだ。それで俺に思い残す事がないように……だね。勿論めちゃくちゃお願いしたけどね……」
思い残すことのないように……って何か不吉な感じ……?
ん? 俺たちの事を話した!?
「ちょ、ちょっと待って!! 何を話したの?」
「だから俺達が前世の恋人でリリアが俺を追ってきたって……」
なにーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!?
それはダメだ!
今まで子供だからと数々の事をやらかしている気がする。
でもそれは子供だから許されると言うのが前提で、本来大人だったらやらないことだ!!
私の中身が大人とバレるのは絶対にダメだーーーーーーーーーー!!
私の人としての尊厳が……いや、あるのかそんなの…?
私の固まり具合を見てアレスが言った。
「前世の記憶があるなんて伝えてないから大丈夫だよ。リリアは覚えていないことにしておいたよ」
ナイス! ナイスだよアレス!
さすが気が利く!
私はちょっと安心してからもっと気になることがあるのに気がつく。
思い残すことのないようにってことは……やっぱ……
「アレス……やっぱどこかに行っちゃうの……?」
「うん、そうなんだ。これが最後になる……最後の旅かな……」
最後の旅?
挿絵塗ってないのですが一応貼っておきます。




