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240、別に隠れた訳じゃないよ

 落ち込んだチビリルを抱っこした。

それなりに頑張ったねと撫でてあげる。



「大丈夫?ロイド……」


マルタがロイドの顔を覗き込む。


「騒がしくて参った……帰れと言っても聞かないし……君の身体の調子は?」


「私は大丈夫。人間に戻れたなんて嘘みたい。嬉しい……」


「そうだね、良かった……怪我をしても治りが普通になってしまったから気をつけるんだよ」


「気を付けるのは、貴方でしょ? 何かムチャした? 私が人間に戻れたのと関係ある?」


おお、奥さん(マルタ)、勘がいい!


「無いよ」


 ロイドがマルタの手を掴んで引き寄せキスをした。


そのままマルタのお尻に手をあてベッドに引きずり込もうとする。


あれ? ロイド私がいるの気が付いてないな?


 さっきロイドの事をマルタに聞いた時に"あんな状態でも結構元気"と言ったのは、そっちの意味ですか……?


 私はゆっくりチビリルを抱えたまましゃがんでみた。

これでベッドからあまり見えないだろう。

ついでにチビリルの口もふさぐ。


え? 別に隠れた訳じゃないよ。

ちょっとしゃがみたかっただけ。

チビリル? うるさくしないようにだよ。

だって怪我人いるからね。


マルタが慌てて暴れる。


ロイドが手を離した。


「ごめん、君が嫌ならしない…君は人間に戻れたんだからもうここから逃げてもいいんだ。君が逃げる迄の時間を稼ぐからサクラコの国に連れて行ってもらうといい」


「何を言ってるの?」


「何って……言いたくないな……今朝から拒まれて気がついたんだが……この顔は醜いし、怖いだろう?」


「え?」


「君が嫌ならもう……」


「何言ってるの? 怪我してるのに無理に動こうとするから、それに今は……」


「別に無理に動こうとしていない! 人間に戻れた君の身体の確認をしたかっただけだ」


どうやって?


「ロイのバカ!! 今は姫様がいるの!!」


あ、言われちゃった……


「姫様?」


 ロイドと目があった。やばっ


「いや~ロイドってばやっぱり弱ってるね。私に気がつかないなんて、ちゃんと寝ていた方がいいよ」


「姫様、何か隠れていませんでしたか? わざとですよね?」


「そんなこと無いよ~、あはは」

でもロイドが弱っているのは事実だ。

右目をとられる前だったら私が隠れていても見つかっていただろう。


「ロイドは醜くも怖くも無いよ。メイドさん達も誰ひとりとしてそんな風に思ってなさそうだったし、眼帯とか着けたら逆にカッコよくなると思う」


「何、隠れて盗み聞きしてるんですか、レディのすることではないですよ」


"ロイドも怪我人のすることでは無いよ"

と言いたいところだがここは素直に謝る。


「はーい、ごめんなさい」




 その時外扉が思い切り開いた。


そして閉じた。


!!!?


何もいないのに透明人間がやって来たようだ。


キョトンと見ていると、本当に透明人間だったらしい。



犬の着ぐるみのフェルがフードを取って姿を見せた。














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