190、狸寝入りバレる
さあ、女子だらけの部屋にはいれーーー!
「ロイド様、姫様は疲れて寝てしまったようです」
エリザが伝える。
ロイドが『いや、そんなとこで寝ないだろ?』と言う顔をする。
私は服に埋もれながら様子を見た。
「ロイド様のシャツが出来ていますよ!」
サクラコが言った。
「「ロイド様は試着をするべきです!」」
シーラとレイラがダブルで言った。
迫力がある。
「では、後で……姫様が寝てしまったようですのでベッドに運びます」
う、そうきたか。
抱き抱えられたら私のタヌキ寝入りがばれるかもしれない!
誰か、誰か阻止してくれ!!
「姫様は気持ち良さそうに寝ています。日も当たっていて暖かいです。しばらくはこのままでも大丈夫だと思います」
サクラコが止めてくれた。
よし、よくやったサクラコ!
「ロイド様、せっかくですから試着なさっては?」
エリザも味方っぽくなった。
さあ、戦闘メイド達、畳み掛けるんだ!!
「ロイド様、試着は大事です!」シーラが言った。
「今なら、お直しも速いです!」レイラが言った。
「そうですね、今試着していただければ、簡単なお直しはこの場で出来ますよ」
モリシャス夫人の援護射撃だ。
モリシャス夫人のお弟子さんまで色めき立った。
やはりロイドの美しさは七三の変な髪型でも隠せないか、
「ロイド様、どうぞご試着を」シーラが言った。
「お手伝いさせていただきます」レイラが言った。
「ジャケットをお脱ぎ下さいね」
エリザがロイドの背後を取った。
「ロイド様、お脱ぎ下さいね」シーラが言った。
「ネクタイもお取りします」レイラが言った。
なんだ、このチームワークは!
予想以上だ。女子こえー!
でもこんなことで盛り上がれるって平和な証拠だよね。
(外では平和ではないでしょうが……)
「前回と同じであれば今着ているのと同じなので必要ありません」
ロイドが断った。
目が死んでる。呆れているのか……?
「人の手による物は誤差が出ます!」
サクラコがくらいついた。
「その通りです。前回と多少違います!」シーラが言った。
「あの時確認しておけばと悔やむ事になります!」レイラが言った。
(これはモリシャス夫人に対し失礼発言な気もする)
「確認を怠る等ロイド様らしくありません」エリザが言った。
「エリザまでそんな事を……わかりました。レディ達の前で脱げませんので自室で確認してきますね。」
一瞬そのレディ達にそうじゃねえだろ! と言う怒りの空気が流れた。
「ロイド様、お気になさらずここでどうぞ!」シーラが言った。
「全く気にされる事はございません、どうぞ!」レイラが言った。
「自室まで行かれるのは効率が悪いと思います」エリザが言った。
今回のエリザは完全にこちら側だ。
「ロイド様が恥ずかしいのでしたら私達目をつぶってますから」
サクラコが言った。
そうは言っても誰も絶対に目をつぶる気は無いだろう。
ロイドは普段ピシッとスーツを隙なく着ているから皆さんめちゃめちゃ興味があるんですね。
そう言えばさっきからマルタが一言も発していない?
どうしたの? マルタ……
マルタはドアの向こうを不思議そうに見ていた。
ロイドが入って来たドアは開いていて、そこから腕が見えた。
その腕は鎧の腕で何故かふるふる震えてる。
いつもよく見ていた腕だ。
あの手を握って眠っていた、私の大好きな腕だ。
そしてあの震え方は中身がめっちゃ声を殺して笑っているから……!!
「和くん!!?」
思わず飛び起きて叫んだ!
え? どうして?
前回の一時帰還みたいに派手な演出なしで帰ってきたの?
勇者の格好して、バーーーンと来ないの?
本物?
ロイドが私をつまみ上げた。
あ、狸寝入りバレましたね。




