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173、拐われた私

 私は拐われたらしい。


どれくらいの時間が経ったのかわからない。


 サクラコに対しての警戒心が薄まっていたのもあるが、ちょっとショックだ。


 暗い中、目が覚めた。どうやら外のようだ。


 逃げられないようになのか縄で縛られている。酷くね?

もうサクラコとの間に友情は芽生えないかもしれない。


 驚いた事に私のお腹の上ですやすや幸せそうにチビリルが眠っていた。

あ、あんた……なに一緒に拐われて来てます?


 あんた、本当にあのフェンリルさんの分身!?

めっちゃ役立たずじゃん!


 せめて残って私が拐われた事と罠があるかもしれない事をパパにお知らせしないとでしょ?


 チビリルにはがっかりだ。

かわいいだけの生き物に期待してはいけない!!


 ところでここはどこだろう?


 森の中?


 木々が生い茂っている。


 私のいる辺りはそれなりに拓けた空間だ。

私から少し離れた所に数人、黒っぽい服装の人が見えた


ーーーーーーーどこだ?


 少なくとも王宮からも王都からも出ている……?


ちょっとサクラコを見くびっていたかもしれない


 せいぜい王都の城壁辺りで捕まるだろう位の気持ちでいた。


これ、私見つけて貰えるの? 心配になってきた。


 帰れないとアレスに会えなくなってしまう。

それはかなり嫌。


ロイド~どうした~? はやく迎えに来て~!


あ、ダメだ!! 罠があるかもだった。

サクラコはロイドを捕まえようとしてるんだもんね。


 ロイドが怪我をしたらまたマルタを悲しませてしまう。

それはダメだ。


「姫様、気がつきましたか?」

黒い服装のサクラコが寄ってきた。やっぱりサクラコは忍者?


サクラコ~、お前なにしてくれるんよ!

「サクラコ、縄をほどいて!」


「申し訳ありません。姫様に協力していただけないので……暫くの辛抱ですよ」


なんじゃそれーーーーーー!?

協力するって言っておけば縛られなかった?

じゃあ嘘でも言っちゃおうかな?


とりあえず、チビリル起きろ! お前だけでも情報を持って帰れ!


 縛られてはいる私だが、えいっと起き上がって身体を捻りチビリルを私のお腹の上から落とした。

チビリルはお腹から落とされ地面をコロコロ転がった。

転がったチビリルは起きることもなく仰向けに止まりへそ天ポーズで何事も無かったかのように寝息をたてている。


挿絵(By みてみん)


 こんな状況で寝ながらへそ天!? (めっちゃ可愛いけど) 


うわーーーん! 役にたたん犬ーーーー!!!


「姫様、チビリルがかわいそうですよ」


お腹からチビリルを落とした事をサクラコに嗜められる。


私の方がかわいそうだーーーーーーーーーー!!


「姫様には囮となってもらい、ロイド様を捕まえた後にジャパネオ行きの船に乗っていただきますね」


「サクラコ! あなたマルタと仲良くしてたよね? ロイドはマルタのだよ? マルタが愛妾の話した時に一緒に聞いてたよね? そんなマルタからロイドを取る気なの? サクラコってそんな冷たい人?」


「マルタさんもあとでお迎えに行きます。私は第二夫人で良いのでマルタさんも連れてジャパネオに来てくれるように何度もお願いしたのですが、ロイド様が聞き入れてくれずに強硬手段になってしまったのです」


えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?

「第二夫人って……それ本気で言ってるの?」


「本気ですよ。彼はルカレリアの王族の出ですから歓迎されると思います。魔眼の能力を受け継ぐものが我が国から生まれる可能性を考えると、ロイド様と結婚したい者は多いでしょう」


ん?

「どういう意味?」


「ですからロイド様には私以外にも何人か娶っていただけるように、計画しております」


それってロイド、種馬扱いーーーーーーーーー?


「だってロイド、子供いらないって、欲しがってなかったし、えーーーーーーー? 本人の意思はーーーーー?」

もはや私の理解の上をいっている。


 さすが黙っていても異世界にハーレムを作れちゃう能力の男、ロイド。

本人の意思と関係なくハーレム計画が進んでいた!!


「聞くところによるとロイド様は魔眼の能力が低く魔法も使えないそうですね。マルタさんに至っては魔眼はなく魔法も生活魔法程度。我が国の優秀な女子との間に優秀な子供を儲けてもらいたいです」


「え? 誰がそんなこと……」

ロイドの魔眼の能力が低い? あの何でも見える眼が!?

魔法が使えない?確かに使ってるの見たこと無い……? でも大賢者フェルの弟子だよ。魔法使えないなんてことある?


「サクラコお嬢様、奴が探知の範囲に来ました。」


初老の忍者(?)が来てそう告げた。


お嬢様? サクラコは良い家の娘さんなのね。


「姫様、この者はジャパネオの私の家に仕えている私のじいやです」


「リリア姫ですね。このような扱い申し訳ありません。私はジンノスケと言います。うちのお嬢様がお世話になりました。暫くご辛抱下さい」


悪い人では無さそうだが、ああ、帰りたい。


私からアレス成分が抜けてしまう……早く帰してーーー!!













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