211、近づきたい心が溢れてしまう
《パパ、カッコいいね》
ロイドが部屋を出ていった後に
天然たらしに頭を撫でられ赤くなった私と、
私も頭を撫でて欲しいと言っているサクラコがのこった。
ーーーーー筈だったが? チビリルの声が聞こえた!?
まさか!?
振り返ると屍戦士がチビリルを抱えて外扉から入って来るところだった。
え? 今の見てた?
それともロイドが出ていくとこだけ?
屍戦士がゆっくり私の前に歩いてきた。
なんだこれ? なんかえも言われぬ気分になった。
ちょっと見られたくなかったと言うか……
「リリア、何で赤くなってるの?」
屍戦士がイケメンボイスで喋った。
私は固まった。
「リリアはイケメン好きだから困るなぁ」
「一緒にしないで、アレスが一番カッコいいし大好き!」
屍戦士が私を抱き上げた。
「知ってる。俺も大好きだよ」
「勇者さま?」
サクラコが驚いた。
「ああ、ここではその呼び名は一応やめとこうね。君はサクラコさんだったよね。サクラコさんはマルタさんについていてね」
《俺もママについてる》
チビリルがマルタの結界近くにお座りをした。
「チビリル、名前ももらってパパとママがいるなんて幸せなんだね。良かった」
そう言ってアレスは私を抱えたまま廊下に出た。
「大体の事はチビリルに聞いたよ」
「ありがとう、来てくれて。身体はいいの?」
「ちょっと欲張って全回復しようとしただけだよ。俺のMPが1000だとしたら時間停止を解くのに400近く使うと思う。その後の時間遡行にどの程度の消費するのかわからなかったから回復させておこうと思ったんだ。」
「時間遡行?」
「これこそクロノスのところに行った目的なんだ。まずは自分の身体で試そうと思って、魔法消費量が現実だとどうなるのか読めない……」
「クロノスって?」
「時間の神様」
「神様に会ったの? どんなの?」
「みんな竜だよ。勇者はね神々に愛される力をもってるんだ。だから親切に色々教えてもらえる」
「すごい……けど神々に愛されるって……私のライバル神様?」
「あははっ」
アレスが笑った。
そして屍戦士の仮面を少しずらして顔を見せてきた。
「ヤキモチ焼いた?」
うわ、イケメン! やっぱアレスが一番!! 黒い髪に黒い瞳、
めっちゃいいわ。テンションあがる。
何て言うか、アレスの顔を見たら心にドスンと何かが刺さる。
「あはは……リリアさっきより顔赤いよ。俺お父さんに勝てたかな?」
「ロイドは天然たらしだよ! みんなにモテてイヤ! 絶体あんな風にならないでね!! アレスはアレスのままでカッコいいーもん!」
「ありがとう、リリア。でもロイドパパ、カッコいいね。助けてあげたいな」
「アレス優しい!」
アレスの首に抱きつく。
鎧が邪魔だ。
直接くっつきたい!
今だけは自分が12歳は忘れて、アレスにキスをした。
してからめっちゃ恥ずかしくなる。
だって顔が近くにあったから、
アレスにもっともっと近付きたい心が溢れてしまったのだ。
でもこんな子供にキスされてもアレスはどう思ったのか……
アレスの手が私の頬に触れた。
そしてアレスの方からキスをしてきた。
ちょっと長いキスだ。
アレスが私と同じ気持ちなのがわかってすごく嬉しかった。
照れて顔を赤くしたアレスが視線を逸らして仮面をかぶり直した。
あ、顔隠した。ずるい!
私も仮面欲しい。
だって今の私、きっと茹でタコみたいだもん!!




