194、もう帰ってこないかも!?
朝になった。
屍戦士のアレスは部屋に来ていない。
会いに行きたいが、昨日バカな事をしたせいでフェルにも顔を合わせづらい。
そしてアレスにも顔を合わづらい。
ロイドはどうしたかな?
マルタにも顔を合わせづらい。
ああ、どうしたらいいのか……
顔を会わせられない人ばかりになってしまった。
「おはようございます。姫様」
サクラコが元気よく入ってきた。
マルタの姿がない。
私は心臓がドキドキしてきた。
サクラコはご機嫌のようで鼻歌を歌いながら朝の準備をしている。
「今日のお洋服は新しいお洋服にしましょうね」
サクラコが選んできた洋服を見せてくる。
「ど、ど、どうしたんですか!?」
サクラコが焦って聞いてきた。
そうなのだ。不覚にも私は涙でボロボロだった。
「昨日勇者様と何かあったんですか?」
サクラコが耳元で小声で聞いてきた。
私は首を振った。
アレスは戻ってきてないよ。
いや、こんなバカの子供、嫌になってるかもしれない。
アレスだってきっと私があの場に行ってしまった事を聞いて呆れてる。
だからこの部屋に来てないのかな?
わーーーーーん、どうしよう!!
まずはもう一回ロイドに謝ってマルタに謝ろう。
「そんなに寂しいですか?」
サクラコが首を傾げる。
「え?」
「だから、ロイド様とマルタさんがお出かけしちゃったのですよ。寂しくて泣いてるんですか? 明日の朝には帰るそうですよ」
ロイドとマルタが出掛けた!?
「嘘……じゃあ何でサクラコご機嫌だったの?」
「私、ご機嫌でしたか?」
「だって嬉しそうにしてたよ……?」
「そうでしたか……実は……朝出掛けるロイド様に会ったんです。その時ロイド様の髪をおろした姿を見てしまいました。レアです。ちなみに皆見に来てました」
「……怪我とかしてた?」
「怪我? 分かりませんでしたよ。ロイド様怪我してるんですか?」
私は心臓がバクバクしてきた。
ロイドがマルタを連れて出て行った?
明日の朝帰る?
マルタから聞いてないし、
これ……帰って来ないんじゃ……?
ロイドは何度も"危なくなったら裏切る"と言っていた。
それは魔王側に行くという事でなく、単純に逃げるってこと?
このまま二人は帰って来ない!?
どうしよう!! 私のせい?
昨日のロイドはいつもと違った。
本気で私のことを呆れていたように感じる。
一緒に生き残る道を考えようと言ってくれたのに、昨日私はわざわざ自分から危険な場所に連れて行かせたんだ。
私は自分が嫌になった。
なんて愚かなのか。
アレスの無双と言う言葉を聞いてすっかり舞い上がった。
まるでゲームでも見に行く感覚だった。
何だかんだでここに来てからの2年間ロイドとマルタの存在は大きい。
どうしよう!!
フェル、フェルに相談だ!
こんな時はフェルしかいない!
例えそれが以前のフェルと違ってもフェルには変わりない筈。
昨日フェルにも怒られて呆れられたけど、ちゃんと謝って、そしてきっと分かって貰える!
「サクラコ、私今日調子が悪いの。呼ぶまで誰も来ないようにしてくれる?」
「……承知しました。お部屋にエリザさんを近付けません」
「ありがとう、よろしく」
サクラコが出て行くのを確認し、フェルの地下室に急いだ。




