137、アイテムボックスに入れられる物
最近サクラコが一階にいる屍戦士達に闘いを挑んでるらしい。
端から順に挑戦して今3体目になるそうだ。
屍戦士はそれぞれの強さはそんなに変わらないそうだ。
ただコアを破壊しない限り屍戦士は動く。どこで勝ちとするかが難しい。
ムキになりすぎて屍戦士を壊してしまい、今月のお給料が半分なくなったそうだ。
そしてもう屍戦士に闘いを挑んではいけないことにもなった。
「何でそんな事をしたの?」
私がアレスの膝に座ったまま聞く。
開き直った私はとことん図々しくアレスにくっつくのだ。
「それはですね。屍戦士の中に仇がいるかもしれないからです」
あ、その話まだ生きてたんだ。
「仇が屍だったら結婚出来ないよ。諦めれば?」
アレスの膝でアレスの手を恋人繋ぎしてみる私。
うう、手の大きさが違いすぎる……指が痛い。せめて素手だったら出来るかな。手の部分の鎧を勝手に取ったらダメかな?
「でもどの屍か確認したいです」
どの屍でもないけどね。
屍の中に犯人はいませんから。屍戦士に意識があったら超迷惑しているでしょう。かわいそうに濡れ衣。
「サクラコはやっぱり……その……トウジロウさんが好きだったの?」
だとしたらホント申し訳ない気がする。
いやいや、命を狙ってきたほうが悪いか……。
「義兄とは歳が20も離れていたのでよくわかりません。義兄は私が生まれる前に腕を買われ父の養子になったのです。私の国では親の決めた許嫁と結婚するのは当たり前なので、好きとか嫌いではないのです」
「それは寂しいわね。でもこの国も似たようなものかもしれないわ。この国の姫様達は皆顔も知らない他国の方に嫁いで行かれたし……身分の高い者ほど好きな人と結婚出来る事はないですね」
マルタが花瓶にお花を飾りながら言った。
そうか、庶民が一番かも……
「サクラコは仇を見つけないとお家に帰れないんだよね? しかも相手を連れ帰るんでしょ? 相手が屍だったり女性の場合もあるから、もう諦めてもいいのでは?」
「そうですね。その事は私も考えました。その場合も考えて私は強い男を探しに本宮に忍び込んでみたのです!」
本宮に忍び込むーーーーー?
な、何て恐ろしい事を……(魔王いますよ)
「そんなことして見つかったらまずいよ……」
サクラコ、お、恐ろしい子…… (((( ガクブル……
「はい、入り口から300メートルくらいでロイド様に捕まり、怒られました。二度とやるなと約束させられたので、もう行けません」
うわーロイドも大変だ。
忍び込んだのばれたらロイドもただで済まないよね。
これは本気でやっちゃダメだよ。
そういえばサクラコはこの後宮まで普通に忍び込んで来た人だった。
かなりの危険人物だよ。忍者だし……?(本当に忍者なのかは不明だけど)
「私からもお願い、もう忍び込んだりしちゃダメだよ」
私からも念押ししておこう。
「承知しました。私、約束は守るので大丈夫です。しかし以前から思っていましたが、本宮には人の気配がないですね。普通に王宮だと出仕してくる者等、人の出入りがあるはずなのに全く無いですね。貴族の出入りや夜会等も全く無いのは不思議です。この国にはそう言う文化があると聞いていましたから」
結構よく見てるんですね。サクラコさん。
「そうですね。夜会はないですね。王妃様が亡くなってからは全く無いです。姉姫様達がいた頃もお茶会程度でしたが……招待する方達がいないのでは……?」
マルタがアイテムボックスからお花を出し、古いお花をしまいながら言った。
うーん便利だね。アイテムボックス羨ましい。
「それは皆、屍になった? ということですか?」
サクラコがずいっとマルタに詰め寄る。
「そ、それはわかりませんが……何となくです。以前より人は減ってますから……」
マルタがサクラコの勢いに負けのけぞる。
「マルタさんは知らないですか。ロイド様に聞いたらその質問はするな、と言われたので私はロイド様の命令は聞かなければです」
サクラコがしょげる。
律儀だね。サクラコ。ちゃんとロイドに忠誠を尽くしてるのね。
マルタが雑巾二枚とバケツ、洗剤をアイテムボックスから出した。
なんか普通に何もない所から何かが出てくる光景にも慣れてしまった。
私ったらもう立派な異世界人。
「サクラコ、お掃除しちゃいましょうね」
「はい、マルタさん」
マルタの出した雑巾をサクラコが受けとる。
私はアレスとじゃれてるだけなので私手伝っちゃおうかな?
「マルタ……私も……」
「リリア様はダンスレッスンお疲れですから大人しくしていましょうね」
にっこり、やんわり拒否られた。
「姫様はダメです」
サクラコにも言われた。なんか仲間はずれっぽく言われた気がする。
「そう言えばサクラコはアイテムボックス使えないの? 今雑巾マルタから受け取ったよね?」
もしやアイテムボックスを使えないお仲間?
「アイテムボックス……? ああ、空間道具魔法ですね? 私は日常品は入れられないのです」
「日常品は入れられない?」
なんだそれは?
「私は武器装備専門です」
「えっと……何それ? ……何か違いが?」
「マルタさんのように何でもしまえる人もいますが私のように特定の物しかしまえない者もいます。姫様は違うのですか?」
え、えーっと、そういえば私のアイテムボックス何も入れられなくて、フェルが色んな物を試させてくれたけど、どれもダメだったんだ。
私のボックスは何ボックス?




