222、妖精のこと
フェルが呼んでいると言うのでお昼寝の時間に地下室に行く。
アレスも一緒なので気まずさはあまりないと思う。
でも本当はフェルの体調はどうなのか気になっていた。
「リリアいらっしゃい。最近ゆっくり話せて無かったね」
フェルがお茶の準備をして待っていた。
以前のような可愛いきゃぴっとした感じではないフェルを見るのもちょっと辛い。
ニーナが行ってしまってからのフェルは妙に落ち着いていて大人の男の人みたいだ。
アレスと一緒に席に座る。
お茶を淹れてくれたのでアレスと一緒に飲む。
横のアレスをチラリ……
アレスの喉の動きに注目。
お茶……飲んでる。
普通に……
まあそりゃそうなんだけど、もうアレスは生きてる人なんだから
心臓動いて、息をして、瞬きもちゃんとあって、目が虚ろでない、ちゃんと焦点合ってこっちを見てくれるし、手の温かさもある。
美味しいものを一緒に食べて美味しいねって言える喜び。
生きててくれて本当に良かった。
生きていてくれて……ちょっと泣けそうかも……
大好きアレス。
「フフ……リリア……見すぎ……」
アレスが笑いを堪えていたらしい……でも堪えきれなくなって笑い出す。
「本当にリリアはアレスが好きだよね」
フェルにも笑って言われる。
え? フェルが言うか?
私はアレスが大好きだけど、フェルだって相当なアレス好きでしょう?
でも違う、私はアレスの観察に来たのでは無い。
フェルが話があると言うのは何だろう?
暫く笑いのツボに入ったアレスは放置し、無言でお茶を飲んでいるとぷるるんとチビリルがやって来た。
アレスがぷるるんとチビリルにおやつをあげて遊び始める。
仔犬とスライムと遊ぶイケメン!!
絵になるわ~
いや、スライムは余分だろう? 絵にするなら子犬だけでいいよ
「リリアは、またアレスに夢中だね」
「え?」
やだ、またアレス見ちゃってた?
だっていくら見てても飽きないし……
そう言いながらもフェルもしっかり見てるよね?
「これ、アレスが君から借りてきた、元妖精……」
そう言ってフェルが小瓶を出してきた。
元妖精? ああやっぱりダメだったか……言わなければ……
「あ、すっかり言いそびれてました。実は私の妖精……ある日物凄く光ってて、ほっといたら光らなくなって、石みたいな物が小瓶に……妖精育てるのに失敗しちゃったみたいで……言い出せずにごめんなさい!!」
「失敗? 失敗したと思ってた?」
「違う? だって石になってるし透明で見えない妖精だったけど、気がついたら小瓶の中に石が入ってて……妖精が石になっちゃったと思ったの。……本当は光った時にちゃんとフェルに報告すれば良かったんだけど……」
見事に忘れたのと、気がつけば石だったので言い出せませんでした。
だって、だって、フェルが怒ったら怖そうだし……
違う違う、忙しくて言いそびれただけだし……
「これね。物凄い高エネルギーの結晶体だよ。ボクが調べてロイくんにも視てもらったから間違いないよ」
「高エネルギー結晶体?」
とは何でしょうか。
「本当は数年かけて集めてもらう筈の力だけど、妖精の力に別のものが追加されたようだね。初めての事でよくわからないけど……リリアの姫巫女の力と、とても相性が良かったようでくっついたみたいだよ」
確かにただの石と言うより虹色の不思議な感じの石だけど?
フェルが元妖精の石を革の袋に入れて、私に渡した。
「そのままでも充分だけど、まだ暫くリリアに持っていてもらうね。それは普通の妖精ではなくなってしまったようだけど、きっとアレスとリリアの役に立つものだから……」
「……妖精……死んじゃったの?」
これが怖くて聞きたくなかった……
私が殺してしまったと思いたくない。
「死んだと言うより、別のものになったんだよ。大丈夫だよ。妖精はリリアが思うような生き物ではないから……」
そうか、よく分かんないけど殺してしまったので無いなら良かった。
最近フェルに話が出来なかった事のひとつが解決した気がする。
でも、何て言うか私は本当はもっとフェルと話をしてみたい気もする。
前みたいに……




