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133、ダムの決壊泣き

 自称"少年の心を忘れない男"ロイドが酷い話をしながら、笑っていた。


 なにコイツ! ムカツク!!


 子供に生け贄とかバラすし、ちょっと人としてどうよ!?


「はい、出来ました。ちょっと慣れてきたようです。魔包衣の巻き方は師匠より上手くなったかもしれないですね」


 アレスの包帯を巻ききっていた。


 確かに前は一時間位かかっていたのに今はお喋りしながらの余裕でしかも早い!


「アレス、立ち上がれるか?」


アレスが立ち上がる。

そのままアレスを見つめるロイド、どうやら魔力の流れを視ているらしい。


「流れは良いようですね。これで今まで通りには動くでしょう」


 ロイドが振り返り私を見てぎょっとした。


 私はもうガンガンに涙が流れていたのだ。

声は出さないように我慢していたが涙が止まらない。


「どうしました姫様? 姫様の大好きなアレスが治ったのに……」


 えぐっえぐっ

アレスは"私のアレス"ではなかった。

その上私は"生け贄の姫"だ。


 少しは頼りになりそうだと思った執事は私が"生け贄"だと言いながらへらへらしている。

 優しいフェルはいない。


 私は何のためにこの異世界で第二の人生してるのよ?

このまま誰にも愛されずに、ひとりで死ねと?

"生け贄"ってどんな殺され方するの?

苦しいの? 痛いの?


「なにさ、ロイドなんて……ロイドなんて……モテすぎてて人の心が分からないんだ! その上姉弟結婚の変態じゃん!!」


 こんなこと絶対にマルタに聞かせられない! 絶対に言ってはいけない事だ!

でも口からでた。

言ったとたんスゴく後悔した。

 私に優しくしてくれて、心配してくれたマルタを裏切るような事を言ってしまったのだ。


うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!


そこから私は大泣きだ。

我慢していた分もう止まらない。

ダムが決壊した感じだ。


 なぜこんなに泣けるのか? もう第二の人生ダメダメだもん!!


 こんなに泣き叫ぶ子供いたら絶対嫌だわ。

保母さんも逃げ出すわ。


涙も鼻水も汚なすぎになっている。

ティッシュが欲しい!


もう止まらずにガンガン泣けた。


 するとロイドが魔包衣を使って私の涙と鼻水を拭き、私を抱き抱えた。

そして背中をポンポンして私をあやしている。


 それでも私は泣き止まなかったのでそのままロイドのシャツが私の涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった。


 私は前世の記憶がある分自分が大人だと思っていたが実は全く関係なく、ただの子供なのだと思った。


そのままロイドは私が泣き止むまでずっとそうしていた。



 本当はわかっている、ロイドは口が悪くて正直なだけなんだ。


 そして性格が少し曲がっているだけで、本気で悪いやつではない。


 私が困っていたとき、アレスにおいて行かれた時、私をすぐに見つけてくれたのはロイドだ。

マルタと同じように私を心配してくれている。



**************



「落ち着きましたか?」


私が泣き止んで落ち着いた頃に話しかけてきた。


「姫様は泣き虫ですね~、きっと姫様の子供も泣き虫ですよ」


「私は"生け贄"だから結婚なんて出来ないもん。だから子供も生まないもん。ひとりで死んでいくんだもん!! ぐすん」


「そうですね。でもまだ分かりませんよ。生き残る道を探していきましょうね。そうしたら私は姫様の子供もこうしてあやしますよ」


ロイドはズルい、酷い事を言ったあとに優しい言葉をかけるとは……


 私はまた目がうるうるしてきた。

そうか、これがモテ男の秘訣か。こうやって世の中の女の子がおとされるのか!!


「あ、姫様、一つ言っておくことが。私の国ルカレリアでは特に王族の間で兄妹の婚姻は普通の事です。変態ではありません。姫様が今まで私の事をどう見ていたかよく分かりました」

ロイドが笑顔で言った。


マジ? 初耳。


「だってフェルが……」


「ああ、師匠がどう言ったかは知りませんが師匠はその事にデリケートです。トラウマらしいですよ。この国では基本兄妹婚はありませんが魔力の高い者の間ではたまに行われるそうですね。昔、妹と結婚させられそうになり超キレたそうですよ。師匠は妹さんと思考が繋がっていたらしく妹の存在は自分自身と同じだとか……」


マジ? こっちも初耳。


「フェルが超キレるとか……フェルがキレるとこも結婚しているとこも想像出来ない……ふふふ……」


なんだか笑い出してしまった。


「やっと笑いましたね。姫様はそうしている方がいいですよ」


ロイドも笑った。


 どうしてこんなに大騒ぎして泣いてたんだっけ?


 ああ、もとはロイドにアレスとキスしたことを言いたくなかったんだっけ。

そっから、勝手に視られるとか、生け贄とか、八つ当たりとか、ワケわかんなくなっちゃってた。


 私はロイドの首にしがみついた。

いつもアレスにしていた事だが、今だけはロイドの首でも借りておこう。


 どうなるかは分からないけれど、この世界でもう少し頑張って生きていこう。

 折角転生したんだ。きっと何か意味はある。



 その様子をアレスの虚ろな瞳は映していた。










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