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168、お姫様のキスだ!

 フェルの地下室に着いた。


もちろん屍戦士のアレスもついてきている。


「いらっしゃい、リリア~」


 そう言ってアレスにスリスリするいつも通りのフェル。


「いらっしゃい、ロイくん、今日は早いね~」


ロイドにも同じようにしようとして拒否られるフェル。


「チビリルに今日は早めに行くように促されましたが何があるんですか? 私は忙しいのですが……」


チ、チビリル! お前のせいか!

無理に来なくてもいいのに、チビリルが呼んだのか!!


チビリルが嬉しそうにシッポをパタパタさせている。

小さなかわいい動物に罪はない……


「アレスがね。パパにも聞いて欲しいって~」


「アレスが?」


 チビリルはアレスに言われてロイドをつれてきたのか。

ホント余計な事を!!


「そうなんだ~じゃあアレスの意識は繋がりそうなの?」


「あのね、リリアが呼ぶとすぐ来られるって言ってたよ」

チビリルが自慢気に言う。


えーーーーーーーー!! なにチビリルに言っちゃってるのーーーー?


「そうなんだ。シラナカッタナー」

私はしらばっくれる事にした。


「……姫様、棒読みですよ」


う、なんかバレてる?


「じゃあ、リリア、アレスを呼んでくれる?」

フェルが優しく言う。


でも駄目。

 今朝までの私は恥ずかしさだけで出来ないと思ったけど、


 今の私は恥ずかしさもだけど、こんな幼女がアレスにキスをしていいものなのか? と思う。しかも口に……。

なんか勇者様を貶めませんか?


 いろんな感情で駄目な気がする。


 私ってめんどくさいやつ?

でもしょうがないじゃない?


『乙女のキス』も『勇者のキス』も安売りしてはいけないのです。


「どうしたの? リリア?」


二人と一匹からの注目がキツかった。


「今日はしません!!」


私は手をバツにして拒否る。


「えええー?」


フェルが嘆く。


ゴメン、フェル。


 するとロイドがチビリルを抱えて何か聞き出していた。


やめてーーーー! チビリル変なこと言うなよーーー!


ロイドは黙ってアレスの兜と仮面を外す。


うわ、アレスのイケメンぶりが眩しい!


「アレス、姫様の口にキス」


ロイドがアレスに指示をした。


え? こんなふうに屍戦士って使えるの?

あ、でも指示されれば動くよね。(これは使える技だ! 使わんけど)


 そう思った者がもう一人。


「え? すごい、そんな命令有りなの~? ボクもしてもらいたい~!」


フェルが嬉しそうに大はしゃぎだ。


 アレスがしゃがみ、私の肩をおさえて顔を近付ける。

サラサラの黒髪に虚ろな瞳だが鼻筋の通った整った綺麗な顔立ちのアレス。

この顔にキスされるのを避けられるはずもない!!!


「ロイドのばかーー!」

簡単にお姫様の唇を奪わせるって侍従としてどうなんだよ!!


「大好きなアレスにキスされるのは嬉しいでしょう? 良かったですね。姫様」


何、嬉しそうに言ってるんだよ!!


 アレスが私の顔を押さえ唇が私の唇に触れる。


ああーーーー勇者様が幼女にキスしちゃったじゃん!!


事案発生だーーーーーーーー!!

何て事をアレスにさせるんだ!


和くんもアレスもそんな人(幼女趣味)ではないのに!!

どうしてくれる!?


しかも人前でキスだぞ!

私の乙女心はズタボロだよ!


「アレスーアレスー! ボクは~? ボクにもキスしちゃう~?」

フェルがアレスに近付く。


それ、もっと駄目だから!!


 するとフェルの頭部をガガッとアレスの腕が押さえつけた。


そのあとにアレスが盛大に咳き込みだした。


ゲホゲホ、ゴホゴホと……苦しそうに咳き込む。


私とキスしてその反応? 傷つきます。








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