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239、パパ大変

 翌朝、何も無かったかのようにマルタが部屋に現れた。


 サクラコと一緒にごく普通に現れて普通に私の支度をしてくれている。

昨日の事は覚えてなさそうだった。


 でも私に怪我をさせたなんて知ったらマルタの傷付きようは半端無いと思うので知らなくて良いと思う。


 あの後アレスがマルタを10年分戻し、マルタを人間に戻してくれた。


そんな事が出来るなんてアレスはもう神の領域ってヤツ? 感心しているとアレスがぶっ倒れた。


やはり相当無理して治したようだ。

魔力MPと精神力SPが無くなるのはかなり厳しいことのようだった。

アレスはMP、SP自動回復らしいがもうすっからかんで貯まるまで時間がかかるらしい。


 しばらく夜の裏庭に動けない男二人と美女ひとり、そして幼女(私は動けたが)という組み合わせで佇むしかなかった。


 先に少し回復したと言い張るロイドがマルタを運び、その後アレスも運んでくれた。

 こんな状態で動けるとはこの人は魔族転化しなくても既に魔人なのではと思ってしまう。


 その後血が足りないロイドが自分のベッドで倒れるのを見届けてから、私は自室に戻って眠った。


もう私は薄暗い廊下が全く怖くなかった。


慣れってすごい。



 昨日の睡眠時間はとても短い。


マルタもサクラコも眠そうだ。


今日はお休みで寝てればいいのに……


アレスはフェルのところで寝ているはずだから、お昼寝の時間に会いに行こう。


ロイドは大丈夫だろうか…


お見舞いに行ってみよう。


マルタにロイドの様子を聞くとあんな状態なのにロイドは結構元気だと言う。


マルタが暗い顔をした。


サクラコも無口だ。


やっぱり自然に振る舞っていたがロイドの眼の事は相当のショックだ。


そうだよね。ロイドがあんなことになったんだ。

マルタは勿論だけどロイド大好きメイドさん皆がガックリきているのだろう。

片眼になってしまったロイドはもうモテないのだろうか。

遂にモテ期は終了かもしれない。

昨日までの美しかったロイドはもういない。


昨日の包帯を血で染めていたロイドの事を思い出した。


あんな状態でも頑張ってくれていたロイドに感謝をしなければ……



ばたん!


 ドアが開きチビリルが入ってきた。

あんた昨日どこいたの?


チビリルがマルタのスカートを引っ張る。


「どうしたの?チビリル!」


「ママ、パパが大変だよ!」


チビリルが喋った!!


でも突っ込む者はいない!


ロイドが大変? 急変したってこと!!?


私とマルタとサクラコはロイドの部屋に向かった。


階段を降りて走って部屋まで行く間、私は昨日の事を考えた。


ロイドがいくら丈夫そうでもあんなに無理させた事を後悔した。

忘れるところだったがロイドはあと3年位の寿命とアレスが言っていた。

日頃の無理が祟ってしまうのかもしれない。

そして弱って倒れているロイドにバカとか言ってしまった自分が情けなかった。


「ロイド!大丈夫?」


マルタとサクラコと私は部屋に飛び込んだ。


中には……


「私はロイド様に報告に来たのよ。あんた達はもうさがりなさいよ!!」

エリザが怒っている。


「では報告を済ませてお帰りください」シーラが言った。

「ここは私達にお任せください」レイラが言った。


「あんた達がいたら報告出来ないって言ってるの!二人もいて邪魔だから下がってなさい!」


「ロイド様は弱っておいでです」

「私達こそが必要とされております」



三人がもめている……。


中央で包帯男のロイドの顔色は相当悪い……


何? この地獄絵図……


ロイドのモテパワーは健在だったが本人は辛そうにしている。


チビリルが寝ているロイドの上に乗っかった。

それもどうかと思うが……


「お前ら、もう帰れよ!パパの迷惑だぞ!」


チビリル、一応ロイドを助けようとしていたんだね。えらいぞ!でもめっちゃ喋ってるじゃん。

もう喋ることは秘密でも何でもなくなっている。


「あ、またきた、うるさい犬!」


「ちび犬は黙っていなさい。」

「ちび犬には関係ないですよ。」


チビリルの尻尾がぺたんこになった。


女三人に圧されて大変だったんだね。


「私もロイド様の看病したいです!」

サクラコが参戦しようとしている。


「皆さん出ていってくださーーーーい!!」


マルタが今まで聞いたことのない大声で言った!


マルタもそんな声が出たんだ!


いつもに無いマルタの迫力にエリザでさえ驚いていた。


「ロイドの顔色見て! 静かにして!」


 そう言って皆を追い出した。

皆普段は大人しいマルタの迫力に負けたようだ。

さすがロイドのお姉さんだ!


「マルタさん、私まで?」

とサクラコが口惜しそうだった。


えらい! マルタ、やれば出来るんだね!




あ、私は残っててもいいの?













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