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128、糸の切れた人形

 勇者広場の方から大きな歓声が聞こえた。


え? 何? 処刑でも始まっちゃったの?


 下の広場で大騒ぎしているお陰で屋根の上で揉めている音は届いていないのは幸いです。


 何を騒いでいるのか気にはなる。どうやら下の広場に乱入者があったようだ。野次馬はバラバラ逃げていく。乱入者は40人ほどで屍兵を次々と倒しているようだ。


 おお、スゴイ、屍と戦う人達がこの世界にいるんだ!

勇者狩りで捕まった人達を助けようと考える人達がこの屍だらけの国にいようとは!

この世界、捨てたもんじゃないじゃん!! がんばれ!!


 40人を引き連れてゴツい男が先頭で戦っていた。白い鎧を着てドデカイ戦鎚を振り回し、屍達を凪ぎ払う。白い鎧の男が暴れている間に仲間達が捕まった者達を助けに行く。

 なかなかのチームワークだ。しかも白い鎧の人強い。なかなかのかっこよさですよ!



 アレスの動きが止まった。


「助けが入ったぞ、お前が行かなくても大丈夫だ」

ロイドも下を見ながら言う。


 アレスは動かない。

そして崩れ落ちるように倒れた。


「こら、ここで倒れるな、早く逃げるぞ!」


アレスの反応がない。

まるで糸の切れた人形のようだ。


さっきまであんなに動いていたのに……


ロイドはアレスを背負う。


だいぶキレ気味の顔だ。


 そこから、私達は歩ける所は歩き、無理な所はロイドが手伝い、何とかサナおばさんの下宿に戻り急いで着替えてシーラとレイラの待つ馬車に戻る。


 姿を消して馬車に乗った私は勇者広場の方を見てみた。


 街の方から叫び声や悲鳴があがっている。

あのあとどうなったのか……


 あの白い鎧の人達は、捕まった人達を助ける事が出来たかな?

ゴーレムもいたからちょっと心配だった。


 勇者広場の方がやけに明るい。


あれは篝火ではなく、街に火がついたようだ。

大丈夫なの?


 とんだお祭りになってしまった。


街の人達のお祭りが台無しだ。


 お祭りの日に勇者狩りで集めた者達を処刑するとか悪趣味すぎる。


 来年この星降り祭りはあるだろうか。


更に縮小された祭りになるのか。


それともなくなってしまうのか……


途中までは本当に楽しいお祭りだったのにな……


 私はアレスを見た。


屍戦士の鎧を着せられている。

そしてなぜか動かない。

糸の切れた人形……。


アレスはどうしちゃったんだろう。


 あの時、アレスは私を見た気がした。

やっとアレスの瞳に自分が映ったと思ったのにアレスは行ってしまった。


 胸が苦しい。


わかっている。


 アレスがあの時もし意識があったとしても、アレスにとって私はきっと初めて見た知らない女の子だ。


 何を勝手に私ははしゃいでいたのか、事故とはいえアレスとキスもしてしまったのに、向こうからしたら、"なにこいつ"的なやつだよ。


 アレスにべたべたして図々しくくっつく恋人気取りのキモい女。

それが私の今の立場かもしれない。


 涙がぼろぼろだ。

勝手にいい気になっていた。


 私は前世だけでなく、今生でもただの失恋女だ……

アレスに嫌われた。

そもそも私なんて眼中に無いよ!


もう消えてしまいたい……。







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