20、覗きですか!
なぜ温室にロイドとマルタがいるのか!?
屍兵を避けて辿り着いた温室にはロイドがいた! 的な……
「も、もう少し近づいてみよう。」
フェルが真面目な顔で言う。
近づくって、そりゃまずいのでは!!?
「5メートル以内に近づいて会話を聞いてみようよ。」
え?それはやめた方が良いのでは?
「パペットはくっつくとスキルの共有が出来るから、リリアのパペットの"集音"でボクにも会話は聴こえる筈だよ~。」
ふーん。便利ね~。…て違うって!屍兵達はごまかせたけど、生きている人に"隠密"がちゃんと機能するのが不安だし…(フェルを疑っているわけではないけれど)
それに若い男女が人気のないところにいるんですよ!!
これは、デートとかそういうやつだったら覗いてはいけないと思うんです!
ヤバカップルがイチャイチャしているのを覗くのは失礼です!!
フェルを止めようとすると何だか様子がおかしい事に気が付いた。
ーーーーーーー!?マルタが泣いている!
何で?ロイドはクソな奴だけどマルタだけはとっても大事にしているのでは?
ちょっとショック、お前何マルタを泣かせているんだ!許せないぞ!
フェルが先に行き手招きしている。
本来ならば覗きはダメですがマルタの事が気にかかる。
フェルに続く事にした。
「昔、ロイくんに"ラフラン"の事を教えたのはボクです。ロイくん覚えてたんだな~」
フェルが呟く。
そうなんだ。もしかして仲良かったの?
着ぐるみウサギの耳が動きだした。
声が聴こえてきた。
『どうしてそんな酷いこと言うの?』
マルタが泣きながら言う。
え?ロイドの奴、マルタに酷いこと言ったの?許せん!あんなにかわいくて優しいマルタを傷つけるなんて、お前本当クソ野郎か!?
(仮にも姫であるはずの私がかなり下品になってしまった。)
『君の傷つく姿を見たくないんだ。わかってくれ。』
そう言ってロイドが後ろからマルタを抱き締めた。
傷つく姿見たくない?って今ロイドが傷つけているのでは?
マルタの涙がぽろぽろ流れている。
『だって、だって私はリリア様が大事なの。ひっく…まだ幼いの。誰かが守ってあげないと…』
ーーーえ!?私!?
私の事で何かもめてるん?何もしてないけど罪悪感…。
『あの娘は、いつかいなくなるんだぞ!感情移入するような事はするな!いなくなくなった後、苦しむのは君だぞ!』
ーーーえ!?私いなくなるん?
何の事話してるの?私は何処かに行くの?
隣のフェルの拳が震えた。
?どうした?
「やっぱりリリアを使う気だったのか。」
フェルが見たことない怒った顔で呟いた。
なんなん?私だけ意味わからない。
『ひどい!ひどい!ロイドの馬鹿!』
泣きながらロイドの手を振りほどこうとするマルタ。そのマルタを更に抱き締めるロイド。
折れる~やめてマルタの細い腰が折れそうだ!
『マルタ!僕がいる!僕が君とずっと一緒にいるから…』
懇願するような叫びだった!
とてもいつものロイドと同じ人に見えない。
表情もいつもと違う悲しい顔をしている。
私からすると"誰?あんた"って言うくらい別人だった。
『離して!』マルタが暴れてロイドがやっと手を離し、マルタがこっちの方に走って来た。
急にこっちに来たのでびっくりしたが、フェルと私がそのまま動かずにいると私達の存在は気づかれないまま、マルタは走って通りすぎて行った。
残されたロイドは辛い表情のまま振りほどかれた自分の手を見つめていた。
隣のフェルが立ち上がった。
「リリアはこのまま隠れていてね。」
そう言うとフェルは着ぐるみのフードを脱いでロイドの方に向かって歩き出す。
え?どうしたの?なにするの?私が戸惑っていると、ロイドがフェルに気が付いた。
「師匠…。」
ロイドがフェルを見てつぶやく。
ーーーーー!!?師匠!?




