177、警戒すべきはアレスです
アレスとおじいちゃん、そして忍者達の話が終わったようだ。
呪縛の魔方陣は解除してきたのか人数は倍に増えていた。
そしてほぼ、おっさん達が涙して跪いていた。
アレスの名を呼びながら何か崇拝しているようだ。
こちらは何があったんだろう……
「彼らには希望が必要だったのですよ。これで姫様への手出しもなくなるでしょう」
アレスがこっちを見た。
そしてちょっとだけ微笑む。
アレス……カッコいい! 破壊力がありすぎ!
まだ一言も話せてないよ。
ああ、遠い、遠い存在みたいで辛い……
その後、何故かアレスの握手会のような状態になってしまった。
忍者の服装の人達が順番に並んで列を作りアレスと握手、一言、二言話している。
これは時間かかりそうだわ。
「私はここの人達に良く思われていないですし、マルタが待っているので帰ります。姫様もとりあえず一緒に帰りましょう」
え、アレスを置いていくの?
ロイドが帰ろうとすると後ろから野太い声がした。
「待て、ロイド!」
「えー、まだ何かありますかぁ?」
ロイドが迷惑そうに振り返る。
「ある! お前リリアをまた連れて行く気か!?」
おじいちゃんだ。
「連れて行きますよ。アレスと話をして分かっていただけたのかと思いましたが……」
「魔王の完全消滅か!? 知らん! 返せ! うちの娘だ!!」
「これだから脳筋は……」
「何か言ったか?」
「いえ、何も……」
「でも、まあ何だな……お前も大変だったんだな、フェルから聞いたぞ。ウォルターが魔族になって……マルタまで……モーモにお前がリリアを拐いに来たときはあまりに人相が違いすぎて、お前も魔族になったのかと思うほどだったが、中身はかわいいロイ坊のままか……」
ロイ坊? 思わずニヤケてしまう。なにそれかわいい!
おじいちゃん、子供の時のロイドにもアレスにも会ってるし、顔広いね。
「はあ? 何を言ってるんですか? 先程まで私を殺そうとしてましたよね?」
「いや、そんなことはしていない! リリアを拐った罰にちょっと小突こうと思っただけだ」
「バルク様、それ死にますから……」
「リリア! 大丈夫だったか? じいちゃん迎えに行けずにスマンかったな。お前コイツに拐われて大丈夫だったか? ひどい目にあってないか?」
やっとおじいちゃんが私に話しかけて来たよ。
でも心配してくれてたんだね。ごめんね。
「大丈夫だよ」いろいろあったけど
「そうか、良かった、じゃあ、じいちゃんと行こう」
おじいちゃんがロイドから私を奪おうとする。
「おじいちゃん、私、一緒に行けないよ。アレスの手伝いもしたいし、私が帰らないとフェルも寂しがると思う。それに……私が帰らないとロイド困るでしょう?」
ロイドを見た。
ロイドが意外そうな顔をした。
「どうしたのですか? 姫様が私の事を気遣うとは?」
「ロイドは子育て終わったら魔族にされちゃうよね? 私がいなくなったらロイドが魔族になってアレスの邪魔になるもん!」
「すごい優しさで感動ですね」
ロイドが嗤う。
後ろから笑い声がした。
アレスだ。
握手会は終わったらしい。
「アレス!」
「リリア!」
アレスを見てロイドに抱えられていたのも忘れて飛び付こうとした。
アレスが私を抱き寄せて抱える。
あ~アレス会いたかった! あれ? 意識のある生のアレスにくっつくの初めて? イチャっとしたのは夢の中だけ……
うわー余計照れちゃう。でも幸せ。
「ああ、娘をとられてしまいました。寂しいですね」
思ってもいなさそうな事をチビリルを撫でながらロイドが言った。
おじいちゃんもさっき私をだっこしようとしていたので手が困っている。
ごめんなさい、おじいちゃん。
「バルク、リリアを預けてくれないか」
アレスがおじいちゃんに言った。
おじいちゃんが黙っていた。
「おじいちゃん、私からもお願い!」
おじいちゃんが更に黙る。
「バルク様、分かりましたか? 警戒するべきは私ではなくてアレスの方ですよ。育ったらあっという間に持っていかれそうですね」
ロイドがおじいちゃんに変な耳打ちをした。
「ふははははっ!! わかった、リリアを連れていけ! アレス様に言われたら断れん! 喜んでくれてやる!!」
"おじいちゃん問題"が解決した。
まるで嫁にでも行くかのような感じになってるがアレスはそんなことは言っていない。
私はアレスから下ろしてもらいおじいちゃんにハグをした。
私が転生してからずっと守ってくれていた優しいおじいちゃんだ。感謝しかない。
アレスと……和くんと再会出来たのもおじいちゃんが私を育ててくれたからだ。
「ありがとう、おじいちゃん」
「リリア、アレス様と幸せにな!」
うん、やっぱり嫁に行くような別れ方だ?
まだ早いよ。 おじいちゃん。




