153、着ぐるみウサギの出動だ!
査察がやって来る。
何しに誰がやって来るの?
それって何か怪しまれてるってこと?
アレスを置いといていいのかな?
ちょっと心配。
「査察ってどんな人が来るの?」
「それがですね……今回は」
マルタが口ごもりながら言った。
「ウォルター様です」
「え? この前言ってた、命の恩人だけど魔族になったひと?」
「リリア様! どこでそれを!?」
え! この前一緒にいたときロイドが説明してくれた……違ったわ……説明したのはチビリルだからマルタには聞こえて無かったんでした。
ややこしい。
「それよりも命の恩人て事は助けてくれた人だよね? だったら良い人でそんな怖い人ではないから大丈夫じゃないのかな?」
いや、人ではないのか……?
「……昔のまま……でしたら……ウォルター様には子供の時からとてもお世話になったのです。まるで私達の父のような存在でした。王宮で働く前から育てていただいて……それにウォルター様が魔族にされたのは私にかなり責任があるので……あの方の変わってしまった姿は見たくないです」
そっか魔族になったって事は昔と違うのか……
ちょっと心配になってきた。
しかし父のような存在とは……ロイドにとっても?
ロイドの父…
じゃあ私の祖父のようなものだよ。
なんてね。
「よし、マルタはここにいて、アレスとチビリルもだよ」
私は急いで着ぐるみウサギの準備をする。
「リリア様……それはお祭りの時の……」
マルタにも"星降り祭り"の時のお城の出入り時に簡単には説明してある着ぐるみウサギ。
「駄目ですよ。そんな事をしてばれたら……」
マルタの顔が青くなる。
「大丈夫。近くにいかないから、遠くから様子を見るだけね。このウサギ耳は良いから!」
マルタがおろおろしている。
《パパの言い付け守らないと怒られるよ》
チビリルが忠告してきた。
ギクリ……!
「階段から玄関を覗くだけにするから、ね?」
ロイドにも見つからないようにしなければ……。
マルタが私の手を握り、口をパクパクする。瞳はるうるうるだ。
私を止めようとしているが、良い言葉が浮かばないらしい。
「ダメです……」
やっとこれだけ言った。
「ちょっぴり見たらすぐ戻るから、」
いつ来ても良いように階段で待つことにした。
私はキャンディを頬張りハムスターのようになり自分の部屋を出ていった。
「リリア様!」
マルタが追いかけて来たけれど姿を消してしまった私をマルタは見つけられない。キョロキョロして戸惑っている。
ごめんね。マルタ。
何しに来るのか気になって、まさかアレスの事はばれていないでしょうが、後で聞くにしてもロイドが教えてくれるかわからない。
私は自分にこんな行動力があるとはビックリだった。
だってだって、万が一、勇者が生きてる? ってバレでもしたらどんな事になってしまうか。
一般庶民(?)を勇者狩りとかで捕まえて処刑とかしちゃうようなイカれた考えの人がいるんだよ。本宮の魔王と仲間達って絶対ヤバイよ。




