197、惨殺事件?
王妃様による30人惨殺事件。
惨殺って? 王妃様何者!?
私の住んでいる後宮でそんな大事件があったとは!!
屍兵や屍戦士がいるからではない、ガチのホラーハウスだった。
じゃあ、四階が閉鎖されてるのって……!?
「そんなわけで、ロイくんはウォルターさんに忠実、生き残ったのは出掛けていたロゼッタ姫様と抜け駆けだと後を追ったアーネット姫様、たまたま引退した乳母の家に行っていたシャーロット姫様、この三姫様は無事。それから一応……エリザにサリーにカーラ、そして……ウォルターさんとマルタ……かな」
衝撃! 住んでいるところが半端ない事故物件だ。
お化けが出そうと思ったけど、これは大量にお化けがいても不思議ではない。
「その時マルタを助けてくれたのがウォルター様だからここを逃げたりしないってこと? じゃあ、ウォルター様はもう魔王に属しちゃったからやっぱりロイドも魔王側になっちゃうの? 魔神とかに改造されちゃうの?」
「意思の強い人だったから数年は正気だったと思うよ。今のウォルターさんはちょっと違う感じだけど……それにウォルターさんの事以外ではやっぱりマルタだよ。マルタは常に人質同然だよ」
「じゃあ、今回外に出られたのはチャンスだもん。マルタを連れて逃げる可能性あるよ。だって二人ともエターナルに良い思い出はないでしょ?」
「マルタちゃんはね……もう外で普通の暮らしは出来ないよ。だから必ず帰ってくるよ……」
「どういう事? 前にマルタが言ってた病気の事だよね?」
「うーん……」
フェルが目を閉じた。
「ついしゃべりすぎちゃったね。ロイくんが言わないことを言うべきじゃないって思ってたのに……」
「もうここまで語ったなら全部話してくれて良いと思う! 教えてフェル!! 三姫様達は惨殺の事知ってるの?」
「……勿論ね、上の二人は現場見てるからね。観劇から帰ってきたら大惨事だよ」
「ロイドは……?」
「帰ってきて血の海の中マルタちゃんを探したよ。バラバラになった遺体が多くて酷かったらしいよ……で、瀕死のウォルターさんがマルタを助けて連れていた訳だけど……マルタちゃんもかなり酷くやられていて手遅れだった」
「手遅れ……?」
だってマルタ生きてるけど……?
「ロイくんから魔族転化の話を聞いたことあるね?」
「ロイドを魔神にしちゃうって話……?」
「うん、そう言う儀式で転化するのもあるけど、それだと適性者のみ成功する。もっと単純な方法があるんだ」
「単純な方法?」
「そう、吸血鬼って知ってる? 眷属にされると簡単に魔族化してしまうんだ」
吸血鬼ーーーーー!?
私は頭がぐるぐるしてきた。
今までのマルタの事が鮮明に頭の中で再現されていく。
マルタが日光アレルギーっぽいこと。
マルタが具合が悪いと聞いて部屋に行った時のことが甦る。
ビリビリのメイド服。赤黒いシミがついっていた。
透き通るような肌で眠るマルタ……
マルタが病気と例えて言った事の正体はーーーーー!!
何故今そんなことを思い出すのか!
マルタは……マルタは、あんなに良い娘なのに!!
「顔色が悪いよ、リリア……。やっぱり聞かない方が良かった?」
フェルが心配そうに見てきた。
「ううん、教えてくれてありがとう。大丈夫だよ……。王妃様は吸血鬼だったんだね?」
「最初からそうだった訳じゃない、いつされたのかは分からないけどね」
「王妃様は……どうしたの?」
「メイドが惨殺されるのを見てウォルターさんが止めたんだ……。守るべき主君に攻撃してしまった上にメイドは30人被害を出した。瀕死だったウォルターさんはそのまま魔族転化の儀式に使われたらしい。当時まだ転化の儀式は研究中だったからね。死んでも良いと思われたんだ。でも彼は生き残った」
ぞくりとした。
ウォルター様は怖い人かと思っていたが、これは超被害者だ!!
「じゃあ、ウォルター様が王妃様を……?」
「それがね。吸血鬼って簡単に死なないんだ。ウォルターさんは戦って追い詰めたけど完全に殺せてない。ただ大きなダメージを受けすぎると吸血鬼は死の眠りに入るんだ。今も眠ってるよ」
まさか!
「ど、どこで……?」
「四階だね」
うわーーーーーーー!! そう言うことか!
普通吸血鬼と言えば地下室でしょう!?
何てとこで眠ってるんだ!!
「起きたら……?」
「ロイくんが殺すよ。昔は王妃様を守ろうという王妃派の人もいたけどみんな屍になったりしてるし、もう王妃は死んだことになってるから遠慮なく!!」
フェルが笑顔で言った。
がーーーーーーーーーーーーん!!
「私……今日から部屋で寝るの怖いかも……」
「そうだね。だからその後ロイくんがマルタと結婚宣言したのもあって、すぐにロゼッタ様とアーネット様は嫁いだんだ。こんなとこにいられないってね。結婚は嘘とはいえ効果があったってことだよ」
「そういえばシャーロット様は?」
「シャーロット様は現場を見てないからね。……ただ何年かは乳母の家で暮らしていたようだよ」
そうだったのか……
何か色々ショックだ。




