123、お祭りへ
そして私は門から街へ出ることに成功した。
木製の四人乗りの馬車に着ぐるみウサギで姿を隠した私と屍戦士のアレス、そしてロイドとマルタだ。御者台にはシーラとレイラだ。
エリザとサクラコはお留守番だ。
一応私もお留守番と言う設定ではある。
エリザは前もお留守番だったから少し可哀想な気もする。
ロイドはエリザを連れて行きたくないのかな?
馬車で街中まで行き途中から歩く。
シーラとレイラは馬車で待機。
え? 可哀想じゃない? 一緒に行けないの!?
最終的に私とアレス、そしてロイドとマルタの四人になった。
馬車から降りてしばらく歩くと
「姫様、パペットのフードを脱いでください。人混みで認識しづらいです」
え? 認識しづらいって視えてるの?
もうこれロイドには使えないじゃない?
フードを脱いでスキルの解除をした。
私の姿が見えてマルタが驚く。事前に説明はしたが、やはりマルタは驚く。
そんなところがマルタのかわいいところ。
「アレス、姫様を抱えろ、そのままついてこい」
ロイドはマルタを抱き抱えた。
そこから細い道を通って上がったり下がったり、走り抜ける。うわ、もう馬車がどこにあったのか分からない! 今置いていかれたら完全な迷子だ。
そして一軒の家に入った。
「うーん、目が回った」
私がぼやくと、
「私の眼で引っ掛からないのでいないと思いますが、尾行対策です」
ロイドが答えた。
そうでしたか。
「ここはどこなの?」
「知り合いの家です」
奥の扉が開いた。
奥から女の人が現れた。
「あら、ロイド様、いらっしゃい」
良く見ると サナおばさんだった。
「サナおばさん無事だったの? 良かった」
「あら、あなた私を知っているの?」
サナおばさんの様子がおかしい。
サナおばさんは記憶をなくしていたところロイドに助けられたと言う話をしてくれた。
住むところと仕事を紹介してもらいここで暮らしていると……
人ひとりの人生変えちゃってるじゃん! ダメだよ!
ロイドに耳打ちしたが
「じゃあ殺して良かったんですか? あのまま放置していたら私達も無事ではないですよ」
とキツく言われた。
巻き込んでしまったサナおばさんには申し訳ないがここで平和に暮らせるなら良しとしなければか……ごめんなさい。
サナおばさんの家では着替えをさせてもらう。
一人暮らしの割には広い家だと思ったら、この家で下宿をさせ管理人をしているらしい、部屋は半分も埋まってないが何とかやっているそうだ。
今日はお祭りで住人はみんな出掛けているそうだ。
空いている部屋を借りて着替える。
アレスは屍戦士の格好だと回りの人を怖がらせてしまうので普通の服に、私も普通のちょっと良いところの街娘の格好に、
今日の私は街娘。緑のワンピースに白のエプロンそして頭に緑の飾りをつける。そして王都の星降り祭りでは仮面をつけるらしい。とりあえず仮面を頭の横に着けた。マルタに手伝ってもらいお着替え完了。
ちなみにマルタは、青いドレスに白いエプロン、今日は髪もおろしていて美しい。仮面を着けてしまうのがもったいない。
アレスはどうしたかな。
部屋を出ると隣の部屋から着替えの終わったアレスとロイドが出てきた。
アレスは包帯を隠せるようにハイネックの黒の服に一部腕から包帯が見えるがこれは中二ってるファッションに見えるだろう。アレスも仮面を横に着けている。
つまり今素顔!
うわーーかわいい。これはもう言い表せないかわいらしさ! 生きてる男の子に見える。新鮮だ。
普通服のアレスが新鮮でかわい過ぎて悶えそうだ!
私が見とれていると、
「はい、終了」
ロイドがアレスに仮面を着けた。
「まだ見てたのに~」
悔しがってバタバタした。
「姫様が見たがると思ったので、仮面をはずしましたが、この顔を晒しておくわけにはいきませんから」
はい、確かにその通り。
アレスの顔を晒したら女子が群がっちゃうよ。私のアレスだもん。
「本当に姫様はアレスが好きですね、でもアレスには思い人がいたようでしたね?」
!!ーーーーーー思い人?
それって好きな人ってこと? どこのドイツよ! 誰ーーーー?
「おや? 姫様は見ませんでしたか? アレスの魂に触れた時、黒髪の少女を……」
それって私の夢に出てくる黒長子のこと?
あれ、ロイドにも見えてたんだ。
あの時の事をロイドが口にするのは初めてだった。なんとなく避けているのかと思っていた。
「黒長子は私の夢の中の住人だからアレスには関係ないよ。私の意識の一部と一緒に見えたんじゃないのかな?」
転生前の世界の人とは説明出来ないのでそう言った。
「は? 姫様の夢の住人……? そんなことはないでしょう。あれはアレスの意識下ですよ……」
「あーーーーーーーーーーーーーーー!! ロイドさまだーーーーーー!」
突然聞いたことのある声がした。




