144、チビリルを探せ!
行方不明のチビリル、どこに行ってしまったのか……
私は二階の自室を中心に探した。
「チビリル~どこ~?」
ん? 待てよ? チビリルは抜け道通れたの? 階段使ったの?
どっちだ?
もしや私って検討違いのところを探してる?
窓の外を見た。いつもと変わらず屍兵が彷徨ている。
何か見つけたら、もっと動きが慌ただしくなるよね?
とりあえず一階へ行ってみよう。
「何かお探しですか?姫様」
うわ、ビックリ、サクラコだ!
「サ、サクラコ、ビックリさせないで、あ、"隠密"使ってた?」
「使ってませんよ。普通に天井にいただけです」
天井にいるのは普通じゃねーよ!
「サクラコ、犬を見なかった? このくらいのちっこい犬……」
私は大きさを手で示した。
「犬? さあ? 見てませんよ。犬をお探しでしたらお手伝いします」
「ありがとう、せっかくの休み時間(?)にごめんね」
「いえ、特にすることもないので……三階を探検していました」
「さ、三階? お化けでも居そうだけど? 大丈夫?」
「はい。普通のお部屋でしたよ。お化けがいるとしたら四階じゃないですか? 中からも外からも行けません。怪しいです」
そこは『お化けなんていないですよ』って言って欲しかったな。
「外からもって、外から入ろうとしたの?」
「はい。窓は中から打ち付けて全て塞いであります。破壊するとロイド様に叱られそうなので一応諦めました」
なにしてるんだろう……サクラコさん?
四階の窓を確認するって外からどうやったんだろう……?
私は窓に貼り付くサクラコの姿を想像した。
忍者(?)だから出来そう?
「そっか三階探検はしたのか……ちょっと興味あったかも……。そこに犬はいなかったわけね?」
「はい、いませんでした。ただ……」
「ただ……?」
サクラコの顔色が変わった。
ゴクリ……
やっぱりお化け?
「こんなものを見つけてしまったんです」
何か薄い感じの本を複数持っている。
本と言うよりもノート?
サクラコが厳しい顔をした。
え? なにその本達……なにか良くないものなの?
「これには恐ろしいことが書かれていました」
「お、恐ろしいこと!?」
まずい、私怖い話ニガテかも……
「ここを見てください!」
サクラコが本を開き手で示した。
うわ、見せないで!
怖いの無理!!
でも怖いもの見たさで見てしまう……
そこには……
『あの胸デカ女、生意気!』
『ヘラヘラするな、ロイド様の隣にいる、腹立つ!』
『胸でかすぎて、頭がからっぽのマルタ』
『せっかく転ばせたのに、ロイド様に甘えるな!』
『乳でかバカ娘! ロイド様を置いて出ていけばいいのに!』
等々……。
なにこれ……?
これって……これって日記的なやつ……?
他のノートにもマルタの悪口が書かれていた。
お、恐ろしいノートだ!!
三階って姉姫様達、三姉妹の部屋だったんだ。
これ見るとシャーロット様以外も相当キツそう……
悪役令嬢三姉妹的な?
三姫様達、それぞれの悪口ノートとは……キツ過ぎる……
さすがにこのノートを持ってお嫁には行かなかったか。
処分に困りそうだね。
マルタ……苦労したんだね。
私……姉姫様達がいる時に後宮に来なくて心から良かったとか思う。
「サクラコ、これ勝手に持ってきちゃダメなヤツだよ。戻してこないと」
「そうでしたか、では後程返してきますね。それより姫様、犬をお探しでは?」
「そうなの、チビリルって言う犬で、とっても怖い目にあって逃げちゃったの。サクラコ悪いけど庭を探してもらえる? 私は一階を探すね」
サクラコなら屍兵達に追われる事もなく庭を探しまわれる筈!
「承知しました」
サクラコは忍者らしくサッといなくなった。
す、すごいぜ、忍者!!




