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134、刷り込まれた行動

 朝起きるとアレスは部屋の中にいた。


 あれ?


 昨日私は寝る前にアレスを部屋の外に出したのだ。


 今まで部屋に入れておいたのはアレスが他の屍戦士と間違われたり使われたり危ない事になるのを避ける為で……でもロイドはもうアレスの事を知っているから、部屋の外でも大丈夫と思ったからだ。

 もちろん私がアレスに対し勝手に気まずくなっているのもある。


誰かが入れたのかな?


 基本私は自室の二階のみで生活しているが部屋の数はあるので移動する。

その度にアレスはついてくる。


 今まで意識してなかったけれど結構忠犬だ。


きっとフェルがリリアを守ってねと言い聞かせたからだろう。


 でも今はひとりになりたい。


「来ないで! 私は隣の部屋にいるから、ここにいて!」


するとアレスは止まった。


「リリア様、どうしたんですか? 急にカズクンに冷たくなって……」


マルタが心配した。


「そんなことないよ。いままでベタベタしすぎだったんだよ。本当はカズクンもこの方が良いの」


 私のトラウマの名前カズクンを使うのも本当は嫌だ。


 もう普通の屍戦士で良くない?

アレスじゃなくて良くない?


 私は益々アレスといるのが苦痛になってきた。


フェルが帰って来たらアレスを返そうと思った。


アレスは何も悪いことはしていない。


 でも、私はアレスに拒否られた事実がキツすぎた。

日に日に重くなっていく。


 夜になり、アレスを部屋の外に出した。

何してるんだろう……私。


 こんなことしてても無意味もいいとこだ。

アレス本人に意識もないのに私が妙に意識してるだけ。


「お休み、アレス……」


久しぶりに声をかけて扉を閉めた。


 うとうとしていると扉が開いた。

アレスが部屋に入ってきた。


え? 勝手に動いてるよ。


 私は呪いの人形とかホラーなモノを連想してしまった。


 今までアレスの事を怖いとか思った事はなかった。

でも、もしかして怖くね?


だっていくらイケメンでも死んでるんだよ。

ゾンビ……。

動く死体。

それが屍兵だもんね。


 私のベッドの隣に座った。


アレスが私に向けて手を出した。


そうか、一緒に手を繋いで寝たりもしたもんね。

でもその行動は私を思っての事ではない。


刷りこまれた行動みたいなものだろう。


 アレスが仮面越しにこちらを見ている気がした。


いや、きっと見ていない……きっと仮面の下はあの虚ろな瞳だ。


 唯一私を見たのは、星降り祭りのあの時だけだ。


あの時アレスはなんて言ってたのかな?


アレスが手を出したまま動かない。


なんかフラれた男に妙に優しくされてるみたいでキツイ。

こうなる事が嫌だったから避けていた気がする。


 私は逆側を向いて眠ることにした。


アレスの事は気にしないようにしよう。



そのまま眠りについた。







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