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120、いなくなったフェル

 フェルがいなくなっていた。


 誰もいない地下室で私がボーぜんとしていると、ロイドがやって来て教えてくれた。


 フェルは私が寝込んでいる間に

"フェンリルに会いに行く"と言って出ていったそうだ。


そして、それは簡単な事ではないので時間もかかるだろう……と、


 一言も話せていないままいなくなってしまうとは……

あんなショックを受けた状態のフェルがひとりで出掛けて大丈夫だろうか?


「フェルは大丈夫かな?」とロイドに聞くと


師匠(せんせい)は強い人ですよ」とロイドが答えた。


そしてフェルがいない間、ここにひとりで来ないように言われた。


 アレスの訓練も中止して、フェルが大量に作ってくれていた魔包衣はロイドが巻いてくれると約束してくれた。


 ただフェルが教えてくれた瞑想は続け、体力作りも続けて行くことにした。


 私は何だか目標が無くなってしまったように感じてガックリ来てしまった。


いやいや、フェルがいない間もちゃんと頑張ろう。


フェルが帰って来た時に


「リリアすごいよ~頑張ったね~」


と、あののんびりしたフェルの口調で言ってもらえるように……



 そこから数週間……それなりに体力作りに励み瞑想も毎日やった。ガンバッテる方だと思う。


……が、ふと気が付いた。


星降り祭り……いつよ?


明日? いや明後日だっけ?


フェルが帰って来ないと言うことは……私行けないじゃん。


約束したのに…行くって約束したのに……


いや、わかってますよ。わかってるんです。

それどころじゃないのは……


でも……楽しみにしていたのに……。


星降り祭り……残念すぎる……。


私はアレスによじ登り、よじ登れなかった……。

落ちそうな私をアレスが抱える。


アレスが寒がっているかもしれないと思ってから、私は今まで以上にアレスにくっついている。


あれがただの夢と思えなかった。


冷たくて凍えそうで、声も出ず身体も思うように動かない。

そんな感じだった。

もしアレスがずっとあの状態であるなら辛すぎる。


アレス寒くない? 私がいるよ。私が温めるよ。

アレスにスリスリサワサワしてみる。


フェルがいない間はフェルの分も沢山スリスリするからね。













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