14、街へのお出かけ
フェルの作った抜け道を使い王宮から出た私は、街中と思われる細い裏通りに出た。
街の中に繋がっているの?危なくない?キョロキョロしてしまう。
「これはね~前に作った抜け道なの~誰にも見つかった事ないよ~。見つかっても通れないの~」
犬っぽい着ぐるみのフェルが喋る。
「え?じゃあ抜け道作るから10日待ってという事じゃなかったの?」
ウサギっぽい着ぐるみの私が喋る。
「違うよ~これ作ってたぁ~」
と言って服を差す。
はあ? 勝負服的なつもりですか?
「ちょっと寄るとこあるの。遠回りだけどついてきてね」
しばらく歩くと人がいた。何人かとすれ違いわかった事がある。
"着ぐるみ"は、王都で流行ってません。
好奇の目で見られ恥ずかしい!と思ったら全く誰も気にしていないようだった。
そのまま裏通りをいくつか抜けて行くと、段差のある水路や水門が見える。周りに花や木、沢山の植物が植えてありとても美しい。
「わあ、キレイ…」これよこれ!こういうおしゃれ感のあるとこに行きたかったの。景色でも建物でもお店でもよ。
「昔はね。街全体がこんなだったんだ…」
ちょっと沈んだ口調でフェルが言う。
最近気が付いたが、フェルはテンション高い時の口調は語尾がのびまくるがテンション低い時は語尾があまりのびないようだ。
つまり今、かなりテンション低そう。
そのまま進んで行くと何故かどんどん寂れていく。さっきまであった花や植物はない。
崩れかけた石やレンガで出来たアーチを抜け大きな広場に出た。
広場全体に石畳が貼られ昔は豪華だったのだろう。朽ちたベンチや植え込みが沢山あり水の流れない水路にヒビが入っていた。
広場の中央には大きな柱がありその前部分は重機で荒らされたかのようにボコボコになって石畳も剥がれたり割れたりして大きな穴で凹んでいる。
そこまで行くと、フェルがしゃがみこんだ。
お腹でも痛い?と思ったが何か祈りを捧げているようだ。
私はふと故郷のモーモ村の事を思い出した。
村では勇者の像と勇者の神剣をお年寄り達が拝んでいた。
そういえば台座がボコボコでこの石畳にそっくりな欠片がいっぱい付いていたような…
「そろそろ行こうか。ここに長くいると通報されちゃうから…」
立ち上がり振り返ったフェルの顔は泣いてなかった。
勝手に泣いていると思ってしまった…祈っている時のフェルは悲しみでいっぱいに見えたから…
そのあとはいつものフェルだった。
商店街のような所に行き、何か葉っぱや茎、何かの粉末など購入していた。
「欲しいものあったら言ってね。ボクがプレゼントしちゃうよ~」と言われたけれど今日は連れてきてもらっただけで充分なのでいらないと断った。
フェルはまた泣きそうになっていたけれど、泣けば何とかなるっぽくなるのがイヤだったので今後の教育のためにも放っておいた。
そして遂に目的のお店『クックモード』に到着。
日除けのシェードが出ていて、テラス席もあるようだ。
もうお腹ペコペコです。
店の前が少し賑わっていたので入れないかと思ったら、フェルが予約をしていたらしい。すぐに席に案内された。さっき見たテラス席。外の通りを見ながら食事できます。
うーん良いですねぇ前世のカフェを思い出します。出来ればピンクの着ぐるみではなくおしゃれをして来店したかったですねえ…
……て、何でこの格好で来たん!?フェルの趣味か?
でもフェル、お店を予約しておいたのはエライぞー!気がきくぞ~!
ちょっとフェルを見直した。いや、もうだいぶ前から見直してます。
そこでお目当ての"ぽぽる"とパンケーキに似た物"モーモパン"をセットで注文して紅茶も付けてもらう。
美味しそうな匂いと共に運ばれてきて食欲をそそる。こんなに歩いたのは久しぶりだったから本当にお腹が空いていた。やっと食べられる!
二人で、はいっ!いただきます!
至福~!もぐもぐ もぐもぐ
幸せを噛みしめていると…
私のウサギの着ぐるみの耳が動き出した。
『もうこの国は終わりだ。屍兵など使うのから』
『国王は国を滅ぼす気だ』
『屍兵で他国を攻めたらしい』
『軍にはもう生きた人間はいないそうだ』
『私の兄は屍兵にされて遺体を返してもらえなかった』
『屍兵の悪口を言うと牢へ入れられる』
『このままでは国に生きた者がいなくなる。屍の国になってしまう』
『他国に嫁いだ姫達には屍兵がついて行った。きっと他の国でも屍兵が…』
『何処にも逃げる所がない。平和に暮らしたいだけなのに』
次々と聴こえてくる。
なにこれ…?
慌てて私は周りを見た!
周りを見てもこんな話をしていそうな人達は見当たらない。
聴こえてくる声の主達はいったい何処にいるのか?
ーーーーーいや…いた。
隣の建物の中。
通りを足早に通る人達。
向かいの奥の路地。
ーー他にもいっぱいだ!!
至る所にこの国へ不満を持った人達がいた。




