18、温室に出発!?
夜になりマルタがいつも通り寝る支度をお世話してくれた後、
「では、お休みなさいませ。リリア様。」
と、部屋から下がろうとする。
昼間からずっとモヤモヤしていた私は、思わずマルタの袖を掴んだ。
「どうかされましたか?リリア様?」
「………。」
フェルの事はマルタに話せない、エリザ達の事は…言ったら心配かけるかもしれない。
「ううん、違うの。何でもないの。マルタはいつも、かわいくてキレイでいいな~ とか思って、えへっ」
う、変なごまかし方…でもいつも思っている事だよ。
「リリア様もとってもかわいらしくて、お肌もプルプルで羨ましいですわ。」
美しい笑顔でマルタが答える。
そして私の事をそっと抱きしめてくれた。
私に何かあった事を勘づいての行動だろう。
ああ、マルタ大好き。綺麗な金髪に青い瞳、透き通るような白い肌。綺麗で優しいマルタ。ずっと仲良しでいたいな。
私もマルタにぎゅっとしてみる。フワッといいにおいがした。
癒される。
マルタのおかげで私のモヤモヤが少しづつ消えて行く気がした。
……しばらくそのままだった。
…………いる。……奴がいる。
気がつけば、いつから居たのか、扉の横にロイドが立っていた。
ロイドは何もいわず冷たい目で見ていた。
…怖っ!
え?今のも何かダメでした?そんなにマルタの乳に触ってないよ。
ロイドはメイドを使って私をぼっちにしようとしているかもしれない、子供じみたやつだ。何かまた文句を言うつもりか?
私だってマルタの事が大好きなんだから、何か言われたって負けないぞ。
そう思って構えていた。
「姫様、もう寝る時間ですよ。マルタも下がりなさい。」
と冷たく言い、あっさりと部屋を出ていった。
それに続きマルタも急いで出ていく。
「リリア様、お休みなさいませ。また明日。」
そう言って、扉が閉められた。
ロイドが明日またくだらない嫌がらせを言ってこないか不安になった。
すると隠し通路の穴が開きフェルがやって来た。間一髪。ハチ会わせなくて良かった。
「リリア~絶対治るお腹のクスリもって来たよ~」
フェルが何か小瓶を持っている。
「え?お腹って…痛くないよ。」
「良かった~治ったんだ~。この前リリアが焦って帰って行ったからよっぽどスゴくお腹を下したのかと思って~」
ああ、帰る口実に"お腹痛いから帰る"って言った気がする。
まさか本気にしてくれてた?でも下痢だと思われていた。恥ずかしすぎる!
「ちょっとクスリの作り置きがなくて~急いで材料を仕入れて作ってきたの~でも必要なかったね~。元気になって本当に良かったよ~」
「あ、ありがとう。」
わざわざ作ってくれてたのか、嘘をついた手前申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「本当に元気で良かったよ~。今日は特別な日になるかもよ~。温室へ行こうか~」
「温室?」
そんなものがあるんだ。
王宮に来てから私は、ずっと宮の中で生活していた。
裏庭でフェルの家を見つけた時と、フェルが街に連れていってくれた時
それしか宮の外に出ていない。
外を散歩したくても、何だかんだで止められるし。
家の中には屍戦士が配置されているが、窓から外を眺めると屍兵がウロウロしているのが見える。
どうやら私の宮から追い出された屍兵は外の警備に回されたのか、以前より屍に囲まれる生活になってしまった。
おかげであまり外に出ようと思わなくなった。
健康な子供を家の中に閉じ込めているんだから本当にひどい話だ!
"健康な子供"というか夜中にフェルの所に遊びに行ってる"不健康な子供"だったか…
そして今からまた抜け出そうとしている。
温室へ出発だーー。




