174、ロイドへの罠
私はサクラコとジンノスケに捕まり囮にされるようだ。
「あ、あの、どうやってロイドを捕まえるの?」
「今まで王宮を探るために何人か我々とエターナルの反乱軍の者が王宮外で仕掛けましたが、ロイド様は一度も魔法は使っていない、必ず格闘技で来ます。そして12年前まで王宮にいた者の話によれば、ロイド様の魔眼は人を惑わせる能力しか無いそうです。それは視線さえ合わせなければ回避出来ます。なのでこの付近一帯に100以上の呪縛の魔方陣を隠して配置しました。動きさえ止めてしまえば良いのです」
え? 人を惑わせる魔眼のみ……? 逆にそっちを見たことないような……
12年前ね……そこから大分魔眼は進化してるけれど知られていないってことか? 今のロイドは人が見えないものが見えるよ。隠密見つかるのってそのせいじゃん。
呪縛の魔方陣て、隠していてもロイドには丸見えでは?
でも勿論黙ってますが……
「呪縛の魔方陣でロイドを捕まえるの?」
「そうですね。婿殿にはあまり怪我をしてほしくは無いのですが、これまで敵として戦ってきたものも多いので、ただではすまないでしょう」
ジンノスケがいう。
婿殿って……もう確定ですか。
「ただではすまないって? 何をするの?」
ジンノスケがニヤリと笑う。
「実は50人程、木の上や繁みに隠れて配置しているのです。血の気の多い者もいるので婿殿には痛い目に合ってもらいます。しかし殺してしまうわけにはいかないので呪縛の魔方陣です。」
木の上と繁みの50人……
たぶんロイドには丸見えだよ。
私はちょっとおかしくなってきた。
これってロイドにとっては罠でも何でもないのでは?
そう思い笑いそうなのを堪えてふと見ると……
私たちから数メートル離れた所に白い鎧を着たガタイのいい男がいた。
どこかで見たその男は大きな大きな戦鎚を持っている。
「あの方が今回の要になります」
ジンノスケが自信ありげに言う。
ちょっと待て、あの人って……!?
そうだよ!! 星降り祭りの"勇者狩りの処刑"の時に沢山人を引き連れて現れた人だ。
あの大きなハンマーで次から次へと屍兵を潰して破壊していた人だ。
最後まで見られなかったからどうなったか分からなかったが、無事だったのか……
あの場にはゴーレムもいた。
ゴーレムもあの戦鎚で潰したのだろうか?
この人の強さはきっと本物だ!!
幾つもの闘いを潜り抜けて来たであろう重そうな戦鎚を見て背筋が凍る。
「まあ、婿殿も足の一本でも潰せば大人しくなるでしょう」
ジンノスケが言った。
はあ!?
なに言ってるの? とんでもないこと言ってるよ。
うちのお父さんを何だと思ってるの!!?
あの戦鎚はロイドのトンファーでは受けきれない。ロイドのあの不思議な形の剣でも細すぎて割れてしまいそう?
なんだか嫌な予感!!
「やめてよ、サクラコ、やめさせてよ!」
「姫様、魔王城にいつまでもいるより、ジャパネオで暮らす方がロイド様の為です。きっとその方が幸せです」
「そんなの他人が決めることじゃないよーー!!」
その時、別の忍者が来た。
「報告です。奴はひとりです。戦闘メイドを連れておりません」
なにーーーー!?
シーラとレイラを置いてきたーー!?
なにひとりで来てるん?
「フフフ、お嬢様ひとりと見てひとりで現れたか……。一応戦闘メイドが追って来ないか警戒をしておけ。追い込むぞ!」
ひとりでロイドが来たとしたら私を連れ戻してサクラコは逃がすため?
なにそんな所で優しさ見せてんの! 甘いだろ!
まさかサクラコがこんなハーレム計画をたてているとは思ってもいないだろうからか……!
恐ろしい娘だ、サクラコ……!!
目をつけられたのがアレスじゃなくて心から良かったとか思ってしまう。
ロイド、逃げてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!




