227、魔王城見学中
えっと……私何しに来たんだっけ?
ヴァリアル(魔王)に会いに行くってアレスは言ってたけど
魔王に会いに行くよりはこの会議(?)を見ている方がマシかもしれない?
何故こんな魔族の会議をアレスと覗いているのか……
議題はどうも勇者復活が確実なものであり昨日屍兵の第三工場の破壊により屍兵の製造がストップしたこと。
修理、メンテナンスもこの工場の分は遅れること、
そして勇者と思われる人物が街のスラム街に潜んでいる可能性。
この数日で隊長格を含めて14の部隊の壊滅。
屍兵の再利用がほぼ不可能など、
次から次へとアレスのやったと思われる私の知らないことが出てきた。
特に話し合いという感じではなくて知っている情報を広めて、共有し足りない情報を持っているものは出せ、というような会議(?)だ。
勇者の顔を見たものは誰もいないということらしい。
今度は住民全部を集めて勇者探しをすると言う話が出た。
その指揮を誰に任せるかが争われていた。
手柄をたてたい者、暴れたい者が我先にと将軍たちにアピールしているようだ。
ロイドは目をつぶり黙っている。
いくつかの部隊が指命されたようだ。
良かった。ロイドはこの場に参加してはいるが実働部隊ではなく子育て中だもんね。こんな会議に出席しなくちゃならないことは無いような気もするが呼ばれて仕方なく来たのだろう。
でも特に実働部隊に参加にならなくて良かったよ。
ホッとしたところでアレスがそっと部屋を抜け出す。
まだ続いているようだが最後まで付き合う気は無いようだ。
廊下に出た。
【隠密スキル】のお陰で見つからずに済んだ。
ロイドのように隠密を破れる者がいないとも限らないので油断は出来ないが、まさか勇者が単身(彼女連れ?)で忍び込んでいるとは思わないだろう。
「怖かった?」
アレスが私の顔を覗きこむ。
「怖かったよ、もう帰ろうよ」
「ダメだよ、まだ目的をはたしてないから……」
そう言ってアレスは廊下奥に向かっていく。
この廊下は見たことある気がする。
この奥に【謁見の間】があった気がする。
アレスが殺される時の夢で見た、アレスが歩いていたあの廊下だ。
私がヴァリアルにチラ見された日に通った廊下でもある。
アレスがいたのは30年以上前でも造りは変わっていないだろうから分かって向かっているんだろう。
……大丈夫なの?
広い廊下の先に大きな扉があった。
扉の両側には屍戦士が控えている。
夢では人間の兵士がいた。
今はもうこの城に人間はいないのだ。
そう考えると恐ろしくなってきた。
「アレスやめよう、帰ろうよ」
私はアレスを止めたかった。
「自分が一度死んだ場所だよ。平気なはずないよ。帰ろうよ」
私はもう泣き声だったがアレスは優しそうに微笑む。
「大丈夫だよ。トラウマになってないか見に来た。別に足もすくまないし震えも来ない、平気だ。それに俺、多分死んでないんだ」
「え?」
「エルシオンで俺は殺せないよ。あの時ヴァリアルは俺が手放したエルシオンに闇の力を使って周りを覆って刺してきた。自分の剣ではなくわざわざエルシオンでだ」
「どう言うこと?」
「さあ? だから聞いてみたかった。俺を守ろうとしてくれたのか、俺とエルシオンを闇で汚そうとしたのか、どちらなのか……」
「どう言うこと? 守ろうとはないでしょう?」
絶対後者ですよ!
「ヴァリアルが……兄さんが俺の事を助けようとしてたんじゃないかって……少し……少し期待してるんだ」
は? 兄さん!? ここにきて兄さんですか!?
そう言えば兄弟でしたっけ? 全く似てねえなあ……アレスの方がかなり顔が良い。私の好み。
しかもやっと出来た家族で兄さん大好きっ子だった……?
忘れてましたよ。
「兄さんはエルシオンが主の俺を傷つけられない事を知っていたのかもしれない。だから魔王に意識を乗っ取られてもエルシオンを使うことで抵抗してくれたんじゃないかと思うんだ」
なんて前向きな捉え方?
ヴァリアルがそんな良い人だと思えないな……私がひねくれているの?
あれ? そうすると血縁的にはアレスって私の叔父さんて事になる!?
いいの? 結婚出来る?
いいのか、マルタとロイドは姉弟で結婚(?)してるからいいのか。
叔父と姪だったらまだかわいいもんだろう……
「リリア……今、別の事考えてたよね?」
鋭い! すみません、聞いてないわけではないです。
「う、ううん。聞いてたよ」
それにしてもアレス、お人好しだ!
お人好しすぎる!!
アレスは純粋過ぎるの?
和くんはもう少し腹黒な部分あったよね?(失礼)
私の感覚が12歳のリリアに引っ張られている気がするからアレスもそうなのかな? 同じ魂だとしても身体に引っ張られてる感じ?
ダメだよ!!
刺した後に焼いてしまえなんて言うヤツがそんな優しさあるわけねえ!
あ、今ヒロインにあるまじき意見でした。
聞かなかった事にしましょうね。




