193、反省したって遅い
「こんなとこで何してんだ? 下がって!」
フェルだった。
「大技が来るよ!」
フェルの叫びと共に爆炎が上がった!
風圧で吹き飛ばされる。ロイドが咄嗟に私を包み込む。
ガン!!
何かに当たる鈍い音と響きがした。落ちる!!?
破片と共に着地した。
フェルも近くに着地したようだ。
周りは瓦礫だらけで戦場のようだ。
フェルがロイドのところに向かって来た。
「何をやってるんだ!! 連れて来るなと言われていたろ? アレスの邪魔をするな!」
見たこともないフェルの顔だ!!
かなり怒っている。
「申し訳ございません。師匠」
ロイドがマントを開いた。
「姫様はお怪我は無いですね?」
見るとロイドの額から血がドクドク出ていた。
破片が当たったんだ!!
「だ、大丈夫です」
私は血の気が引くのが自分でわかった。
私を庇ったせいでロイドに怪我をさせてしまった。
「これで、ご満足いただけましたか?」
ロイドが冷たく言った。
私がすごくバカだった。
「早く帰るんだ!!」
フェルが怒鳴った。
「血、血を止めないと……」
私はフェルに訴えた。
フェルがロイドの額に手を当て回復を唱えた。
「血は止めたけど破片が入ってるかも、後で見るから速く行って!」
「では戻りますよ、姫様」
私は思いっきり頷いた!
一刻も早く戻ってロイドにちゃんと手当てを!
土煙の中、抜け道に向かった。
私はロイドにしがみついて泣いていた。
地下室に付き、私がまだ泣いていると、
「早く部屋に戻ってお休みください」
部屋に戻された。
「ロイド! 手当ては?」
「大きな傷はとりあえず師匠が塞いだのでいいです。私も部屋に戻ります。夜はマルタと一緒にいてあげないとなので……」
振り向きもせずにロイドが答える。
マルタの名を聞いてドキリとした!
ロイドが怪我をするとすごく心配するマルタ!
知っていたのに私はロイドに危ないことをさせてしまった!!
今更自分の酷いワガママに気が付き反省をする。
「ロイド、ごっ、ごめんなさい。マルタにも謝らないと……」
謝ってもそういう問題ではないのはわかる。
「姫様に怪我がなくて良かったです。お気になさる事はありませんよ。
あなた方エターナルの姫達は昔から、訳のわからない理屈をつけて私達きょうだいを困らせるのが得意です……私達は敗戦国の生き残りで何を言っても聞き入れられないのは昔からですから」
ロイドはそのまま部屋を出て行った。
あの血塗れのシャツを見たらマルタが青くなるだろう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
私調子にのってたかもしれない!!
ううん、凄い調子にのっていたんだ!!
シャーロット様達、姉姫様がマルタをいじめていたのは知っている。きっと3人共にロイドにもワガママを言って困らせていただろう。
ロイド達はルカレリアを滅ぼされた後も敵国で生き残る為に数々の苦労をしてきたんだ。
私はとんだ我儘姫になっていた!
どうしてあんな我儘を言ってしまったのか、
ただアレスを見たいだけだった……。
それが我が儘だと知りつつも自分の要求を通してしまった。
まるでゲームや映画でも見に行くような軽い感覚のものだったが、現実はそんなものではなかった!!
アレスもフェルも、危険だから置いていったのに……
ロイドにも部屋でおとなしくしていろって言われたのに……
私はいつの間にか"姫様"と呼ばれている立場に甘え平気で我が儘を通す子になっていたんだ!!




