245、マルタの名前
結局その後アレスから話は聞けなかった。
後宮に戻るとロイドが普通に動いていたのには驚いた。
義眼はどうなったと気になったが既に眼帯をはめていたので分からない。
小指にさっきアレスがチビリルに渡した指輪がはめてあり、チビリルに渡されたのだとすぐにわかった。
何で小指なんだと思ったがサイズが勝手に調整される指輪なのだろう。
たぶん邪魔にならないところにつけたんだ。
眼帯を着けたことによりワイルドさが上がったのか、メイドさんから熱い視線が送られていた。
ロイドにそれを言ったら
「眼帯が珍しいのでしょう」
と流されてしまった。
相変わらずマルタ以外に興味が無いね。
夜にマルタが寝る支度に来たときにちょっと聞いてみた。
「ロイドの義眼入れるのマルタ手伝ってたよね。どんなかんじ?」
「どんなって言われましても……元々の目の色が翠でしたから、緑の石を選んでくれようです」
「かっこよくなってた?」
「さあ? 私、ロイドが痛いことをされてると思うと怖くて目をつぶってましたから、そしたらロイドがずっと撫でてくれてて……気がついたら眼帯を着けてました」
微妙なノロケが入ってきた。見てないのか。
「そう言えばマルタって"マルガリータ"って言うの?」
ふと思い出したので聞いたがマルタが固まる。
「どどどど、どうしてその名前を……!」
めっちゃ動揺している! どうしたマルタ!
「ロイドが……呼んでたからだけど……知られたくない名前だったの?」
「いえ、そんなことないですよ。ただ……」
マルタが真っ赤になっていた。
何かテレる要素があったっけ?
「その名前は私がルカレリアのお姫様だったときの名前です」
「え? 別に使えばいいじゃない?」
「マルタと言うのは愛称だったのですが、王妃様がマルガリータなんて長くて呼びづらいから正式にマルタにしなさいって、それからずっとマルタです」
呼びづらいからって……こんな所にもマルタにいじめ……あったのか……
エターナルの王族好きになれないな。
(自分とアレスも王族だった! まあそれは別!!)
何か意地悪だ!
王族ってそんなもんなの?
「ちょっと嫌だと思ったこともありますが、マルタと言う名が嫌いな訳ではないので……」
マルタがにっこり笑う。
うーんいいこだわ。こんないいこをいじめる王妃様とバカ姉三姉妹イカれてるよ(暴言)
あら、お姫様にあるまじき言動が出てしまった。
「ん? じゃあ何で真っ赤になってたの? 恥ずかしいこと無いよね?」
「え、ええ、私がマルガリータが良かったと泣いていたら、ロイドが……自分だけが呼ぶ特別な名前にしようって……だから…………の時しか呼ばない名前です」
途中声が小さくて聞こえませんでした。
"先生! 聞こえません!!"と手を上げて言いたくなるが……
……何か想像ついちゃった。
あえて突っ込まない方が良いだろう。
はい、マルタさんのノロケ話でしたね!!




