17、屍はムリ
はああーーーーーーーーーーーっ
やっちまった感…
私は今、歴史の授業をエルザから受けていたが心はずっと違うことを考えていた。
ーーーーフェルを傷付けていないか、そればかり考えてしまう。
昨日私はフェルが棺桶を開けようとしている時
『はじめましてフェルの友達のリリアです。アレスさん!よろしく!』
と大声で叫び、
『お腹痛いから今日は帰りまーす!!』
と言い捨てて、
来る時びびっていた暗い階段も気にせずに一気に駆けて穴を通り自室へ帰った。
グロいのが苦手な私は、自己紹介だけしてダッシュで逃げた。フェルが棺を開ける前にダッシュ…それしか思いつかず逃げてしまった。
そのまま気まずくて、いつも夜中に遊びに行く時間にもフェルの部屋に行く事は出来なかった。
"友達を紹介する"と言ってくれているフェルに悪気が無いのはわかっていた。
だから私は、せめてフェルの気が済めばと思い自己紹介だけして逃げた、それが私の精一杯だった訳だが私の態度はフェルを傷付けたかも…そう思うとますますフェルに会いに行くのが重いものになっていく。
あーどうしたら良かったのか?
フェルにとったら亡くなった後もずっと一番大事にしていた友達だもん。私がグッと我慢して目を瞑れば…
……いやいや無理だわ。やっぱ死体は無理だわ。
それからふと置いてあった絵の黒髪の少年を思い出す。
勇者かっこよかったな~。どうせなら生きてる時に会ってみたかったな…
あの絵が3割増しで描かれていたとしても会ってみたかったな~
ーーーカタンッ!!
ペンが落ちた!
しまった!今授業中だった!!
完全に違うことを考えていたのはバレバレだったろう…
しかしエリザは何も言わない。
落ちたペンをスッと拾い上げ、私に渡すと教科書を読み始める。
私が聞いていようがいまいが関係ない感じであった。
そう、ちょっと前から感じているが、そんなに真剣に授業を受けてなくても全く気にされてないのだ。
フェルの所に通いだしてから、私はよく居眠りをしてしまう。
当然の事だが学校と違って生徒がいっぱいいるわけではないので私が聞いてなかったり寝ていたらすぐにわかる筈なのだ。なのに注意をされた事は一度もない。
ただ単調に教科書を読まれているだけで、全く頭に入らない。すぐ眠くなってしまう。
授業は受けても受けなくてもいい。仕方なく授業してるだけ…そんな印象を受けてしまう。
エリザはマルタのように一緒にお喋りしてくれないし、他にいる二人のメイド、"サリー"と"カーラ"は私に話しかけられないようにしているっぽかった。
実際前に私が話しかけてみると、
『姫様とお話することは禁じられております。失礼いたします。』
と言い、そそくさと用事を済ませ下がってしまう。
禁じられておりますって何?
誰にだよ!ロイドか!?
結局マルタ以外は業務だからやっています。的な感じで"取り付く島もない"ってやつだ。
『姫様』って呼ぶ人は、まるで私をちゃんと見てくれない!
名前で呼んでくれるのはマルタだけ。
私と向き合ってくれるメイドさんは他にいない。
「ねえ、エリザ…」
話しかけてみる。
「授業中の私語は禁止でございます。」
冷たくバッサリだった。
授業中も何も普段からエリザと私語は話してませんけどね。
あーあ、私の友達はフェルとマルタだけだ。
早くフェルと仲直りしたいな。




