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165、ずっと一緒、でもその前に……

 私と和くんは抱き合っていた。


「やっと思い出してくれたね、柚子。ごめんね。君を巻き込んでこの世界に来てしまったこと……」


「私こそごめんなさい。ちゃんと和くんを信じなくて……まさか和くんが異世界転生の勇者さまだとは……」



「勇者さまって……その言い方ちょっと恥ずかしい感じだね……でもそうなんだよ勇者だったんだよね。でも駄目勇者だよ。フェルの召喚を散々拒んで君の側にいようとしたからバチが当たったのかな? 10年も暗闇にいたらしい。でも君のお陰で戻って来られた。ありがとう柚子。いや、今はリリアだね」



「和くん、また会えて嬉しい。もう離れないでずっと一緒にいようね」


「そうだね。ずっと一緒だ。……でもその前にちょっとやることが出来たんだ」


「やること? あ、和くんの身体の時間停止を何とかしないと?」


「それはね、実はもう解けかかってる。時々繋がるんだ。前に何か食べさせられた時とかも……」


「え、本当に?」

食べさせられた? マルタのお粥か……?


「だいぶ足掻いてたからね。自分の力も戻ってきたし、すぐにとはいかないが時間停止は自力で解けそうだ」


「すごいね和くん! さすが勇者アレスだよ!!」


「うわっ、柚子に言われると相当恥ずかしいな……勘弁して」


和くんが照れて赤くなる。


「ジルニトラに会いに行く。フェルもついてくるって言うと思うけど独りで行くよ」


「え? 独りで……だってまだ身体……」


「時間停止はまだ解けないから身体は置いていく。今まで通りにリリアの側に身体はいるよ」


「身体はって……?」


「ジルニトラに会いに行くのに肉体は特に必要ないんだ。この事はフェルに直接話す。ちゃんとフェルと話さないと……だから現実でリリアにアレスを起こしてもらいたい」


「アレスを起こす? どうやって??」


「どうって……」

何故か和くんが赤くなって視線を外し照れながら言った。

「前に一度してくれただろ? アレスにキスしてくれ、そうすれば君の姫巫女の力で肉体に意識が移れるから」


「えええええええーーーーーー!!」


どこでするの? 公開処刑!?


「わ、わ、私からするのはちょっと…」


「柚子、頼むよ」


「でも……」


「柚子、君はフェルを助けてって言ってたよね? 俺はフェルを助けたいし……出来ればヴァリアルも助けたい……あれから30年も経っていたなんて信じられないけど、どうにかしたいと思っている」


ヴァリアルを助ける……!?


何、言ってんの? 


意外な事を言ってきた。


何言ってるの? ヴァリアルは、あなたを殺した人だよ? 忘れたの?


あいつが魔王でしょ?



「じゃあ、頼んだよ柚子」





ーーーーーーーーーーーそして長い夢が終わった。





目が覚める。




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