248、始まりの村到着
フェンリルさんに乗ってデート。
着いた先はどこかで見た景色だった。
ここは私の始まりの村、モーモだ!
ええーーーー? 王都から3日くらいかかってなかったっけ!?
速くね?
フェンリルさんの実力を思い知った。
これが本体の実力かーーー!
かわいいだけのチビリルとは違う、うん。
フェンリルさんから降りて散歩をする。
こんなバカデカイ犬を連れて、しかも一緒にいるのは勇者アレスだ。
誰か知り合いに会ったらどうしよう、と内心バクバクで歩いていた。
人口の少ない村だ! 誰も来るな! と心で叫ぶ。
辺りのモーモの鳴き声が聞こえる。
「ここは変わらないな……」
アレスが回りを見ながら呟いた。
アレスが私の挙動不審に気がつく。
「どうかした?」
「え? いや、誰かに見つかったら嫌だなって……」
「俺といるの見られるのは嫌?」
「そうじゃない、そうじゃないの! 本当はアレスと一緒だって山の上から叫んで自慢したいくらい! でも誰か来たら騒ぎになってアレスをとられちゃう! きっとデートどころじゃなくなるよ!」
「……山の上から……ぷっ……」
アレスが笑いだした。
またツボったらしい。
もう、笑い事じゃないのに!
フェンリルさんがあくびをしていた。
柵をまたいで陽当たり良いところでクルクル回って座り込む。
そしてゆっくりと目を閉じた。
え? なにしてんの!そこで寝る気?
も、少し隠れても良くない!?
村の人が来たらモンスター出たと思うよ!
おお騒ぎだよ!!
チビリルはよく寝るけどフェンリルさんもですか!
犬ってホントよく寝る……
笑い終わったアレスが「行こう」と私と手を繋ぐ。
え! フェンリルさん放置ですか?
「大丈夫、彼、隠れるの得意だから…」
そう言って微笑むがあきらかにフェンリルさん堂々と寝てますよ!
まあ、アレスが言うのなら大丈夫なのだろう。
二人で田舎道を進む。
バスケットはアレスが持ってくれ、歩幅も私に合わせてくれている。
私達の影のシルエットはまるで大人と子供で、幼稚園児を幼稚園に送るお父さんを連想してしまった。
私は幼稚園児ほど小さい訳ではない!
アレスがでかすぎるんだ!
だから余計に気になる。
アレスとロイドは同じくらい、ロイドがデカイのは気にならない。お父さんだから……
でもアレスとの違いは気になる。
あと三年で私ってホントに大きくなるのかな?
「どうしたの?リリア」
アレスがしゃがんで覗きこむ。
うーーーやっぱでかいな。
しゃがんでもらわないと顔もみえないもん。
見下ろされて逆行になるよ。
「アレス、私大きくなりたい!」
「ん?」
「マルタを10年分戻せたって事は逆も出来るよね? 私を大きくして! こんな風に小さい子扱いはもういや!」
「ん……リリア……柚子の時から俺たち身長差あったよね? きっと今回も身長差カップルになるよ」
確かに! 柚子の時もたいして大きくなかった私。150センチちょっとだ。
でも今の私より20センチは大きい。
それは結構重大な事だ。
「今より20センチは大きくなるもん。大きくして!」
「実はちょっと考えなくもなかった……リリアを大きくしちゃおうかと……」
「ホント?」
「でも出発前にロイドパパに釘をさされました」
えーーーーーーーーーーー、余計なお世話!
「何でーーーー? 大きくなってもいいじゃん!」
「そりゃ小さな姫様が男とお出掛けでよからぬ事をされないようにでしょう…
…」
「よからぬ事とは?」
「え……そりゃ……」
アレスが赤くなった。
わあ、かわいい!
アレスが立ち上がって「行こう」とまた歩き出す。
アレスの反応を見ただけでちょっと満足してしまう私って単純だろうか……
のどかな田舎道をゆっくり二人で歩いた。




