143、アレスが目覚める?
アレスが目覚める? そんなことが!?
フェルがガバッっと起きてアレスの元に来た。
「アレス、アレス、ボクが分かる!? アレス!!」
必死にアレスに話しかける。
特に反応はない……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
何も変わらない……。
ま、そんな事だと思ったよ。
こう言う時って期待しすぎると絶対はずすもんだよ!
「うるさいって」
チビリルが言った。
「うるさい?!?」
誰がうるさいって言ったの?
「アレス……聞こえてるの?」
フェルが泣きながらアレスの手を握った。
「ふむふむ。そうか、違うよ、君はアレスだろ?」
チビリルがアレスに向かって会話っぽくしている。
アレスは寝たまま動かない。
「そうだよ、合ってる。ここはエターナルだ」
チビリルが続ける。
まさかアレスと話してる!?
「災難だったね。うん。わかった。魔王? まだみたいだよ」
チ、チビリル……あんたもしかしてすごいやつ!?
私はちょっとチビリルに感動していた。そしてついにアレスと意思の疎通が出来てしまうんだと更に感動。
フェルも一緒にドキドキで見ている。
アレスと話をさせてほしい。期待がぐんぐん上がっていく。
「いいよ、無理するなよ。おやすみ」
え?
しーーーーーーーーーーーーん
「アレス、寝たよ」
チビリルが言った。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?
せっかく、せっかくアレスと意思の疎通が出来ると思って、おとなしく待っていたのに!?
何故、会話をこっちに一個も回さないかな~!?
フェルがふらりと立ち上がった。
その目はヤバい感じだ。
「コ、コロス……!!」
フェルの手に何か錫杖のような杖が召喚された。
フェルの回りの空気が変わる。
え? まさかの初戦闘モード!?
あのフェルが!?
チビリルがビックリしてガクブルなった!
あのフェンリルの分身とはいえ、戦闘力は物凄く低そうだ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってーーー! フェル、落ち着いてーーー! 話聞こうよ、アレスと何を話していたのかを! ね!?」
全くこんな時にロイドがいないとか、何あいつ帰っちゃうかな!?
チビリルはガクブルでおもらしをしていた。
「脅かすなんてひどいぞ! オレ生まれて2ヶ月の赤ちゃんなのに、ひ、ひどいぞ、本体に言いつけちゃうぞ!」
よっぽどフェルが怖かったのだろう。
考えてみればフェルはアレスのパーティの攻撃呪文系の筈!?
いつものフェルからは想像つかないが、本当はスゴく強いのでは?
それが2ヶ月の赤ちゃん犬を脅したのだ。
ちょっとひどかったかもしれない。
「ごめんねチビリル、大丈夫だよ。おいで~」
チビリルは猛ダッシュで逃げて行った。
フェルが杖を構えた。
「ダメーーーーーーーー!!」
私はフェルにタックルした。
二人で大きく転がった。
イテテ……。
「ち、違うよ、今のは攻撃じゃなくて、捕まえようとしたんだよ~」
いつものフェルだった。
戻って良かった。
チビリルの姿は無い。
もしや地下室を出た?
「フェルは怖がられるからここにいて、もしかしたら戻って来るかもだし……私探してくる。」
「う、うん。ごめんね。リリア、つい頭に血が上ったみたいで……」
「気にしないで、フェル。フェルは疲れてるんだよ。ゆっくり待っててね」
そう言って私は自室に戻った。
まずは宮の中から探す。




