146、アレス復活への道
チビリルはすっかりしょげてしまった。
私にくっついて離れない。
「もう誰も意地悪しないよ。驚かせてごめんね。アレスの事教えてね」
「チビリル、ごめんね。ボクちょっとおかしかったんだよ。アレスと話せるかもって思ったら我を忘れちゃったみたいでホントにごめんね。……旅でもボクたち仲良くやってきたよね。ほら、おやつもあるよ」
フェルもチビリルに謝り、おやつを渡し何とか許してもらった。
「……でアレスが何を話して喋ったって?」
ロイドが厳しめ(通常運転)に聞いてきた。
チビリルは急いでおやつを食べてフェルの後ろに隠れた。
「えっとね……何て言ったかな? 自分の名前……なんか変な名前を聞いてきた」
「変な名前?」
「変って言うか耳慣れない発音の変な名前……な、ななるせか、かず? そんな感じの名前を言ってた……で、なんか意識がはっきりしない事が多くて自分がはっきりしないって! だから、君は"アレス"だって教えてあげたんだ!」
フムフム
「そしたら急に意識がはっきりしたみたいで、自分は今どこにいるのか? 最後にいた場所はエターナルだった筈だって言うから、ここはエターナルだって教えたの」
それで?
「それで……どうやら自分は背中を刺されて重症だ、身体を動かすことが出来ない、どうなっているのかよくわからないが魔力で身体を動かせるが長くは出来ないって、仲間はどうしたとか、魔王が復活したかどうか気になるとか、今どうなってるかって、だから魔王はまだみたいって教えてあげて……」
それから?
「オレと……我と話せて良かったと言った。えっへん! なんか今までも時々こっちに意識が繋がったりしてたみたいだよ。でも誰とも話せないし、状況が分からないことがいっぱいだって、それで意識を保つのが難しくなってきたからもう休むって言って眠ったよ」
「アレスーーーーーーーーーーーーーーー!」
フェルが大泣きし始めた。
「ありがとう、ありがとう、チビリル! 君を連れてきて良かった! さすがにアレスの霊獣だ! アレスに使役するだけのことはある」
フェルが泣きながら感謝した。
「別に使役とかされてないぞ。ただちょっと手伝ってやるって魂で約束を結んだだけだぞ」
それを使役と言うのでは?
「アレスに意識があるのは驚きです。まあ星降り祭りの様子からすると予想はできましたが……そうなるとちゃんと意識を取り戻してもらった方がいいでしょう。ただ、意識が戻っても魔力でしか身体を動かせないのは問題ですね」
ロイドがため息混じりに言った。
「時間停止魔法を解いてみるしか無いのかも……ただ、あの魔法はかけた本人しか解けない……」
フェルが言った。
「だったらジルニトラに相談に行けよ!」
チビリルが言った。
「ジルニトラ……?」
聞きなれない名前だ。
「アレスはジルニトラとも友達だぞ。我と同じようにジルニトラとも契約している」
「ジルニトラってなに?」
「ジルニトラは"魔法の神"と呼ばれる黒いドラゴンです。伝説級の……」
ロイドが答えた。
「ボクは知らないよ! 会ったことがない! フェンリル、君はアレスと一緒に会った事がある。でもジルニトラなんて……実在するの?」
「フェル、君が王都の学校に行ってしまった後、肉親を失ったアレスは少し旅に出た、その時に我と会った。我とアレスは共に旅をした。その時にドラゴンの谷の山奥でジルニトラの住む異界に繋がりジルニトラに会ったんだ」
マジですか? なんか"伝説の何とか"ってのがいるのね? この世界。
魔王がいるくらいなら存在するの?
ちょっとアレス復活の道が見えてきた気がした。




