149、一晩で何があった!?
「おはようございます。リリア様」
「おはようございます。姫様」
翌朝私の部屋にマルタとサクラコが来たがマルタの胸にモフモフしたものがくっついていた。
「おはよう……マルタ……それは?」
「昨日のワンちゃん、チビリルちゃんですよ。昨日お預かりしてました。どうぞ姫様」
ああ、あのまま連れ帰った人がいたからね。
「見つかって良かったですね。」とサクラコ。
昨日サクラコにも手伝ってもらってましたね。ありがとう。
「おはようチビリル。昨日はロイドの所にずっといたの?」
「くうん……」
くうん? どうした?
《人前で喋るなと言われたのだ! 昨日は連れて行かれて肉をもらったのだ。旨かった。思ったより親切で良い奴だ。"うちの子"になることにしたのだ》
うちの子?
頭の中で声がする。
おお、すごい! これはテレパシー的なもの? でもマルタの前で既に話していたような?
マルタだから大丈夫なの?
そして肉につられたか……。
「うふふ、くすぐったいわよ」
マルタにじゃれるチビリル。
違う! 肉じゃない!! 胸につられたな!?
《フカフカ、ポヨンポヨンだぞ~》
やっぱり?
「あ、サクラコ、このノート片付けてなかったよ。お願いして良い?」
サクラコにマルタの悪口ノートを渡す。
「姫様のところでしたか、何処に行ったのかと……」
「あら? そのノート、サクラコのだった? リリア様のお部屋の前にあったからリリア様のかと思ってお部屋のテーブルの上に置いておいたのですが……ごめんなさいね」
私の部屋に置いたのはマルタでしたか……。
「マ、マルタ……このノート……中見た?」
「いいえ、見ないで置いてしまったので……すみません」
「それは良かったです。では片付けて参ります」
サクラコはさっさと片付けに向かった。
このノートを見てたらショックを受けるよね。マルタが見なくて良かった。
もう捨てちゃってよくね?
「そうだ、マルタ。ウォルターさんて人知ってる?」
マルタが固まった。
「り、リリア様……どこでその名前を……」
え、もしかして怖い人だった?
「昨日ちょこっとロイドが言ってた名前……聞いちゃダメだったかな? ごめん」
「いえ、そんなことはありません……ウォルター様は私達の育ての親であり命の恩人です。とても立派な方でした」
「そうなんだ……」
育ての親であり命の恩人? にしてはビビり過ぎてるような……?
"立派な方でした"ってことはもう亡くなってる人なのかな?
「ロイドの前の侍従頭です。今は……」
マルタが下を向いた。
「え、ごめん、マルタが言いたくない事は言わなくて良いんだよ!」
「現在は陛下のもとで働いております。能力をかわれて今では将軍ですよ」
ロイドが現れて説明してくれた。
いきなり現れましたね。
「将軍!? 大出世だね」
あ、でも魔王の所の将軍てヤバくね?
「ウォルター様は魔族転化して魔族になったのです」
んん? なんか知らない言葉が……魔族?
「この話はおしまいですよ」
ロイドが、もう聞くな! と目で言ってきた。
「はい」
怖いです。ガクブル。
《魔族転化は存在の転化をすることにより人間や別の種族を魔族にする技だよ。膨大なマナと魔力が必要だ。不適合の者にすると命を落とすこともあるよ》
親切なチビリルが説明してくれた。
ヤバいよチビリル! この話はおしまいって言われたのに! 怒られちゃうよ。
ロイドが人差し指でチビリルのおでこをつつく。
そして一言。
「チビリル!」
ほら、叱られた。
《はーい。ごめんなさい、パパ!》
チビリルが答えた。
「パパ~?」
思わず声が出た。
「どうしました? リリア様?」
マルタがキョトンとした。
「何でもないです」
知らない間にお父さんにもうひとり子供が……
一晩で何があったのか……
……ん? てことは、私とチビリルは姉弟ですね!!?




