122、怒られるかと思った
翌日のお昼寝の時間。
フェルの地下室でロイドが言った。
「どうして最初に私に言わなかったのですか? お陰でマルタまで行く気になってますよ」
え? だってロイドに言ったら怒るか、全く相手にされないかのどっちかだよね?
「マルタも行きたいならみんなで行く?」
ダメ元で言ってみた。
「警備の問題で公に動きたくありません。姫様が公に祭りに行くとなれば、それなりの数の屍兵を揃えなければです。それでは折角の祭りに水を差すことになるでしょう……姫様一人だったら私が隠して抱えて行ったのに……」
え? マジで?
連れていってくれる可能性があったとは考えもしなかった。
でも隠して抱えていくってなんか物騒だ。袋詰めにされそう。
「私は街の様子の調査として自由に出る事もできますが、マルタは子供の時以降、街に降りた事はありません。今まで街に行きたいと言ったこともないのです。行きたくても言えなかったのかも知れませんが……」
ロイドがため息をつく。
「マルタは王宮から出られないの?」
「……いえ、出せなくはないですね。10年前、私達が二人で逃げると思われていた頃は見張りをつけられていましたが、今はいないのでその辺の問題はないです。ただ夜はマルタが体調を崩すことが多いのです。迷惑をかけると思ってマルタが言い出さなかったのでしょうが、それも早い時間帯であれば問題ないですね。そう考えれば良い機会でもあります。
では、私はマルタを伴い街の調査と言う名目で出ます。姫様はマルタのスカートに潜り込みましょう。それが嫌でしたら手荷物に詰め込んでみますが、どちらがお好みでしょうか?」
え、なに? その二択……?
マルタのスカートの中って絶対に大変だよ。マルタも私も!
手荷物に入れるって言うのは、つまり袋詰め? いくら私が小さいからって、どうなん? 人道的に……。
それだったら私、着ぐるみウサギで良いんじゃない?
それが一番良い気がする。うん。
でもロイドになんて説明しよう。
着ぐるみウサギの事を話してもいいかな?
今後の私の活動に影響が出ることになる。
ちょっと悩んだ。
まあロイドは裏切るだの何だの言うけれど、結局はいろいろ協力してくれてる訳だし良いよね?
私はロイドにぬいぐるみを見せ使い方を説明した。
私しか着られない大きさだし、ちょっとフェルに作ってもらった事を自慢したかったのもある。
ロイドは興味深そうに聞いていた。
「こんなものを作るとは師匠は本当に器用だ」
ぬいぐるみを持ち上げ繁々と眺め感心している。
「でしょ!? やっぱりフェルってスゴいよね! だからこれを着て星降り祭りに行けば問題ないでしょ?」
「はい、問題ないでしょう。ところで姫様……」
急に空気が冷たくなった気がした。
「私は今まで誰かに見られている感覚を自室で感じたことがありますが、犯人を発見出来ませんでした。このパペットを私に使用したことは……?」
どっきーーーーーん!!
そ、そんなこともありましたね。
まあ昔のことですよ。もう時効。
冷や汗。
「な、ないよ」
「なぜ、視線をそらしてるんですか? ……姫様、正直にどうぞ。使ってますね?」
「いやぁ……そんなことは……」
墓穴を掘るとはこう言う事を言うのか。
「まさか姫様、私とマルタが×××××をしたり×××だったり更に×××を××××してるのも見てたんですか?」
え、なに? なんか伏せ字がいっぱいだ? 大人の呪文?
でもなんかエロそうなの?
「うわーーーん、ごめんなさい!」
とりあえず謝る。そして泣く(ウソ)
「まったく、姫様は図太い。次はないですよ」
ロイドが吹き出し笑いながら言った。
なんか、からかわれたらしい。




