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12、夜中のお茶会

 穴を抜けると其処はもうフェルの家だった。


 前に見た時ゴミ屋敷だったフェルの家は、きちんと片付けられ掃除もされているようだ。

 部屋の中央にはテーブルにお茶のセットが用意してあり、椅子は二脚用意されている。


「リリアがいつでも遊びに来られるようにお掃除したの~」

と後ろから穴を抜けて来たフェルが言う。


ちょっと感動してしまった。うるるっ


あのゴミに埋もれた感じの部屋が、普通の部屋になっている。


『なんと言う事でしょう。』とか言うセリフを言いたくなってしまう。


フェル、ひとりで頑張ったんだね。ひとりで部屋を片付け一生懸命穴も繋げてくれたんだ。


テーブルの上のポットが温かいようだ。このお茶も私の為に用意してくれたんだろうな。


 本当に本当に、私が遊びに来るのを待っていたんだ。

ひとりで頑張っていたフェルの事を考えれば、今朝のロイドとの色々を忘れられそうだった。


「さあ、リリア~椅子をどうぞ~」

にこにこしながら椅子をひいてくれるフェル。

私が腰かけると、フェルはもうひとつの椅子に腰かけた。


「夜中のお茶会の始まりだよ~。」

そう言うとお茶をカップに注ぎ、お菓子をどこからか出してきた。


あれ?今お菓子どこから?と目で探りを入れていると、


「フフフ~初めて見たのかな~?今のは空間魔法だよ~この日のためにお菓子をいっぱい用意したの~まだまだあるよ~」

次々にいろんなお菓子を出し始める。


…いや、夜中にそんなに食べれませんて、


 空間魔法か、ゲームの中のアイテムボックスみたいなのかな?

ふと、王都に連れて来られた時の馬車の中でマルタがどこからともなくいろいろ出していたのを思い出す。あの時はあまり気にならなかったが空間魔法だったのかもしれない。何となく馬車に収納があると思いこんでそこにある物だと思っていた。


「これ美味しいよ~」


 フェルがお菓子を勧めてくる。マカロンのような形にふわふわした何かをはさんである。緑色の生地にピンクのフワフワか……。うん前世のマカロンもこんな配色だった。不気味ではない。色ちがいの似たお菓子をこの前おやつで食べた。これは結構美味しいお菓子だと思う。


 サクッ歯応えが思ったより良い。香ばしい中に生姜のような風味そして、挟んであるフワフワはラズベリーっぽい味のマシュマロより柔らかい物体。

甘い。うん。まあ合格かな?ちょっと偉そうにお菓子を批判してしまうが…お菓子ってね。やっぱ日本のコンビニスイーツに優るものはないと思っている。あの値段であの美味しさだよ?なんか有名店とかの小さなケーキが1個600円以上のお値段ついて売ってるけど、たしかに美味しいけどお店の雰囲気とかわいいパッケージ代とブランドにお金を払ってると思う。美味しさと値段だけ考えると絶対コンビニスイーツは強い。私の舌が庶民なだけかもだけど…。

異世界に来てスイーツを食べる機会が村では無かったけど、王宮に来てからはそれなりにお菓子を食べている。最初は甘いものが食べられるだけで幸せだったが、人は慣れるものである。最初の嬉しさはない。コンビニスイーツが食べたい。贅沢になったものだ。


「あれ~?気に入らなかった~?」


フェルが心配そうに見てくる。また泣かしてしまうのは困る。


「美味しいよ。いっぱい用意してくれて嬉しい。でも夜中だからお腹すいてなくて…」

嘘ではない。美味しかったよ。


「そっか~でも大丈夫だよ。毎日ちょっとづつ食べれば良いんだよ~」


毎日?私、毎日来ることになってるの?

そしてお菓子ってそんなに日保ちしますかね?


「じゃあ今日1番のオススメね~これ"ぽぽる"ってお菓子だよ~新作だって~」


また違うお菓子を出してきた。うーん。すっかりフェルのペースだ。


「じゃあ、これだけいただきます。」


焼き菓子だろうか。お皿の上のお菓子はマフィンのような感じ。フォークで半分に割ってみると中から薄いクリーム状のものが流れ出た。

この世界では珍しいタイプかな。だいたいこの世界のお菓子はクリームっぽいのをのせるか挟むかだから…


「…ん?このしっとり感は…」


美味しい!これならコンビニスイーツに負けない!!そうか!私が求めていたのはこのしっとり感だったんだ!

チョコレートではないけれど味はフォンダンショコラに似ていた。

ーーあっという間に完食!夜食べたら太りそうだけど、これは仕方ないことだ!今日はフェルと再開した特別の日だもん!1個くらい良いよね。


「気に入ったみたいだね~ボクもこれ好きなんだ~お店で食べると温かいのが食べれるよ~」


ぴくっ お店!?


「フェル、これどこかで買ってきたの?」


もぐもぐ…


「うん王都で1番人気のお菓子屋さん『クックモード』ってとこ。あ~…お菓子屋さんて言うかぁその場で食べられる所もあって…女の子に人気だよ~」


もぐもぐ…


「そんな店あるの?!行ってみたい!連れてって!!」


思わず口から出てしまった。


行けるわけない。

王宮に入ってから一度も外に出してもらえたことがない。

ちょっと願望が口から出てしまったがフェルを困らせるつもりはなかった。


「いいよ~ただ準備しないとだから、10日位待って~」


マジすか!!


そして気がつくと"ぽぽる"3個を完食していた。しまったー!!!







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