204、酔っぱらいだ!?
私はミルクティーの残りを飲み干した。
ごちそうさまです。
また飲みたいです。
ロイドの方をチラリと見た。
別に赤くなっていたりもしないし一見普通にみえる。
でも……酔っぱらってませんか?
さっきのは普段絶対にロイドが言わない事だと思う。
今のが我慢していた彼の心の叫びかもしれない。
今なら何でも答えてくれそう……。
いやいや、私は謝りに来たのであって、探りに来たのではない。
「ううん……」
マルタが寝返りをした。
ロイドが立ち上がり、肩まで毛布をかけに行った。
「マルタ……綺麗でしょう?」
突然ロイドがマルタの自慢(?)をした。
「う、うん。すごくキレイだね。美人で羨ましい」
ロイドが満足気に笑った。
「師匠が……姫様に喋ったそうですね?」
「え? 王妃様の事……?」
「マルタが吸血鬼に噛まれた事ですよ……。知ってますよね? 怖いですか?」
「マルタの事は怖くないよ!」
そう言えば前にロイドがマルタに噛まれていたのを見たのを思い出した。
あれはいちゃついていたのではなかったんだな……
「マルタ、何歳位に見えますか?」
「何歳? スッゴク若そうに見える。本人が18歳って言ってたけど、それで充分通るくらい……」
「そうです。彼女は18歳です。彼女が噛まれて10年経ちます。私は28になったが彼女は18のままです。双子だったのにこのままどんどん私達の時は離れて行きます」
「年を取らないの!?」
マルタ18歳は本当だった?
「吸血鬼になると肉体年齢は止まります。ありがたいことに怪我をしてもすぐに治ります。お陰で彼女は10年前殺されかけたが助かった。ただ彼女は吸血鬼の血が合わなかったのか、ルカレリアの血のせいなのか普通の吸血鬼と少し違った。」
ルカレリアの血って前にチビリルが言ってた。魔神の血が混ざってるってヤツ?
「少し違うって?」
「何より普段は虚弱です。血を飲む量も普段はスプーン一杯程度です。ただ、2~3ヶ月に一度は凶暴化します。その度合いは様々で、いつもより多く血を飲ませば落ち着きますが、暴れた状態によっては深い眠りに入り、目が覚めなくなります」
「普通は違うの?」
「違いますよ。エリザは月に一度、ひとり分の血を飲めば暴れたりしません」
今、何気にエリザの吸血鬼暴露があった!?
エリザも生き残りだっけ? 王妃様に噛まれてたのか……
「あれ? じゃあロイドが夜に必ずマルタと一緒にいたがるのって……?」
「万が一の暴走を止める為です」
うわ、すごい正当な理由だった。
エロい話と思っててゴメンなさい!!
「精神的な事もあるようで、私が一緒の方が暴走は起きづらいようなのです」
なんか聞けば聞くほど大変な人生の人だ。
私はもっとロイドに優しくなろう。
「そこで問題です。このまま私が年老いて死んでしまったらマルタはどうなるのか……」
「え? ……ひとりぼっちになっちゃう……?」
「そうです。それでウォルター様は私に魔族になれば良いと……魔族になれば長生きです。上位の魔族になれば年もとりません」
「ええーーーーーーーーー!!」
それじゃあマルタの為に喜んでロイドは魔族になっちゃいそうだ。
「ロイド……魔族になっちゃうの?」
「そうですねぇ? なっちゃいますかぁ!?」
楽しそうにケタケタ笑って戸棚から瓶を出してきた。
瓶を開けてコップに注いで飲みはじめた。
さっきの瓶はもう空?
空の瓶を持ってみたらアルコールの匂いが鼻をつく。
うわ、アルコール度数高そう!
分かりづらいけどロイドは酔っぱらいだ。
ものすごく顔に出ない酔っぱらい、間違いない。
だけどだんだん様子がおかしくなってきた気がする?
「そう……アレス……アレスを見てしまったから……本物の勇者……
師匠が夢中になる筈ですね……この世界を救える存在が本当にあるのかと……」
アレス……? いきなりアレス??
「姫様、もう遅いですよ。"よいこ"は寝る時間です!」
そう言ってロイドはいきなり私を抱えて高い高いした。
ぎゃー!!
12歳の子にすることではないぞーーー!
高い高いをした後、くるくる回った、目が回る~!
「アハハハハ、姫様楽しいですか!?」
お酒を飲んでいたロイドは私より目が回ったのか私を抱えたままソファーに倒れ込む。
ロイドがまたケタケタ笑った。
さすがに今まわったせいか顔が少し赤くなる。
そして私の頭を撫でながら優しく言った。
「小さな姫様、あまり急いで大きくならないで下さい。このまま私の娘でいて下さい」
うわーヤバい、酔っぱらいってヤバい!! なにこれ!?
目が回ったのか動かない……?
と思ったらロイドがいきなりすくっと立ち上がり、私をベッドに運びマルタの隣に寝せた。
いや、これはまずいでしょ!?
私が図々しいヤツだとしてもご夫婦のベッドに寝るのはまずいです。恥ずかしいです。
そのままロイドも隣に寝てきた。
マルタとロイドに挟まれサンドイッチ状態だ。
「ロイド、私ここで寝るのは悪いから部屋に戻るよ。私いると狭いでしょ?」
抜け出そうとすると、ロイドが目を開けた。
「狭い? 今日はチビリルがいないから大丈夫でしょう?」
そう言って目を閉じた。
チビリル……? いつもはここで寝てるのか?




