142、その名はチビリルだ!!
ロイドに協力してもらいアレスを視るはずが、ロイドはさっさと帰ってしまった。
ロイドは基本、視たくないのだろう。そしてマルタが待っているから帰る。
「師匠いじける暇があったら姫様に踊りでも教えて下さいね」
そう言って去って行ったが、フェルは小さく「うん」と言ったきり動かない。
「フェル~元気だして、ちびフェンリルも言ってたじゃない、気にするなって、あ、フェルお菓子ありがとうね。一緒に食べよう」
「リリア……君って結構ずぶと……ゴ、ゴホン、いや何でもない」
そう言ってフェルはお茶の用意をしてくれた。
アレスは魔方陣のベッドに置き去りだ。本当は一緒にお茶を飲めればいいのに。
お茶が入り、お菓子を並べるとどこからかちびフェンリルとスライムのぷるるんが現れた。
ぷるるんはずっと何処にいたのだろう?
そしてお茶会に参加する気満々で、ちびフェンリルと並んでいるようだった。
お菓子……食べるの? 食べられるの?
ぷるんぷるん!
食べるらしい?
「早く、くれ!」
ちびフェンリルも食べるらしい。
フェルのお土産はマフィンのようだった。マフィンの上に砂糖でアイシングしてある。アイシングの色はカラフルでいくつか種類がある。
黄色をひとくち食べてみた。ん、これはレモンぽい。犬って柑橘系よくないんじゃ?
「早く、くれ!」
ちびフェンリルが待っている。
ぷるんぷるん!
ぷるるんも待っている。
うわ? 食べさせても大丈夫なのかな?
とりあえず、ちびフェンリルには混ざりものの無さそうなプレーンタイプをあげてみた。
ぷるるんは……? 口は無いけど何でも食べそうだな。
ぷるるんは特に気にしなくて良さそうなので紫色のをあげた。ベリー系かな?
二匹(?)とも喜んで食べてすぐに"おかわり"を要求してきた。
あっという間に無くなりそう。
ぷるるんは食べたお菓子が透けて見えている。
中でシュワシュワしている感じだ。
物によっては物凄くグロいことになる。
与えるものは気を付けなければですね。
そして半野良のぷるるん、間違ってもその辺で拾い食いはやめてね。特に生き物系……
フェルは泣きつかれか、旅疲れか、ぼんやりしている。
手に持っていたお菓子をちびフェンリルに食べられたが、何も反応しない。
大丈夫かな?
アレスに目が行った。
鎧を着てない包帯男だ。地下室でその格好は寒そうに見える。
ちびフェンリルを抱っこして持っていく。
「なにするんだ!」
ちびフェンリルが少し抵抗した。お菓子に未練があるのかも
「ちょっとアレスが寒そうだから……」
私はちびフェンリルをお腹の辺りに置いてみた。
だってワンコって体温高くて温かいもん。
「アレス、ちびフェンリルさん温かい?」
「ちびフェンリルってなんだ? もっとカッコいい名前がいい!」
ちびフェンリルさんがプンスカ文句を言ってきた。
「えー、ダメだった? んーーーーー ……じゃあチビリルでどうかな?」
あ、かっこよくないからダメかな?
「おおー! チビリルか! いいな!! カッコいい!!」
尻尾をぷりぷり振って喜んでくれた。
カッコいいか?
まあ喜んでくれたならいいか……
「お? いい感じだ。今波長があった。アレスが起きるぞ!」
へ? チビリルがとんでもないことを言った。
それを聞いたフェルが椅子から落ちた。
アレスが起きる!?
本当に……!?




