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172、チビリルに戦闘はムリでしょう

 えーと、使命を持ってやって来た? とは?


サクラコどうしちゃったの?


もふもふっ


ん? なにやら足元にチビリルがいる。


チビリルなにしてるの?


チビリルは私の方をちらっと見てから私の膝に乗ってきた。

珍しい……いつもマルタの胸の上にのっていたがるのに……?

変な態度のチビリルに「?」となってしまう。


「姫様、今がチャンスですよ」


「サクラコの使命って仇を見つけて旦那さんを連れ帰る、だったよね? ロイドはマルタとラブラブだからやめた方がいいと思うよ」


 私はチビリルを撫でながら言った。

人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて……っやつだよ。


「それは私の個人的な事です。私は姫様を助けに来たのです。一緒に行きましょう」


まじですか? 数ヶ月掛かりの潜入のお仕事ですか?


「連れていくって言われてもな~」

無理ですよ。だって私ここでアレスを待っていますから……


「姫様はわかっているのですか? このままここにいてもいつか殺されてしまうんですよ」


「ああーーー、確かに、私も"生け贄"だとか聞いたときにはかなり怖かったけど、ロイドが生き残るのを考えるって言ってくれたので……」


 何よりも私のアレスが絶対に助けてくれる!

あれ? なんか私余裕すぎ?

前はあんなに動揺した話なのに今は勝手に大丈夫な気になっている。


 チビリルはずっと膝でもふもふしている。

目を細めて眠そうだ。


「姫様はまだ幼いのにすごいですね。生け贄と聞いても動じないとは……なんて胆の座ったお人でしょうか……サクラコ感服します」


「動じない訳じゃないよ。聞いたときはパニクりました。あ! それよりも先にサクラコの方が危ないんじゃ? そうだ! それだ!!」


「何ですか?」


「サクラコ、魔族にされちゃう! 逃げないと! ロイドに出ていくように言われてない?」


そうだよ。ウォルター様がサクラコを魔族転化したがってた。

あれから1ヶ月位経ってて本宮にロイドが呼ばれてるのはきっとその話だよ?


「ここ数日、ロイド様から国に帰るように言われております。でもそこで気がついたのです。姫様を連れていくとロイド様は追いかけて来るでしょう?」


「え? ロイドも連れて行くつもりって事!?」


「はい。私が姫様を連れて出て、ロイド様を仲間が捕らえて連れ帰ります」


「な、仲間が来てるの……?」

なんかべらべら喋ってますがいいの? サクラコそういうのは黙っていたほうがいいよ?


 チビリルが耳をぴるぴる動かした。この子聴いてるよね?


「姫様、協力していただけますか?」


私に協力を求めているから話ているの?


「するわけ無いじゃん! サクラコやめときなよ。危ないよ。ロイドはああ見えて強いから仲間なんてやられちゃうよ! サクラコも危ないよ!」


「大丈夫です。凄く強い方が協力して下さる事になってますから! ロイド様とも何か因縁のある方です。姫様は安心して私に捕まって下さい!」


いやいや、無理だから、ここにいないと毎日アレスに会えないし……


「サクラコ、私行きたくないから、それにここに入るときロイドに忠誠を誓ってたよね? サクラコは約束を守る娘だったよね? こんなことしたらダメだよ」


「私はロイド様を裏切る訳ではないのです。これは最終的にもロイド様の為にもなることです!」


うわ~

何を言ってもダメな感じ~!

何かを信じてる人って他の人の言うこと聞かないよね……


ちょっとチビリル! 私、拐われちゃうよ!

あんた何か働きに来たんじゃないの?

ちゃんと助けてね?


 チビリルがこっちを見た。

いつもはお喋りのこの子が何も言ってこない。

どうした? チビリル? キミの見せ場では?


チビリルがしっぽをフリフリしてかわいいポーズをしている。

あ~かわいい!


じゃなくて! 可愛い犬のふりはいいから、助けてよね!


 改めてチビリルを見る……


 小さいモフモフボディに触ると中身は更に小さく細い。

細く短い手足に、短めの鼻。鼻が短いから口も小さく牙も小さい。

くりっとしたお目目の可愛い小さな赤ちゃん犬。


あ、チビリルって戦闘に向かないわ。愛玩用?


「残念です姫様、出来れば納得してお連れしたかった。失礼します」

サクラコがそう言って私の口を覆った。


もがっ!


何かを嗅がされて意識が遠のく……。



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